表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/318

あの子って、実は意外と……(10)

「ところで、須貝は何をしてたんだ?」

「え? えっと、野良犬さんに道を通せんぼされてました」


「いやいや、俺が聞きたいのはそれが起こらなかった場合のこと」

「あ、ああ……そ、そうですよね? すいません」


 話す回数が増えていく毎にドジっ子キャラが裏付けられていくな。


「特に何をしようとは思ってなかったんですが、強いて言えば散歩、でしょうか? まだこの村のことをはっきりとは知らないので、どういうものがあるんだろうって思ったので」

「そうか? で? 散歩してみた感想は?」


「正直、直後にコウタくんに通りゃんせされちゃったんで、全くと言っていいほど散歩できてなかったです」

「ああ、それは悪いことしたな。今度コウタに言っておくよ」


「いえ、向こうも悪気があったわけではないと思うので、気にしません。それに、散歩ならいつでもできますから」

「なら、いいけど」


「五十沢くんは、何処に行こうとしてたんですか?」

「ん? 俺か?」


「はい。さすがにあたしを助けるためだけにここまで来た、なんてことはないと思うので」

「……須貝を助けるためだけに、と言いたいところだけど、言えないのが辛いところだ」


「あはは、ちょっと返答に困る質問をしちゃいましたね」

「俺は、この先にある駄菓子屋に行こうと思ってたんだ。知ってるか? 『あびこ』って名前の店なんだけど?」


「いえ、初めて聞きました。こっちの道に来たのが、今日が初めてなので」

「そうなのか。じゃあ、須貝の家はこっちとは反対のほうにあるんだな?」


「はい、そうですね」

「何だろう、急にあの店のアイスが食いたくなってな。ちょっと家から迂回して向かおうとしてたんだ。そしたらちょうど須貝がいたと」


「そうだったんですか。……早く食べたかったかもしれないのに、止めてしまってごめんなさいでした」

「いいんだって、謝らなくても。須貝は何も悪くないから、むしろ人助けしてより美味いアイスが食えるってもんだ」


「そ、そうですか?」

「ああ。――よかったら、一緒に行くか?」


「……え?」

「いや、須貝、この村のことをよく知りたくて散歩してたんだろ? アビコまでの道のりまで、色々と見どころもあるし、俺に教えられることも結構あると思うから。どうだ?」


 おいおい、どうした俺。何があった俺? 


 つい先日までちぐはぐな会話しかできなかった俺が、一言会話を交わすだけでも苦戦していた俺が、自分から須貝に一緒に村を回るお誘いをしている。


 明日は雪が降るかもしれないぞ。


「……迷惑、じゃありませんか?」

「迷惑なら言わないって」


「……じゃあ、よろしくお願いします」


 須貝はぺこりとお辞儀をした。オッケーがでた。


 これを亮と佑香に伝えたら、すげーびっくりするだろうな。


 まあでも、そのびっくりは「何してくれちゃったんだ? お前」のような罵倒されるものではなく「すごいな、お前」といった賞賛のびっくりのほうだろう。


 ……自分自身でもびっくりしてるから、予想以上にびっくりされるかもしれないな。


「んじゃ、行くか」

「はい」


 俺は須貝と人気のない道路を歩きだした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ