あの子って、実は意外と……(7) 【挿絵付き】
――どうやら、今し方考えた策はお蔵入りになりそうだ。何故かといえば――。
「……うう……」
「はっ、はっ……」
何やら須貝が、犬と楽しそうに格闘しているようだからだ。
「…………」
「…………」
須貝も犬も、両者見つめ合ったままほとんど動かない。
須貝は先に行きたいのか、時々道路の端のほうから抜けていこうと試みるのだが、それに合わせて犬も動くので、結局状況は変わらないようだ。
何ともおかしな光景だ。やっぱり、都会で育ったから野生の犬っていうものに免疫がないんだろうか?
とはいっても須貝の前にいる犬は尻込みするほどの犬ではない。サイズは柴犬よりも少し小さいくらいで、怖い、と思われるようなオーラは全く放ってない。
それにぶっちゃければ、あの犬のことを俺は知っている。
日向村では有名な野良犬で、とても人なつこい性格の犬だ。
俺たちの間で「コウタ」と呼んでいる。
多分、須貝を襲おうと思ってるのではなく、構ってほしくて前に立ちはだかってるんだろう、尻尾振ってるしな。
このままさっと近くの物陰に隠れ、須貝がいつコウタを交わして向こうのほうへ抜けていくかを観察してるのも面白いかもしれないが、それはさすがに忍びないしかわいそうだ。
「うう……」
目がうるうるしてるしな。さすがはアイドルだ。
少しばかりの勇気を出して――出動だ、俺。
「よかったら、助けようか? 須貝」
「え?」
どうやら気付いてなかったようで、須貝はびくっとしてこっちを振り向いた。
「い、五十沢さん……」
「邪魔しちゃったか?」
「い、いえ!? そんなことないです。た、助けてください! 全然、先に進ませてくれないんです」
「はっ、はっ……」
コウタは未だに尻尾を振って、時々背筋をピンと伸ばして屈むような格好をする。
うん、完璧構ってほしいようだ。あの仕草は犬が遊んでほしい時に見せるもの。
これが須貝の目には凶暴な野犬に見えるんだろうか?
「うう、あたし……どうしていいのか分からなくて……」
どうやら本気でテンパっているようだ。早いとこ助けてやろうか。
……助けるって言い方はおかしい気もするが……。
「ほら、コウタ、来い」
「はっ、はっ……!」
俺が一声かけると、コウタは嬉しそうに俺の元に駆け寄った。
そして俺の顔をベロベロ……。
「うわっ、ちょ……やめろって。分かったから」
「わぁ……すごい……」
「よぉ~し、よしよし……」
「くぅーん……」
頭、顔、体とじゅんじゅんに撫でくり回してやる。
どうして動物をあやしてる時って、人は口調が変わるんだろう。これが親の心境ってものなんだろうか。
「コウタ、これから俺たち行くところがあるんだよ。だから悪いけど、ちょっと道譲ってくれないか? 言うこと聞いてくれるな?」
「はっ、はっ……」
「また今度、遊んでやるからな」
「わんっ!」
コウタは満足してくれたのか、尻尾は振ったまま、畑道のほうに歩いていった。




