勉強会日和とはこのことだ!(4)
「やっぱり人それぞれ、思うところは違うってわけか。……みんな違ってみんないいとはよく言ったもんだよ」
「どんなことにも、良い事と悪い事ってありますからね。捉え方が分かれるのも当然です」
「でも、雨音に関しては俺もちょっと『おっ』って思ったぞ。何て言うか……メンヘラ?」
「め、メンヘラ?」
「ああ、違うな。……そう、ロマンチックだ」
「全然、違いましたね……」
「危うく絵玖を精神がおかしい人に仕立て上げるところだったぜ」
「……若干、その嫌いはあるかもしれないですけどね」
「自分で言っちゃう? そんなこと」
「よく言われますから、絵玖は変わってるって」
「俺も、それはおいおい分かっていくんだろうか?」
「可能性は十二分にあると思いますよ」
「まあ、俺も変わってるって言われるから、それくらいでちょうどいいだろ。普通って言われるよりは変わってた方が個性があっていい」
「あはは、じゃあ、どんどん変になっていけるよう頑張りますね」
「うん、頑張れ」
「――よし、できました~」
そう言うと、絵玖は出来たての料理をテーブルに運んでくれた。
「お~、これは美味そうだ」
「ちょっと、洋風な感じにしてみました」
ラインナップはご飯にコンソメスープ、そして鶏肉のピカタ。
何とも食欲をそそる美味しそうな匂いを漂わせている。
「どうぞ、召し上がれ」
「おう、いただきます」
早速、ピカタに一口齧りつく。もぐもぐ……。
「――美味い、こりゃ絶品だ」
「本当ですか? よかった」
「味付けもバッチリだし、卵とよく絡まってる。これはご飯が進むよ」
「ふふ、ありがとうございます」
「ピカタ、よく作るのか?」
「そうですね。あんまり朝食に作ることはないんですけど、レシピが簡単で見た目がお洒落だから……」
「確かに見た目はお洒落だよな。……ちなみに、ピカタが何故ピカタと呼ばれてるか知ってるか?」
「え? 意味があるんですか?」
「ああ、あるぞ。ちなみにピカタは何語だと思う?」
「え? えっと……英語?」
「残念、正解はイタリア語。イタリア語の『ピッカータ』って言葉に由来してるんだよ。ピッカータは槍で一突きって意味があって、肉が薄くて一回フォークを刺すだけで裏返るから、そういう名前が付けられたんだってよ」
「へぇ~、ピカタってイタリア語だったんですね。初めて知りました」
「完全に雑学だけどな。確かに言われてみればそうだよな。一回こうやって刺すだけで――すぐに裏が見える」
「あたし、てっきりピカタって人が作った料理だからそういう名前になったんだと思ってました」
「じゃあ、一つ勘違いを減らすことができたな。今度、誰かに教えてあげるといい。結構こういうどうでもいい知識って、面白いものだからな」
「そうですね。今も聞いててすごく面白かったです。というか、よく知ってましたね? ピカタのことなんて」
「あったんだよ。ある日、『ピカタって、どういう意味なんだろう?』みたいに思った日が。床に就いた後にもかかわらず、気になって仕方ないからインターネットで意味を調べた」
「随分、ピンポイントだったんですね……」
「俺はいっつもそんな感じなんだ。下らないことを全力で考える癖がある。その時は役に立たなくても、ひょっとしたらいつかそれが役に立つ日が来るかもしれない。そう考えたら、無駄知識を身に付けるのも、悪いことじゃないって思うからな。現にこうしてピカタの知識が、絵玖との会話の材料にすることができた」
「そうですね。……あたしも、ちょっと真似してみようかな。というか、秀吾くんに教えてもらいたいです」
「俺でよかったらいつでも教えるぞ。ただ、少し気持ち悪がられることを覚悟しておくこと。『え~? 何でそんなことまで知ってるの? 気持ち悪~い』って言う人も中にはいるから、それにいちいち傷ついていては身が持たないから」
「誰かに言われたんですか? そういうこと」
「うん、両親に言われた」
「りょ、両親に!?」
「今言った通りに言われたよ。善意で教えたつもりだったんだが……要らん世話だったんだわな。まあ、他人に言われてないからよかったけど。とにかく、絵玖もその覚悟はしておくように。OK?」
「お、OKです」
「よし。……あ、コンソメスープって、まだ残りある?」
「あ、はい。装ってきますね。まだ残ってるので……」
――そんな話をしつつ、絵玖の作った料理に舌鼓を打ち、お腹を満たすことができた。




