レク開始
「早いってぇぇぇ笑笑笑」
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開始三秒。
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古畑亮、水風船直撃。
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校庭中に笑い声が広がる。
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「古畑一番乗りー!」
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「狙われ過ぎ、、、笑笑」
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「犯人出てこい!」
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「嫌でーす」
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相変わらずだなぁ……古畑、、、笑
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香葉は日陰からその様子を眺める。
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本当に。
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どこにいても目立つ。
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本人は普通にしているつもりなんだろうけど。
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その時。
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ふと視線が止まった。
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「あっ……。」
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蛍原さん。
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同じクラス。
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いつも本を読んでいる。
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休み時間も静か。
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流行り物なんて興味なさそう。
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服も持ち物も地味。
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真面目。
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おとなしい。
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そんなイメージ。
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なのに。
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今日は違った。
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ラッシュガード。
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首には水中メガネ。
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しかも。
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手には巨大な水鉄砲。
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完全装備。
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「、、、、、、」
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香葉は思わず吹き出した。
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楽しむ気満々じゃん笑笑
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蛍原さんは周囲の視線に気付いていない。
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真剣な顔でゴーグルを装着している。
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まるで大会前の選手。
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「準備良すぎでしょ笑笑」
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思わず声が漏れる。
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その瞬間。
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、、、、、、
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蛍原さんの水鉄砲が火を吹いた。
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「きゃぁぁぁ笑笑笑」
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女子グループが逃げる。
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蛍原さん追いかける。
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まさかの展開。
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校庭がさらに騒がしくなる。
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香葉は笑った。
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本当に笑った。
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最近で一番かもしれない。
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みんな色々な顔を持っている。
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学校では見えない顔。
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今日だから見える顔。
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その時。
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誰かが水風船を抱えて走っていく。
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誰かが叫んでいる。
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誰かが逃げている。
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夏だなぁ。
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そう思った。
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そして。
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私も楽しみますかっ!
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香葉はベンチから立ち上がった。
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少しだけ身体は重い。
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少しだけ不安もある。
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でも今は。
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そんなことを考えたくなかった。
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高校三年生。
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最後の夏。
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最後のクラスレク。
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楽しめる時に楽しもう。
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香葉は近くのバケツから水風船を一つ手に取った。
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その瞬間。
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遠くで亮が叫ぶ。
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「浜中ぁぁぁー!」
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「何ー!」
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「それ投げるなよー!」
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「何でー!」
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香葉は思い切り振りかぶった。
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古畑の顔が引きつる。
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そして。
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初めて見るくらい楽しそうな笑顔で、
香葉は水風船を投げた。




