第92話:最高フレーム、あるいは魂の共鳴
虹色の光がゆっくりと夕闇の空に溶けて消えていく。
私は激しい動悸に震えながら、掠れた声で問いかけた。
「はあ、はあ……。おじいちゃん、なんとかなったの……?」
『ああ。タンカーは安全な沖合まで押し戻した。
あとは、間もなく到着する海上自衛隊に任せればよい』
おじいちゃんの声は、どこか誇らしげに響いた。
「……ねえ、今の何? いきなり出力が跳ね上がって、
体が熱くなって……。あんなの訓練ではなかったわ」
『ふふ、驚いたか。これこそがわしの最高傑作。
ガソタムの骨格、最高フレームの真の力じゃ』
コンソールに、隠されていた未知の構造図が浮かぶ。
『これは精神波読取装置の機能を持つチップを、
金属粒子レベルで構造材に鋳込んだ特殊な素材なんじゃ。
骨格そのものが、お前の意志を読み取るコンピューターなんじゃよ』
「……骨組みが、私の心を読み取っているの……?」
『そうじゃ。お前の「守りたい」という強い想いが、
エンジン内の燃焼効率を10倍、100倍にまで高めた。
機械と魂が溶け合った証拠じゃな。……麗、見事じゃ』
その優しい言葉に、張り詰めていた緊張が不意に解ける。
私は操縦桿を握ったまま、安堵の涙をこぼした。
ガソタムは静かに空に浮き、眼下の海を見下ろしている。
モニターの端には、こちらへ急行する艦隊の影。
けれど私たちは、静かに空中を漂いながら、
二人だけの勝利の余韻に、静かに浸っていた。




