先生、それ本当に大丈夫?
私は昔、とんでもない紹介状を書かれたことがあります。
しかも相手は町のお医者さんでした。
当時私の身体には右足首の内側に大きなイボがあったため、それが邪魔で手術によって取り除きたいと思ってました。
ですがあの頃の私はバリバリの社会人で、働き口も完全週休二日を募集要項に書いておきながら土曜は休日出勤させるという所謂ブラックな職場。
なのでまとまった休日は取れずに機会をうかがっていたのですが、ようやく連休が取れたので近くの外科医院を訪ねる事に。
行った先は見た目七十歳前後のお爺さん先生が開設している古い医院で看護婦さんが三人いる所でした。
さっそく受付を済ませて診察して貰うのですが、周囲を見ると施設が素人目に見ても今ひとつ。
なので相談された爺さん先生も歯切れが悪い。
「うーむ、ウチはそういった事はもうやってないんだよねー。
設備も以前と比べて不充分になったし。
それとこういった手術は切除した後も安静にしてないといけないから、もっとまとまった休暇が取れてからやるといいよ。
その時にもっと施設が充実した病院を私が紹介するから、そしたらまたおいで」
ということでその日は仕方なくそのまま帰る事に。
それから約半年後、自由な時間が沢山出来たので改めて治療を行うため再度その医院へと足を運びました。
以前に来た時からそれほど月日も経っていないのでお爺さん先生も私を覚えているだろうと早速紹介をお願いすることになったのですが、お願いされた爺さん先生は私のことは覚えていたものの、対応は芳しくなく「うーむ、どうしようかな……」と困り気味。
そしてその後に発した言葉に私は耳を疑いました。
「ねえ看護婦さん、タウンページ持ってきてくれる?」
え? なに? タウンページ?
看護婦さんは言われるがままタウンページを渡すと、分厚いその本の医療系広告をペラペラとめくり、老眼鏡をずらしながら広告欄を眺めて選別を始めだす爺さん先生。
「どこがいいかな~」
そんなことを言いながら尚もペラペラとめくり、指で行をなぞりながら探している爺さん先生。
それを看護婦さんの三人は黙って後ろに待機しているという不思議な図が私の前に広がっている状況。
「どこがいいかな~」じゃないよ。
これが医者の紹介?
普通はその分野に強い知り合いの先生とか紹介するんじゃないの?
そもそも私はそのタウンページを見てここへ来たというのに。
そんな事を考えながらしばらく待っていると、爺さん先生は「おっ、いい所があるぞ」とその広告を指さして私に見せてきた。
「ここへの紹介文を書くから。待合室で待ってて」
言われるまま待合室でしばらく待っていると、封筒に入った紹介文が受付で手渡され、最後に診察代を払ってその医院を出る事に。
(……いったいここへは何しに来たんだろう?)
そんな風に思いながら外に出て空を見上げると青空が広がって今日もいい天気。
だけどもそんな天気とは裏腹に、私はまったく晴れない気分でその日は家路に着くことにした。
翌日、早速その紹介文を持参して紹介先の病院を訪ねると、 返ってきた答えは意外なものでした。
「ウチはそういった手術はやってないんですよね」
全然ダメじゃない。
今までのは何だったんだ?
今でこそ笑い話にもなりますが、当時の私は本気で脱力しました。
少なくとも私は、この爺さん先生には二度と紹介状を頼むことはありませんでした。
このエッセイでは今後も体験談を書いていきます。
今週は水曜日と金曜の21時に更新。
来週からは火曜と金曜の21時に更新しますので、よろしければまたお願いします。




