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公爵令嬢、入学式に参列する


───故に、王族の皆様方は、二種類の魔法を持つのですわ」

「星の魔法と、自然の声を聞く魔法……そうだったんですね」

「意外と由来までは知られていませんのよ。嘆かわしい」

「まだまだ学ぶことは多そうです!」


  私がマリアにロイネット王国の歴史をざっとお話していると、馬車が止まった。あら、ここからが面白いところですのに……。残念ですわ。

 マリアと二人で外に出る。そこには、石と魔法と木の混ざりあう、非常に大きな校舎がそびえたっていた。これはまた……凄いですわねぇ。


「お嬢方、ここで俺らはお別れです」

「道は分かる?」

「もちろんっす、西側っすよね?」

「そう。大丈夫そうね」

「皆さんも同じ新入生じゃないんですか?」

「下院と上院は別々なんですよ。しょうがないっすね」

「そうなんですか……ありがとうございました!ライリーさん!」

「青服の人に言われると、なんか怖いっすね。ま、どういたしまして」


 馬車の処理はライリーに任せ、開かれた校舎の扉へと向かう。マリアは馬車の中の二人に向けて手を振っていた。

 中に入ると、エントランスになっていた。青服の生徒たちがちらほら話している。さて、式典は大広間だったはず。


「邪魔よ、どきなさい!」

「エレナ様の邪魔ですわ!」

「あら、失礼」

「す、すみません……」


 中で立ち止まっていると、貴族令嬢の一団に軽く絡まれた。普通に邪魔でしたわね……こういうのを見ると、つい見入ってしまうのが私の悪い癖でもあるのですわ。 私が避けると、マリアもあわあわと横に避けていった。


「ふん!ネモフィラ伯爵家の令嬢たるエレナ様の邪魔をするなんて、信じられませんわ!」

「どうせお上りの田舎貴族なんでしょう?名前を言ってみなさい?」

「……はぁ」


  エレナ様、と呼ばれた彼女は溜息を溢すばかりで何もしていない。あらまぁ、絡まれてしまいましたわ。本当にあるのね、こういう事。マリアが、おろおろと私と絡んできた一団を交互に見ている。見てて飽きませんわね、この子。


「わ……私は、マリアと言います。えっと、アルメリア公爵家の預かりで……」

「預かり?血筋ではないの?ふぅん……」

「貴女が、二色の子ね?」


 エレナが急によくないことを言い出した。不味いですわ。その話をここで大公開すると、マリアが非常に大人気になってしまいますわ。というか、それは機密……。マリアを含めて取り巻きがざわざわし始める。


「に、二色の子……?」

「何の話ですか?エレナ様」

「あっ!いや!何でも無いわ」


 普通に口を滑らせるの止めて下さる?お困りですわよ?しかも本人が知らないなら、余計に明るみに出るべきでは無いですわね。マリアがこんなところで全生徒に囲まれませんよう、なんとか誤魔化さなくては!


「……あの、名乗らせて頂けます?」

「……!いいわ、貴女は誰?」

「私、イザベラ・マーケットガーデンと申しますわ。爵位は女爵。以後、お見知りおきをお願いしますわ」

「プッ……女爵令嬢?木っ端貴族の割に、名乗りだけは一人前ですわね!」


 アハハハハ!と一団に笑われる。自由に笑いなさい、子爵や伯爵の令嬢ごときに笑われようと、どうでもいいですわ。しばらく笑われていると、マリアが少しの怒りを抱いているのを感じた。


「あの、イザベラさんは笑われるような人じゃ……!」

「構いませんわ、マリアさん」

「ですけど……!」

「式典の際に鼻を明かせますから、いいんですわよ」

「……む~。分かりました……」


 なんか懐かれてませんこと……?いや私も貴女のことは気に入っていますわよ?人柄が素朴で、実利を知る。二色の子でなければ、我が領地にスカウトしていましたわ。でも貴女が私を気にいる理由はそんなに無いですわよね……?不思議ですわ。

 むくれるマリアをいさめていると、エレナ達は一通り馬鹿にし終わったのか、そのまま行ってしまった。はぁ、なんとかなりましたわね。


「さ、行きますわよ。入学式が待っていますわ」

「……はい~」

「そんな拗ねないで下さいな……」

「拗ねてません!」

「そうですわねぇ……」


 やっぱりむくれるマリアをいさめながら、大広間へと向かっていった。時間が迫ってきた様子で、他の生徒たちも移動を始めていた。式典は、ちょっと面白いことになるでしょうね。楽しみですわ。


「奇麗……」

「そうですわね。本当に奇麗ですわ」


 大広間は多数のシャンデリア、奇麗に並べられたテーブルと椅子、壁には絵画と装飾が掛けられていた。やはり、それなりのセンスですわね。シャンデリアは南西のウィントル産、テーブルと椅子は王都周辺のパローオークですわね、手入れと作りも丁寧で大変よろしい。

 マリアは知らぬとばかりに目をシャンデリアのようにキラキラさせながら、広間を眺めていた。これぐらいの純粋さを持って、私も見るべきでしょうね……。商人の目になってしまいますわ。


「皆、着席してくれ!」


 グレイス学長の凛とした声が、ざわざわする広間の空気を切り裂いた。大慌てで指定されていた席に座る。その際、マリアと別れる事となった。残念ですわ。


「まずは今年も新入生を迎えられたこと。教員一同、嬉しく思う」

「更に、爵位を持って入学した生徒達も、今年は多くいる」

「早速だが、ノーブル・コールを始めよう。これから名前と爵位を呼ぶ。呼ばれた者は起立し、周囲に一礼しなさい」

「まずは……アルフォード・アンドロ・ロイネット殿下!」


 座りながら動向を眺めていると、早速ノーブル・コールが始まった。王族と貴族を読み上げるだけのどうでもいい習わしですが、今回ばかりは悪くないですわ。

 始めに呼ばれたのは、ロイネット王家第一王子のアルフォード殿下でした。王家特有の金髪、碧眼が映えている。見た目は結構ですが、中身についての噂はあまり……人を信頼できないそうですわ。


「シエナ・ノースポール公爵!」


 この方も要注意ですわね。国家の枢要たる公爵家、その中でも創建中の中央陸軍総括家ですわ。偶然当主が亡くなられてしまい、急遽継いだと聞いていますが……白髪で色白のお顔が酷く薄暗いですわね……相当応えているようで。


「ダイアン・クロコアイト伯爵!」


 儀式は進む。ここからは公爵家や辺境伯家の当主から爵位を貰った方々ですわね。特筆事項なし……いや、南側の辺境伯家の方でしたわ。ある種のお仲間ですわね。失礼しました。


「イザベラ・マーケットガーデン女爵!」


 呼ばれた瞬間、後方から少しのざわめき。敢えてぼかした自己紹介をかまして正解でした。ざまぁ見なさい!


「あの方、令嬢じゃなくて爵位持ちでしたの……?」

「マーケットガーデン卿……!?」


 優雅に立ち上がり、ふわりと一礼。何年やって来たと思いますの?年季が違うんですわよ年季が。先程馬鹿にしてきた令嬢方のやべっ……という表情も見逃さない。ごめんなさいね、令嬢じゃなくて爵位持ちなの。継げない家名をひけらかしてる貴女方とは、格が違うのですわ!う~ん、完璧。我ながら惚れ惚れしますわ!


「以上!有望な生徒を迎えられた事を嬉しく思う!」


 ちょうど私で終わりでした。さて、これから眠らないように式典に列席しなければ。正直、回って一礼した時に酔いがぶり返してきて、余り気分がよくありませんわ。頭が回る……。

 そうして、私の入学式はやってやった感と、二日酔いに彩られることになりました……。こんな屈辱、初めてですわ……。


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