↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
126/244

作品

午後。


病室には静かな時間が流れていた。


香葉はベッドのテーブルにノートパソコンを置き、画面をじっと見つめる。


開いているのは、総合型選抜で提出する制作作品の説明文。


作品そのものは、まだ存在しない。


スケッチブックに描かれた、一枚のデザイン画だけ。


退院したら、生地を選ぶ。


型紙を作る。


ミシンを踏む。


何度も縫い直して、一着の服に仕上げる。


そこまでの工程は、もう頭の中で出来上がっていた。


香葉はキーボードに指を置く。


『作品コンセプト』


しばらく考え、小さく息を吸う。


ゆっくりと文字を打ち始めた。


“誰かに選ばれる服ではなく、着る人が自分らしくいられる服を作りたい。”


“服は、その人の背中をそっと押せる存在であってほしい。”


途中で手が止まる。


「……違う。」


一度すべて消す。


もう一度書き直す。


文章も作品の一部。


だから妥協はしたくない。


ふとベッドの横に置いてあるスケッチブックへ目を向ける。


ページを開くと、描かれているのは何度も手直ししたデザイン画。


まだ紙の上にしか存在しない一着。


それでも香葉には、完成した姿がはっきりと見えていた。


「退院したら……。」


小さく呟く。


「絶対に形にする。」


その声には、不安よりも決意の方が大きく込められていた。


病室の窓から差し込む夏の日差しが、スケッチブックのページを静かに照らしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。