後輩-4-
キノコタケノコ戦争が終結した時。
此恵は第二体育館にいた。
「(本当は先輩がいる陸上部に入りたかったですけど……)」
本来なら入学式の時に陽のいる陸上部に入りたかったのだが、先にバレー部に捕まり、余儀なく入部されてしまったのだ。
「(そもそも勧誘方法がズルいです。お菓子やジュースをくれるなんて、日本人として断りきれないですよ)」
だが此恵はバレーに関しては中学の頃、部活に入っていたため、まぁいいかと納得してしまった。
今日は一年同士でボールを使った練習をすることだった。
高校一年生になってまだ一ヶ月も経っていなく、此恵には親しいともいえる友達がまだできていなかった。
「(それなのに部活で友達ができたりするんですか……? 難しいと思いますけど)」
二人組を作ることになり、近くにいた人と自然に固まっていた。
此恵と組むことになったのは、前髪が目元まで隠れてしまっている女の子だった。
「(でも逆に、こうしてバレーを通して友達になれる可能性もあるです!)」
そう心の中で決心した此恵は、ペアを組んだ女の子に自己紹介をする。
「六実此恵です! これからよろしくです!!」
「あ、あの……えと……鎖倉、一花……です…………」
此恵のハキハキとした性格とは反対な、オドオドとした人見知りの子だった。
それでも此恵は、まずこの子とから友達になろうと思い、元気よく練習をしようとする。
「それじゃあまずはトスからでしたよね? いきますよ!」
互いに少し距離をとって此恵ならトスをする。
上に放たれたボールは、真っ直ぐに一花の真上へときた。
絶妙のボールに、一花はフラフラとしながらもちゃんとトスをし返す。
「おぉ! 上手いです!」
「そ、そんなこと……六実ちゃんのトスが、うまかったから…………」
「二回目いくですよ!」
一花の声が聞こえなかったのか、此恵はそのままボールを止めずにトスをする。
またしてもうまいボール。一花はあたふたとしてもちゃんとトスを返した。
「やっぱり鎖倉ちゃん上手ですね!」
「あ、えと……」
「次はボレーですね!」
「あぅう…………」
傍から見ればちゃんと練習に取り組んでいるように見えている二人だった。
放課後。
部活動が終わり、帰宅する準備をする時間。
照は陸上部短距離用の部室で着替えをしていた。
体全体にかいた汗をタオルで拭き、水道で洗った髪の毛も拭く。
結局誰一人として一緒に走ろうとはしなかったため、一人でトラックを占拠していた。そのため他の部員たちは誰もいない。
「おーっすー、にーちゃんー」
間抜けな声と共に部室の扉を開けてきたのは照の妹だった。既に彼女は着替えを済ましている状態だった。
「帰ろーぜー」
「ん」
制服に着替え、タオルやジャージ、体操服は脱ぎっぱなしにしてこの部室を去った。
照が部室にこれらを置いておくとマネージャーが勝手に洗濯してくれているので、その好意を無駄にすることなく放置している。
二人は戸閉めもそこそこに帰路へと着いた。




