第6話:善意の行方、あるいは不信の盾
「……。ねえ、バロ。この莫大な貯金、
さすがに自分一人じゃ使いきれないし、
どうしたらいいか悩んじゃうんだけど」
私はスマホに表示された「国家予算級」の
数字を眺め、深く溜息をついた。
「そうだ。これ、世界の恵まれない
子供たちのために寄付するとか……。
それなら、おじいちゃんも許してくれるよね?」
名案だと思った。
けれど、バロは即座にレンズを赤く光らせ、
私の言葉を遮るように音を鳴らした。
『待った、ですなレイ様。そのお考えは
あまりに純粋すぎて、危険にございますぞ』
「え、なんで? 良いことじゃない」
『レイ様の優しさには、このバロ、
深く心を打たれてはおりますが……。
残念ながら、昨今の非営利団体には
信用のおける所が少なくなっております』
バロはモニターに、いくつもの団体の
不透明な資金流用データを次々と映し出す。
『レイ様の善意が、どこかの誰かの
高級車や私腹を肥やす為に消えるのは、
私としても、おじい様としても本意ではありませぬ』
「……。う。なんか、リアルすぎて怖い。
助けたい気持ちまで、データで否定された気分」
世界を救う前に、まずは寄付先の
裏事情を暴き始めてしまった我が家のAI。
私の「善意の使い道」は、
再び迷宮入りしてしまった。




