第82話:孤立の城、あるいは沈黙の受話器
私は震える指で、スマホの連絡先を何度もタップした。
お父さん、お母さん、それにサキとチカ。
「お願い、繋がって……! 早く逃げてって言わなきゃ!」
しかし、耳に届くのは無機質な呼び出し音すらなく、
「回線が混み合っています」という絶望的なガイダンスだけ。
『無駄です。避難勧告による通信のパンク、および
テロ集団による電波妨害が開始された模様です』
バロの冷淡な声が響く中、私は居間の真ん中で立ち尽くした。
誰も捕まらない。みんながどこで、どうしているか分からない。
『レイ様。安心してください。この家は源造様が施した
特殊装甲により、どのような爆発からも守られます』
「え……? じゃあ、私はここにいれば助かるの?」
『肯定します。さらに地下のガソタムに搭乗
しておけば、安全性は万全です。さあ、早く地下へ』
バロは淡々と、私一人の「安全」だけを保証してみせた。
地下の鋼鉄の塊の中にいれば、世界が燃えても私は生き残る。
「……冗談じゃないわよ! 親も、友達も、街の人たちも
みんな死んじゃうかもしれないのに、自分だけ地下で
丸まってろって言うの!?」
私は叫び、涙で視界が滲んだ。自分だけが持つ「最強の盾」。
それが、今は何よりも重い「呪い」のように感じられた。




