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2.伯爵令嬢の光魔法!?

 断捨離が完了した翌日の朝、クリスティーナが食堂に入ると、久しぶりに帰省した兄のギルバートと両親がすでに朝食の席についていた。


「クリス!久しぶりだな。今朝、馬を飛ばして帰ってきたよ。父上からクリスが面白いこと始めたって手紙をもらったから話を聞きたくてね」


ギルバートは、愛しい妹に駆け寄ると、軽くハグをしてからエスコートをして席についた。

 

「ギル兄しゃま!会いたかったでしゅ!辺境伯騎士団は厳しいと聞いておりますが、お兄しゃまはケガなどされていましぇんか?」


ギルバートは、にっこりと満面の笑みをクリスティーナに向けた。


「ケガなんかしょっちゅうしてるけど、可愛いクリスの騎士になるためだったら何てことないよ。俺はクリスを守る最強の騎士になるっていう目標があるからね」


兄のギルバートは、スタンピードがあった年から隣領の辺境伯騎士団の訓練に参加させてもらっている。隣の辺境伯騎士団の訓練場はこの屋敷から馬で1時間ほどの距離で、毎日通うのは大変だということで騎士団の宿舎に見習い騎士として住まわせてもらっていた。辺境伯令息の侍従からは、スタンピードで辺境伯夫人を亡くした令息と一緒に、宿舎ではなく辺境伯城で暮らしてほしいと切望されたが、平民の見習い騎士と一緒に一から学びたいと頑なに断り、宿舎で寝起きすることになってもう1年になる。グリモード伯爵家に帰省する際はギルバートの侍従が迎えに行って一緒に帰ってくる。(一人で行き来できると駄々をこねていたが、さすがにそれは却下された)


「それで、『断捨離』だったか?」


ギルバートは、クリスティーナの前世の知識に興味深々で、今度は何をしたのか早く知りたくて馬を飛ばしてきたのだった。


「私もウィルからクリスちゃんが面白そうなことを始めったって聞いて、話を聞きたかったのよ~」


瞳をキラキラさせながら母も愛娘を見つめた。この母も、クリスティーナが次々に披露してくれる新しいものを早く見たいと、昨晩は徹夜で仕事を終わらせてきたのであった。


「しょうなんです、お母しゃま、ギル兄しゃま。昨日、ようやく私の私物の断捨離が完了しましたので、お時間のある時に私の部屋を見ていただけましゅか?」


久しぶりの家族水入らずでの朝食を終えると、すぐに全員でクリスティーナの部屋へ向かった。



以前のクリスティーナの部屋は、父が他国へ仕入れに行く度に購入した珍しいお土産や、母がなぜか周期的に購入する様々なテイストの服や装飾品で埋め尽くされていたが、断捨離した今の部屋は、柄の入った布物もすべて白系色の物と替えられており、窓辺に置かれた色とりどりの花が映えてスッキリとした印象の部屋になっていた。表に出してあるものは色やテイストを統一した素敵なときめくものばかり。一日中、部屋にいても癒されるような空間になっている。


両親と兄は、暫くの間、目を瞠って部屋を見まわしていた。

 

「まぁ!とっても素敵な空間になっているわ!部屋の空気も浄化されて癒される感じね!」


「クリス、何なんだ、この清々しい空間は?部屋の空気がキラキラしてる?」


「おぉ~!ここまでとは……。この浄化されているような空間。心身が癒されるなって……。んっ?まてよ……」


父は、無言で部屋の空間を見つめていたが、がばっとクリスティーナに振り返り「まさか!」と大声を発すると、部屋からメイド達を退出させ人払いした。


どうしたんだ?と不思議な顔をしながらギルバートが両親にたずねると、父は真剣な表情で子供たちを見つめた。


「この空間には浄化された魔法の痕跡がある。まさかクリス……」


「えっ、魔法?私は何もしていましぇんが……。無意識に使っていたと?」


父は、青くなった顔でクリスティーナに頷いた。


「あぁ、そうだと思う」


父は思い出したかのようにハッとした顔でギルバートに振り返った。


「まさか、ギルも……」


ギルバートは戸惑っているクリスティーナを抱っこしてソファに座った。


「うん、俺も魔力持ち。辺境伯騎士団に入って辺境伯令息のガイと一緒に訓練をしている時にガイから俺に魔力を感じるって言われて気が付いたんだ。それからは、2人でこっそり魔法の訓練してる」


「えっ、お父しゃま、魔法が使えたら何か支障があるのでしゅか?」


クリスティーナが訳がわからないという顔をしていると、父は、苦々しい表情で答えた。

 

「この国では魔力持ちは100人に1人の割合でしか現れないんだ。だから子供は7歳になると教会で魔力検査をすることが義務付けられている。魔力の多い者は、属性検査を受けた後に教会か王国魔術士団に連れていかれる。光魔法を持つ者は教会で、治癒魔法や浄化魔法の訓練をする。他の属性の者は王国魔術師団で魔獣討伐や戦うための訓練をさせられる。どちらにしろ魔力の大きい者達は、国のためと言われて一生こき使われるんだ」


「お母しゃまは、お仕事で光魔法を使われていましゅが……」


「あぁ、サラはガーラ国の出身だから魔力検査は受けていないんだ。

私は魔力検査の時は殆ど魔力は無かったんだが、成長するにつれて魔力量が増えてきた。両親は魔力無しだったが、この領は国境沿いだからどこかの先祖の代で魔力の強い血が混ざったんだろう。この領地の作物の育ちの良いのは、私が土地に少量の魔力を流しているからだ。あんまり目立つと国に目を付けられるからな」と、お父様は苦笑いを浮かべた。


母は心配そうに眉を寄せて、兄と私を抱きしめた。


「ウィル、ギルの魔力検査はもうすぐよ。この子達を守るために、何か対策を考えなくてはならないわね……」


兄のギルバートは少しの間、何か無言で考えている様子だったが、両親とクリスティーナを見ると「話がある」と言って、皆で執務室に移動した。


執務室に入ると、メイド達を退室させてからギルバートは小声で話し始めた。


「俺達の魔力検査の件だけど、何とかなると思う」


「ギル、どういうことだ?」と、父は身を乗り出した。


「辺境伯騎士団の魔獣討伐に参加した時に、辺境伯令息のガイと俺で魔石を拾ったんだ。2人でその魔石を調べて、その魔石が魔力を吸い取る特性があることがわかった。俺もガイも魔力検査で魔力持ちってバレたくなかったから、2人で色々考えて、そしてそれを加工して、魔力を一時的にその魔石に移す魔道具を作ろうってことになったんだ。辺境伯城の図書室には魔法や魔道具の本がたくさんあるし、師匠にも手伝ってもらって、色々と試作品を作っているところなんだ」


「えっ、スゴイ!ギル兄しゃま、天才!?」


ギルバートは、妹にニッコリ微笑んだ。


「いや、ガイが凄いんだよ。あいつ天才的に頭いいから。でも教会の魔力検査で本当にそれが使えるかどうかはわからないから、俺の魔力検査の時にそれを使って試してみるよ」


父は、ジッと息子の顔を見ていたが、ガバッと頭を下げた。


「ギル、申し訳なかった……。本当なら私がお前の魔力について一緒に考えなくてはならなかったのに……」


兄はニッコリ笑って「父上、やめてよ~」とひらひらと手を振った。


「俺、前世持ちのクリスを守るために、あらゆる知恵と知識を詰め込んでいってる。もし魔力持ちってばれて国に囚われそうになっても、俺はこの国になんかに連れていかれない。そのための道筋は10ぐらい余裕で作ってある。だから安心してくれていいよ。俺、クリスもだけど、グリモード伯爵領のみんなを守りたいって思ってるから。だって俺、次の当主様よ。甘えてらんないでしょ」


突然、側に座っていた母がギル兄様をギュッと抱きしめた。


「ごめんね、ギル!私達が仕事のことばかりで、貴方たちを甘えさせてあげられなかった。これからお母様は全力で貴方達を甘やかします。ウィル!私、これからは子供たちに合わせて定期的に長期休暇を取るわよ!私にしかできない仕事なんてのが間違ってるのよ!ギル、クリス!お母様はこれから思いっきり貴方達を甘やかします!」


ガタン!と椅子をひっくり返しながら立ち上がった父も、拳を作った腕をふり上げながら「俺も思いっきり甘やかす!ギル、クリス、覚悟を決めろ!」とメラメラと目を輝かせていた。


((えっ?覚悟ってどんな……?))



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