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あの子って、実は意外と……(8)

「……………………」

「よし、これでオッケー」


「ありがとうございます」

「まあ、コウタは人なつこい犬だから、別に須貝を襲おうとしたわけじゃなくて、ただ遊んでほしかったんだな。今度会ったら頭撫でてみるといい、喜ぶから」


「すごいですね。飼ってるわけじゃないのに、あんなに扱いが上手いなんて……」

「何年も遊んでれば、嫌でも慣れるさ。須貝もその内慣れると思うぞ。……犬、苦手なのか?」


「い、いえ、嫌いではないですよ。ダックスフントとかコーギーとかは見てるだけでもかわいいですし。ただ、どうやって道を開けてもらえばいいのか分からなくって……」

「犬に気を遣う必要はないんじゃないのか? 普通に立ち止まらずに歩けば譲ってくれたと思うが」


「そ、そうしようと思って試そうとしたんですが……カッチリ目が合っちゃって……つい足が止まってしまって……」

「……そうか」


 じゃあ逸らして再チャレンジを――と言いたいところだが、それがなかなかできないから立ち止まってしまったんだろうから言わないでおく。


 そういう人もいるって風に捉えなければなるまい。


「本当に、ありがとうございました」

「いいんだ、気にするな。……汗、すごいことになってるぞ?」


「え? あ……あう……」


 長い戦いで汗を掻いていることも忘れていたらしい。


「えっと、えっと……」

「ハンカチとか、持ってないのか?」


「あ、えと……あ~……」


 どうやら持ってないようだ。


 俺のほうは――うん、今日もポッケに入ってるな。


「ほれ、よかったら使いな」

「え? いいんですか?」


「いいから差し出してるんだろ? 女の子が汗ダラダラの顔じゃかわいそうだ」

「うう、重ね重ねありがとうございます……」


 須貝はおずおずとハンカチを受け取り、顔の汗を拭いた。


 何だろう、須貝ってこんなキャラだっけ? って思いたくなったぞ。


 いや、それともこっちが本当の須貝のキャラなんだろうか? まだまだ学校では本来の須貝の姿は出せていないように見えるし……可能性としてはなくはないか。


 でも、もしこっちが本当の須貝だとしたら……少しヌけてる子、今風の言い方をすればドジッ子ってことになるが……。あれ? でも……待て? 


そういえば、それっぽいことを数日前にクラスメイトの木原がそんな一面を見た、的なことを言ってた気がするな。


 何でも休み時間の時に「50円切手っていくらなんだろう……」みたいなことを呟いていたんだとか。


 「いや、50円でしょ!?」とツッコミたかったらしいが、まだそこまで仲良しではないから聞き流してあげたらしい。もしそれが本当なら、この道路の犬事件(仮)でのハプニングも納得がいく。


 ヤバいな、どんどん須貝がドジっ子にしか見えなくなってきたぞ。


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