第1話:地下に眠る、おじいちゃんの負の遺産
祖父は『機動戦士ガンダム』というアニメが好きだった。
私はそういったロボットアニメは見ない。
名前は知っていても、内容は一ミリも知らなかった。
祖父は自分で実際に乗れるガンダムを作りたかった。
おじいちゃんの時代、まだ二足歩行の技術は不足していた。
二足ロボット、それも巨大な物を歩かせる。
そんなことは、当時はただの荒唐無稽な夢だった。
それが、つい最近のことだ。
ロボットの二足歩行技術が、劇的な進歩を遂げた。
二足歩行が夢でなくなったとき、おじいちゃんは歓喜した。
祖父は秘密裏に、自宅の土地に地下施設を作った。
そこでロボットを作ろうとして、本当につくっちゃったのだ。
でも、完成させた直後、おじいちゃんは亡くなってしまった。
私の通う高校は、おじいちゃんの家に近かった。
家族が「相続してそこに住めば?」と言ってくれたので、
私は言うとおりにすることにした。
……あの日、部屋で地下に続く階段を見つけるまでは。
埃まみれの階段を降りた先にいたのは、
暗闇の中で鈍く光る、十八メートルの鋼鉄の人型。
机には、おじいちゃんが綴った建造記録や説明書。
表紙には、自信満々な殴り書きでこうあった。
『J01-GSTM 通称ガソタム』
重力変換式着火型ガスタービン推進機構。
記録によれば、出力六万五千馬力。重量六十トン。
そして、その最後の一ページに私宛の言葉があった。
『麗へ。このガソタムを、お前に託す』
……託されても困る。全然嬉しくない。
馬力って何? よく分からないけど、桁がおかしい。
私は震える手で、その記録を閉じた。
こんなのバレたら、絶対にただじゃ済まない。
「……よし、見なかったことにしよう」
私は静かに、地下室の照明を消した。
私の名前は、古谷麗。
読み方は『うらら』。……絶対、『れい』とは呼ばせない。




