勉強会日和とはこのことだ!(10)
「うう~、指がイテ~……」
「結構時間が経ったみたいね。ここらで休憩挟みましょうか」
「あう……」
ずっと佑香が側にいるせいでダラけることもできなかった亮が、慣れない勉強を長時間したことでとてつもなくバテていた。
「何故これを好きだと言える人間がいるのか、不思議でしょうがない」
「決まってるじゃない、解けていく感じがたまらないのよ。あんたは感じなかったの? それを」
「感じてたら、こんなに疲れないって……」
「情けないわね~。それに比べて、絵玖ちゃんは大したものね。弱音も吐かないでずっと頑張ってた」
「お二人に教えてもらえたんで、すごく助かりました。佑香さんが言ってた感覚も何となく分かった気がします」
「ポイントも抑えていたみたいだし、この分なら結構良い点数もらえるんじゃないか?」
「ホントですか? そうだったら、嬉しいな……」
「俺もうかうかしてらんねぇな。ナンバー2を譲るわけにはいかない……」
「ナンバー2って、そこを強調して言っちゃったらカッコよくなくなっちゃうんじゃないの?」
「仕方ないだろ、お前がいるんだから」
「あ、私のせいか。ごめんなさいね~」
「……ムカつくな、このメガネっ子は」
「メガネっ子言うな。でも、いつもギリギリでハラハラしてるところもあるのよ? 私」
「だとしても、負けてることに変わりはない。俺、口には出してないけど、結構ショック受けてるんだぞ? 10点以上差をつけられて負けるならまだしも、3,4点差で負けることが多いから……」
「そこがあれでしょ? 普段からやってるかやってないかの差ってものよ。秀吾も普段からやってれば、十分私を抜く可能性はあると思うけどね」
「簡単に言ってくれやがる……それが難しいからできないんじゃないか」
「お二人は、いつも一位を争うくらい成績が良いんですか?」
「そうだね。実際争ってるように見えるけど、いつも勝つのは佑香なんだけどね。秀吾はいつも良い所までいくけどそこまでって感じ。同級生からは二番手の鬼って言われてるんだ」
「これほど嬉しくない称号はないぜ、本当に。シルバーコレクターならまだしも……」
「いや、横文字になっただけで意味合いいっしょだから……」
「とにかく、そんな感じかな。今回も順当にいけば学年一位は佑香だろうな。それとも、秀吾が一矢報いるか」
「一位にはなれずとも、攻めて勝利教科が増やすことができないかね……」
「ふふん、どうかしらね? まあ、精々頑張ってみなさいな」
「この余裕を見せる姿……恐るべきメガネっ子だぜ」
「メガネっ子言うなって何度も言ってるでしょうが」
「絵玖ちゃんも上位を狙ってみたらどうだ? ダークホース的な存在になれるかも分かんないぜ?」
「あ、あたしは無理ですよ。今回が初めてのようなものですし、そんな簡単に上位に入れるほど甘くは――」
「と、思うでしょ? それが、意外と簡単になれるのよ」
「そ、そうなんですか?」
「実は私たちのクラスメイトの中に、亮みたいな人間が3人程紛れてるの。だから、上位と下位の平均点の差が大きく開いてる状態なのよ。その三人が誰とは言わないけど、まあ、男子ってことは言っておくわ」
「それ、完全に答えだろうが」
「ちなみに、前回の春に行われたテストだと、5位と6位の平均点の差は15点くらい開いてたと思うぞ。だから、初参戦の絵玖でも上位に食い込める可能性は十分あるはずだ」
「本当に、うちのクラスの男子の為体っぷりには困っちゃうわ」
「けっ、言ってろ。人間は点数で決まるものじゃない。中身だよ、中身」
「頭の良さも中身の一部に含まれてると思うんですけど~?」
「……ウルサイ、ダマレ」
「まあとにかく、絵玖にもチャンスあるから、頑張ってみな。今日みたいに頑張れば上位に仲間入り果たせるだろうから」
「はい、努力します。秀吾くんと佑香さんには勝てないと思いますけどね」
「あはは、やってみないと分からないわよ。そればっかりは、本番に強いかもしれないし、土壇場での底力は、アイドル経験ありの絵玖ちゃんのほうが上手だろうし」
「あはは、だといいですけどね」
「おーい、佑香。ちょっとこっち来なさい~」
「え? どうしたの? お母さん」
「いいから、ちょっと~」
「分かったわ」
母に呼ばれ、向こうの部屋へと向かう佑香。しばらくして部屋に戻ってくると――。
「お母さんが食べなさいって、こんなものくれたわよ~!」
手にはスイカの乗ったお盆を持っていた。




