雨音エレジー(5)――絵玖視点
「――げほ、げほっ、えほっ!」
「絵玖ちゃん、大丈夫ですか!?」
「げほ、えっほ……! だい、じょうぶです。最近、すごく調子が良かったから……ちょっと、油断してたかもしれないですね」
「絵玖ちゃんは何も悪くありませんから。……今、鎮静剤のほうを打ちますから」
「げほっ……ありがとう、崎田さん」
「これくらい当然です。……………………終わりました」
「げほ、げほ……はぁ、はぁ……」
「しばらくしたら、じきによくなってくると思います」
「うん……ごめんなさい、崎田さんの服、血で汚しちゃって……」
「何を言ってるんですか。絵玖ちゃんが元気になるなら、これくらいどうってことはないですよ」
「はぁ、はぁ……ありがとう。残念だな、今日は……学校に行きたかったんだけど……」
「気持ちは分かりますが、苦しそうにしている絵玖ちゃんの姿より、元気でかわいい絵玖ちゃんの姿を見せたほうが、クラスのみんなも喜ぶと思いますから、今日は、ゆっくり休んで体調を元に戻しましょう」
「そう、ですね……学校に行きたいって思った時に限って……体は言うことを聞いてくれないっていうのは……ちょっと、悔しいです」
「そうですね。でも、また数日後は、言うことを聞くようになってくれてると思いますよ。昨日までは、元気でいられたんですから、ちょっと乗り切れば、また元通りです」
「うん。……こんな病気に、負けてられないですから……はぁ、はぁ……」
「…………? 絵玖ちゃん? 誰かからメールが届いてるようですよ?」
「メール? 誰からだろう……?」
「私が、読みましょうか?」
「はぁはぁ……、お願い、します」
「えっと……あ、絵玖ちゃん。秀吾くんからのメールですよ」
「はぁ……秀吾くんから? 何て書いてあります?」
「はい、読みますね。……お疲れ様、風邪のほう大丈夫か? 早く良くなるといいな。また学校で会おうぜ。P・S:ノートは亮と佑香と分担して作っておいたから学校で渡すよ。返信は不要だから、ゆっくり休んでくれ――だそうです」
「はぁ……嬉しいな。あたし、体のこと気遣ったメールを、友達からもらうの……初めてかもしれない……」
「秀吾くんは、とっても友達思いの良い子ですね。私も、話してみたくなってしまいますよ」
「えへへ……普通、友達に成り立てだったら、こんなメールは送ってくれないはずなのに……感激しちゃうな」
「それだけ、絵玖ちゃんのことを大切に思ってくれてるんですね。これに応えるためにも、早く回復して、秀吾くんに会わないといけませんね」
「そう、ですね。また、秀吾くんと遊びたいから……治さないと……」
「秀吾くんも、それを願ってるはずですよ。――というわけで、治すために、何か食べましょうか。何が食べたいですか? 体に優しいものになってしまいますけど、リクエストに答えますよ」
「じゃあ……桃が食べたいな」
「桃ですね。分かりました、ちょっとだけ時間がかかりますけど、一人でも大丈夫ですか?」
「もちろん、平気です。……ちょっとずつ、楽になってきてるから」
「じゃあ、少し待っててくださいね。失礼します」
――ガタン。
「はぁ、はぁ……秀吾くん、ありがとう。ふふ、あたし、本当に良い友達を作ることができたんだね。……早く、よくなって、また遊びに誘おう」
……………………。
…………。
……。




