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終わりゆく世界に花は咲く  作者: 霜月 式
4/10

 アイリスが目を覚ましてから数週間後、シラン達は悪魔達から身を隠しながら生活していた。見つかり戦わなくてはならないことも何度かあったが、上級悪魔程度ではシランに傷一つ付けられはしなかった。

 そして二人は魔王を倒しに行く、こともなく悪魔に追われながらものんびりとした生活を送っていた。

 生来、世界などというものに興味のなかったシランは、アイリスという関心の対象ができてしまったことでさらに悪化、以前なら体裁程度でも魔王討伐の為に動いていたのだが、今では金が無くなったときだけ悪魔を狩るというものになってしまった。

(国などの公共機関や個人から報酬として貰うこともあるが、悪魔の中には宝石類や金貨などを集めている者やその悪魔の死骸自体が高く売れることもある)

 シランの生活は、堕落したといえばそうかもしれないが彼に言わせれば優先順位が変わっただけなのだろう。世界からアイリスという一人の少女へと。


 今、彼らは森奥の小さな小屋で生活していた。本当は悪魔達がほとんど来ない街などの方がよいのだが、それではシランがアイリスにずっとついていなくてはならず不便なので、人のいない森で生活し食料がなくなれば近くの街にシランが買いに行くという形だ。

 とはいえ、人が住んでいない場所に必ずしも悪魔がいるとは限らない。悪魔達にもやはり生活しやすい、しにくい場所がある。たとえば、今シラン達が生活しているあたりは、近くに大きな神殿を持つ街があるため悪魔達は全然いない。人もおらず悪魔もいない、シラン達にはぴったりの場所だった。

「それにしても住む家が見つかって良かったですね」

アイリスが笑いながら言うのは、その森で見つけた小さな小屋のことだ。おそらく木こりか猟師が住んでいたのだろう。何十年も使われていなかったようで、外は草が腰近くまで生え蔦も絡みついていて住めるのか大いに不安だったのだが、中は埃を被っている程度で、なかなか綺麗な状態だった。二人でそこを掃除し、現在所有中というわけだ。

 そんな森の中で二人がどんな生活をしているのかといえば、

「今日の夕飯はシチューを作ってみました。お口に合うかは分かりませんけど...」

少し不安げにいうアイリスに対し、

「いや、おいしいよ。腕を上げたね」

とスプーンで一口食べた後、シランは微笑みながら言う。まるで新婚の夫婦のような会話だが、実際二人の関係はそれと相違ないのかもしれない、ただ二人にその発想がないだけで。

 食事を終えた後、少ししてから二人はベットに入った。ちなみにこの小屋にベットは一つしかない。だからと言ってナニかするというわけでもない。

 ただあえて言うなら一つだけ、彼らは二人で生活し始めてからからずっと、眠るときは手を繋いでいる。シラン自身は、アイリスの放出する力を隣で浴びたからといって何ら問題はないのだが、アイリスがシランにそう頼んだのだ。割と内気な彼女が何か頼むというのは珍しことだった。

 そして二人は互いの体温を感じながら眠りに落ちていった。

 

 二人にとってお互いは無くてはならない、本当の意味での唯一無二といえた。

 二人が出会えたのは奇跡だったのかもしれない。 

 ――だからこそ、二人の関係は脆く儚いものでもあった。

感想や指摘など教えていただければ幸いです。

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