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後輩-2-

 照が走っている中、第一体育館。

 そこでは演劇部が秋にある大会に向けて日々練習を重ねていた。

 その指揮をとっているのは、悠里だった。

 舞台の目の前にパイプ椅子を置き、それに座りながら部員たちの演技を見る。

 テーマは、『崩れていく日常』。

 ある日、突然届くメール。そのメールはとある部活の部員全員に行き渡っていた。

 メールの内容は、殺し合うこと。一日に誰か一人死ななければ罰ゲームが起きる。

 最初は馬鹿にしていたが、このゲームの本気に部員たちは圧倒され、疑心暗鬼に陥る。

 誰かを殺さなくてはいけない。もしくは自分が殺されるのか。その恐怖で日に日に部員たちの心が折れてきて、醜い争いが始まる。

「よし。とりあえずここまで一回通してみるか」

 台本を片手に悠里が決める。まだ内容が最後まで完成していないため、あまり急がずに進めることをしない。

 役者たちは大声で返事をし、持ち場に向かう。

「あの、本当に出ないのですか?」

 隣にきた脚本家が悠里に訊ねる。悠里の演技力を見てきた彼女にとって、この劇に参加しないのは不思議だったのだ。

「あぁ。私がいなくてもあいつらならできるさ」

「そうじゃなくて。悠里さん自身のことです」

「何度も言うけど、私は大丈夫だ。一、二年の時に出番はいくらでももらったんだ」

 悠里の主張にそれでも食い下がろうとするが、劇が始まってしまったため、それは無理となった。



 同じくとある空き教室。

 瑛太は目安箱ならぬなんでも箱を片手に教室に入ってきた。

「持ってきましたぞー」

「ご苦労さん」

 ここはなんでも部の部室。ゴミ拾いや猫探し、勉強を教えたり困っていることをなんでも解決する部活。

 相談するためにはこのなんでも箱に依頼を書いた紙を入れること。二日に一回箱の中身を回収するため、急いでいる人は直接なんでも部の部員の誰かに手渡すことになっている。

「今日も何通か来てるな」

 蓋を開けて確認してみると、その中には三通来ていた。

 いつもはこのくらいの量で、文化祭などのイベント事が近くなってくると途端に枚数が増えていく。

 それと同時に、直接渡されることも多くなる。

「最初はビックリしたなぁ。女の子から手紙手渡された時さ、てっきりラブレターかと思ったからさー」

「わかります、それ」

 先輩の体験談に、瑛太も苦笑いを浮かべる。そのことが原因で、ある事件が起きたからだ。

「でもよくよく考えると下駄箱に入れるよなって思ったけどさ、うちって蓋ないから結局バレるんだよね」

「だからって休み時間に渡されてもクラスの男子の目線が辛いっすよ」

 あはは、と今笑い話にできるほど、あの時は驚いていたのだ。

「つか、今日部員少ないっすね」

 今この部室にいるのは瑛太と部長である先輩の二人だけだった。いつもならもうあと四、五人はいるはずだ。

 その問に対して、先輩が疲れた顔をする。

「今さ、遊木宮兄が走ってるんだわ」

「あー……なるほど」

 他の部員たちはきっと照の写真撮りを任されているに違いなかった。

 前から照が走る度に、なんでも部は写真部に変わるほど駆り出されているのだ。

「女はまだしも、男があいつの写真撮るのはつらい……」

「その分色々とくれるから我慢っすよ」

 ため息をつく先輩だが、その隣には山積みのお菓子がそびえ立っていた。

 それが指す意味は一つだけだった。

「先輩、頑張れ」

「くぅっ……お前は撮りにいくのか?」

「頼まれる前に来ましたから」

「……後は頼んだ!!」

 若干涙目になりながらも、先輩は右手にデジカメを持って部室を飛び出した。

 その背中に手を振りながら、瑛太は手紙の内容に目を通した。

 三通のうち二通が照の写真依頼だった。

「…………この行動力と情報網な」

 すぐに取りに行ったはずなのにな。とボヤいて残り一通の手紙の方を優先して取り組んだ。





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