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おっさんと少年の異世界冒険譚  作者: そぼろ
おっさんと少年
11/11

新たなる火種

「悪いがこの街までだ」


 ベスティエ連邦まで行く途中の比較的大きな街である、サンドレアという街でのことだった。ウィルは俺を宿の部屋から呼び出して、1階にある酒場でそう告げた。

 目的地である連邦の中央都市まで、あと2週間といったところか。オーガを倒した次の日から、車内は険悪と言っても過言ではない雰囲気だったからな。寧ろ、良く1週間も我慢してくれたとさえ思える。


「まぁ、分かり切ったことだが。理由を聞いても?」

「ミア様がこれ以上耐えられん。お前の気持ちも分からんでもないが、あれはやりすぎだ。依頼主であるミア様がお前に信用を置けなくなった以上、依頼は続けられん」

「なるほどな。いや、特に文句を言うつもりは無い。寧ろ良くここまで連れてきてもらったと感謝したいくらいだ。」


 あれから大きな群れと遭遇することもなかったしな。


「ミア様から言い出したことではない。依頼したからには最後までお願いするべきだというミア様を俺が説得したんだ。ここまで同行してもらったのは、あんなことがあった直後に契約破棄しては助けてもらったのに申し訳が立たないというミア様の懇願もあったが、何よりあそこからここまでにここサンドレアしか新しい護衛を雇う為の冒険者ギルドがなかったというのがある」

「そういうことか、分かった。何にせよこの街なら俺達も過し易い。」


 ありがたいことだ。冒険者ギルドには行けないがな。


「これが今日までの護衛料だ。30万ゴールド分、占めて銀貨30枚入っている」


 銀貨30枚、銀貨1枚が1万Gだな。確か銅貨100枚で銀貨1枚だったはずだから、銅貨は100Gか。金貨はどうだったかな?確か100万Gだったと思うが。


 しかし驚いたな。まさか満額もらえるとは思わなかった。


「本来の半分しか護衛出来てないのにいいのか?」

「ミア様がせめて護衛料は満額出すべきだと言ってな。あの魔物の群れではお前が単独でオーガを仕留めた上、ソウのほうにもかなり手伝ってもらった。言ってしまえば2人分の護衛料の半額だ」

「なるほど。ならありがたく受け取っておこう」

「連邦まで連れて行けずに済まないとは思っている」

「気にするなよ。ぶっちゃけた話この1週間は護衛という名の相乗り状態だったんだ。あぁ、一つ聞いてもいいか」

「何だ?」

「オーガの素材が売れる場所だ。冒険者ギルドとかは目立つから売れん」

「まるで犯罪者だな…。まぁいい、詮索はしない。ここでもそうだが、訳アリの素材とかは大体スラムのほうで売買されている」

「どこにでもスラムがあるような言い方に突っ込むべきか、やけに詳しいことに突っ込むべきか…」

「もう突っ込んでるじゃないか。俺は元スラム出身だからな。まぁ、実際スラムはどこにでもある。孤児や犯罪者とか、要は街の闇を閉じ込めておけるからな」

「必要悪ってやつか…」

「そうだ。あぁ、1か所だけスラムがない、或いはそういう話を聞いたことがない街があるな」

「ほう、どこなんだ?」


 スラムがないって、もしかして街全体がスラム化してるんじゃないかと思うが。少し気になった。


「魔族の国、オラクル帝国にあるフューレンだ」





「フューレン、ね…」

 

 部屋に戻り一人ごちた。

 外は既に夜の帳が下りていて、ソウちゃんはベッドに潜っている。寝ているようだ。


「まあ、どうしてもベスティエに行きたいわけでもないから、方向転換するのもありっちゃありだけど…」


 王国から南東に向かった方向にはベスティエ連邦があり、南西にオラクル帝国が存在している。

帝国に行くなら西のほうに行けばいいのだから、サンドレアまで来たことは無意味ではない。

しかし、俺がベスティエ連邦に行きたい理由はある。


「まだ狐耳の美女を見れていない!」


 ミアちゃんは狐耳ではあるが、いわゆる一般的な金色をしており、また余りに幼すぎた。理想ではない。

やはり理想はボンキュッボンで、日本人のような黒がいい。

 俺はこの世界にいる間に、お近づきにはなれずともせめて一目は見てみたいと思っているのだ!


「その理想のためには…行くしかないな?」


 自問自答は秒速で終わった。



 翌朝、普段よりかなり早い時間に起きた。

早寝早起きを心掛けているわけじゃない、単純に昨日ウィルと話し合った結果だ。

 俺達は早めに起きてとっとと宿から出て行く。ウィル達は普段通りに行動することで、ミアちゃんと俺の接触を避けようと話したのだ。


「それじゃ、行こうか。今日は取り合えずこの街で改めて準備を整えよう」

「分かりました。まずはどこへ?」

「スラムだ。オーガの素材を換金する」

「なるほど」


 ソウちゃんには起きた時に伝えた。ミアちゃんとの別れを惜しむかと思ったが、案外あっさりしていて驚かされた。人間関係には割とドライ何だろうか。逃げると伝えた時も王国の人をあまり顧みなかったし。


「あの、少しよろしいでしょうか?」


 突然後ろから声がかけられた。早朝ということもあって人どおりは少ないが、いないというほどでもない。それでも、声がかかるようなことはしてないし、聞き覚えのない声に警戒しながら振り向いた。


 そこにいたのは騎士の恰好をした人種の女性、20代前半くらいか。赤い長髪は炎のように風に揺らめき、深紅の瞳はこちらをまっすぐに見据えている。異世界では美人が多いらしい。目の前の女性も間違いなく美人に入る類の顔立ちだった。そして、その騎士の意匠には見覚えがあった。王国のものだ。


「なんでしょうか」


 まさかバレているとは思わないが、それでも人というのは秘密を抱えると知られたくない相手には多少なりとも動揺してしまうものである。


「実は人を探しているんですけど」

「残念ながら力になれそうもありません。私たちもここに来たばかりですし」

「…そうですか。ではもし見かけたら一報頂いても?」


 即答したことで逆に怪しまれたか。少々懐疑的な眼差しでとらえられた。


「えぇ、勿論。どのような人をお探しで?」

()()()()()()()()黒い瞳と、同じくらい黒い髪の男二人組の冒険者なんです」

「…なるほど、目立ちそうな色ですね」


 黒い髪も黒い瞳もこの世界では珍しくない。但し、目と髪両方が黒いとなると話は別だ。

 王城で過ごしていた頃、城下町に出ることが何度かあったが、俺達以外で黒髪黒目の人物はいなかった。


 つまり、目の前の女性は間違いなく俺達を探している。


「そうなんですよね。私も黒い髪と目を持った人なんて探しても全然見当たらなかったんです。そこで先ほどすれ違い様にお二人とも黒い目をしていらっしゃったので、あるいは、なんて思ってしまって」

「いやいや、いくら何でもそれはないですよ。俺達も目は黒いかもしれませんが、髪は見ての通りです。それに連れに至っては()()ですよ」


 作り笑いを浮かべながら、ソウちゃんを指す。ソウちゃんはこれ呼ばわりしたことに少しムッとしてしまったようだ。あとでご機嫌を取ろう。

 ソウちゃんの見た目はどこからどう見ても女だ。骨格を参照できるような奴が世間にそんないるとは思えない。


「ふふふ、そうですよね。どう見ても女性の方なんですけど、冒険者だからなのか逞しく見えてしまって」

「…」


 あ、これ骨格を参照するタイプだ。


 どうする?殺すか?

 いや、さすがにこんな大通りでやるのはまずい。


「…そんなに怒らないで下さい。女性を逞しいなんて言い方、失礼でしたよね。申し訳ありません」


 騎士の女性はやや慌てたように俺達を交互に見て頭を下げる。

 いつの間にか二人して睨んでいたようだ。ソウちゃんに至っては殺気まで出してる。


「…いえ、お気になさらず」


 そういってソウちゃんをなだめようと取り合えず腰に手を添えて手前に抱き寄せてから、もう片方の手で頭を撫でておく。どうどう。


「っ!?」


 ソウちゃん、女性扱いしたのは悪いからそんな目で見ないで。あれ?なんか顔赤くない?

ついには俯いてしまった。余計に怒らせたか。


「と、取り合えず見かけたら連絡しますので。あ、お名前だけ伺っても?」

「あ、これは失礼しました。私はミランダと申します。大通りに面した騎士の駐在所がありますので、ご一報いただけるようでしたらそちらに」

「分かりました。俺はヨシュア、こっちはソウと言いますので。ではまた」

「えぇ、よろしくお願いします」


 そうして騎士ミランダは立ち去って行った。

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