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須貝絵玖登場! 転校生は元アイドル!?(10)

「厳しい芸能界の波に揉まれて、人との付き合いに魅力を感じなくなってしまったのか……」

「それは、結構あるかもしれないわね。実際、ああいう世界はブラック以外のカラーはないだろうし」


「率直な感想、すっごく疲労してる感じだったな。近寄るのが憚られるくらいに」

「そこまでではないでしょう。向こうだって、友達は欲しいと思ってるはずよ」


「だと俺も喜んで話をしたいと思うが……俺が友達になれるのは、もう少し先かもしれないな~まずは段階を踏まないと」

「ちょっと、ミャンマーまで何を言い出すのよ」


「もちろん、俺は友達になりたいとは思ってるぜ。すごい良さそうな子だし、何よりあんなベッピンさんは見たことがない」

「かわいくなくて悪かったわね……」


「そういう意味じゃないって。身近にお前の巫女服ファンいるじゃねぇか」

「ファンじゃないわ、ただの変態よ」


 さっきからボロクソ言われるな、おい……。


「話を元に戻すと――俺のほうは絵玖ちゃんと仲良くなりたいという気持ちはあるけど、向こうもそう思ってくれないと、友達になるのは難しいかもしれないってことよ」

「まだ初日なのに、そんなこと分かるはずがないでしょう? そんなの向こうだってそう思ってるわよ。来たばっかりで色々気持ちの整理もあるでしょう?」


「それも一理あるが、どっちにしても時間は必要だな。少なくとも、佑香が絵玖ちゃんと仲良くなってからになるだろう」

「もう、ミャンマーまで秀吾みたいなこと言わないでよ。これ以上手を拱くのは面倒くさいんだから」


「だから、言ってるだろう? 俺は友達になる気はあるって。でも時間がちょっといるかもって言ってるんだ。彼女、人付き合いに疲れてるっぽいし、こっちがいそいそと友達になろうとしたところで上手くいくわけない。だったら、まずは同性のお前とかが彼女と仲良くなって、その後で俺とかとも親しくなってくれればって思ってるの。あんなかわい子ちゃんと友達になる機会を俺が見す見す捨てるわけがあるまい」


「……言われてみればそうか」

「何も一週間とかでさよならってわけでもなし、まずは彼女に俺たちが安全だってことを知ってもらうことが先決」


 一見馬鹿そうに見えて、こういうところ亮はしっかりしてる。人間関係に関しては、俺なんかよりもずっと大人だ。


「そうね、納得したわ」

「ふふん、だろ? ミャンマーも捨てたもんじゃないだろ?」


「まあね。どこぞの変態ヘタレなんかよりもずっとまともだわ」

「……まだ俺を貶さないと気が済まないんか? 確かに悪いのは俺だけど、そろそろ本格的にへこむぞ」


「自分の行いが悪かったことを反省したかしら?」

「もちろんしたさ。むしろこんだけボロクソに言われて分からないままでいられるほうがおかしい。そこまで俺はネジ外れてないからして」


「じゃあ、明日から考えを改めなさい」

「改めるさ、改めるけど、一つだけ言わせてくれ。……友達作りが上手いお前たちが難易度高そうな素振り見せてるのに、ド下手糞の俺に手の打ちようがあるのか?」


「…………多分、大丈夫でしょって私は思うけどね」

「それ、ホントに思って言ってるか?」


「当然。ミャンマーもそう思うでしょ?」

「まあな。よく言うじゃねぇか、類は友を呼ぶって。はっきりとは分からないけど、多分絵玖ちゃんも秀吾と同じ人付き合いが上手くないタイプだ。同じタイプ同士、通じ合うものがあるんじゃないか?」


「そんなもんなのか?」

「まあぶっちゃけ、下駄を履くまでは分からん。なるようになるってもんよ」


 最後が偉く投げやりだが……断定できる理由もないわけだから仕方あるまい。


「何にしても、絵玖ちゃんとは仲良くなれるように頑張りましょう。目標は、夏休みまで」


 佑香が高らかとそう宣言した。


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