朝食
朝。
浜中家。
ダイニング。
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テーブルには朝食が並んでいる。
炊きたてのご飯。
焼き魚。
味噌汁。
卵焼き。
いつもの朝。
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浜中家は和食派だ。
父が日本にいた頃から変わらない。
香葉も嫌いじゃない。
むしろ好きな方だった。
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でも今日は。
「……。」
箸が進まない。
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魚を少しほぐす。
ご飯を一口。
それだけ。
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食べられない訳じゃない。
ただ。
食べたいと思わない。
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母は向かい側でそんな香葉を見ていた。
何も言わない。
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でも見ている。
ずっと。
「……。」
気まずい。
香葉は味噌汁を飲む。
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母が口を開いた。
「昨日楽しかった?」
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香葉は少し驚く。
「え?」
「クラスレク。」
「ああ。」
思わず笑う。
「楽しかった。」
本当に。
それは嘘じゃない。
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母も少し笑った。
「良かった。」
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数秒。
静かな時間。
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その後。
母はさりげなく言う。
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「でもご飯は楽しくなさそう。」
「……。」
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香葉は思わず顔をしかめる。
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「そんなことない。」
「そう?」
「そう。」
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母はそれ以上言わなかった。
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ただ。
ご飯がほとんど減っていないことも。
魚が半分残っていることも。
ちゃんと見ていた。
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香葉も分かっている。
最近。
食欲がない。
疲れやすい。
立ち眩みもある。
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分かっている。
でも。
認めたくない。
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認めたら、、、
全部本当になってしまう気がするから。
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「ごちそうさま。」
香葉は箸を置いた。
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母の視線を感じる。
でも。
何も言われなかった。
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その優しさが少しだけ苦しかった。
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窓の外では蝉が鳴いている。
夏休み間近の朝。
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香葉の夏は、
静かに始まっていた。




