あの子って、実は意外と……(3)
「おい、加減をしろよ。背中に紅葉ができるぞ」
「そんなやわっこい体してないだろお前。にしても、俺は嬉しいぞ、うん、実に嬉しい」
「俺の親のような喜びようだな」
「嬉しいもんは仕方ない。その調子で今後も距離を縮めるんだぞ」
「あ、ああ。……そうだ、せっかくだしお前に一つ聞いてみるとしよう」
「ん? 何だ? またモザイクなしの代物がほしいのか?」
「……また新しいの手に入ったのか?」
「おうよ。ずっと追いかけてきた女優だったんだけど、ついにそっちの方に足を踏み入れてくれたんだよ。待ち望んでいたその子のあの部分がバッチリ公開……鼻血ものだったぜ」
「どんな内容だった?」
「まあ、内容は至ってスタンダードなものだな、可もなく不可もなくってところか……でも、やっぱりかわいいな。感じてる姿がとってもセクシーだ」
「裏デビューなら、スタンダードが妥当か」
「どうする? ご所望とあらば焼き増してやるぜ?」
「……貰わない手はないな。是非焼き増してくれ」
「オッケー、任しとけ」
(※無断の焼き増しは犯罪なのでご注意ください)
「……と、話が逸れた。聞きたいのはそれじゃないんだよ」
「ん? そうなのか?」
「もちろん聞けたことは嬉しいが、本題はそっちじゃないんだ」
「そうか。で? 何を聞きたいんだ?」
「お前から見て、須貝絵玖をどう思ってる?」
「……どう思ってるとは?」
「そのままの意味。アバウトで構わないからお前からみた彼女の印象を聞かせてほしい、参考までに。特に深い意味はない」
「ただの興味本位ってことか?」
「そう、別に答えるのに困らないだろ? 佑香の前じゃ聞きづらいからな」
「まあな。うーん……大きい声じゃ言えないけど、ちょっと難しいタイプだな。ランクDだ」
ランクDとは、亮が定める数々のランク付けのアルファベットだ。AからEまで五段階評価であり、Aに近いほど良く、Eに近いほど悪い。ランクDってことは、なかなか良い手応えじゃないってことだ。
「珍しいな、お前がそんな評価をつけるなんて」
「もちろん付けたくて付けたわけじゃないさ。ただ、率直な感想と言われたらこう答えざるを得ないわな」
「その理由は?」
「今までに見たことがないタイプだから、かね?」
「ふむふむ」
「前も同じこと言ってたけどよ、日を追うごとにそれは明瞭になってきた感じだな。間違いなく、あの子は人付き合いが苦手だ」
「言い切ったな」
「言い切れない理由がないからな。お前にも分かるだろ?」
「まあな。俺と同じような臭いがするとは思ってた」
「あそこまで引っ込み思案な子っていうのは初めてだからな。どう対応していいのか困ってしまうんだよ。お前も分かるだろ? 佑香ならギャグで済むことも、絵玖ちゃんは本気で落ち込むだろうって感じるような時」
「分かる。正直に受け取ってしまうことがよくあるように見える」
「悪い子でないことは分かるけど、まだイマイチ掴みきれない部分がある。だからランクDだ」
「じゃあ、標的には設定しないのか?」
「だな。少なくとも当分は無理だわな。性格が合わない子と付き合うほど難しいことはない。目の保養にさせてもらうよ」
「どっちにしても自分のために使うんだな」
「もちろん。考えてもみろよ、俺、須貝絵玖と知り合いなんだぜ~っていったら大半の男が羨ましがるだろ? これだけでステータスアップ必至だ」
「それがステータスにつながるのかがそもそも疑問なんだが」
「秀吾にもその内分かる時が来るさ。アイドルってものを知っていれば、いざアイドルと付き合う時が来たときにフィードバックして活かせんだろ?」
「その状況が巡ってくることがそもそもないんじゃないのか? 天文学的確率だぞ」
「だから、来たときだって言ったろ? どんなに確率的に有り得なそうなことでも、活かすことが可能ならば覚えておくに越したことはないじゃないか。違うか?」
「うーん……」
「良い経験をさせてもらえてる分、俺たちは幸せじゃないか」
「そういうもんか? というか、もう話が変わっちまってるぞ」
「おお、すまんすまん。とにかく……しばらくは根気が必要ってこった、こんなんでいいか?」
「ああ、参考になった」
「今日も頑張れよ? 佑香にダメだし喰らわないように」
「ああ。攻める時に攻めるさ」
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