もし人生をやり直せるとしたら〜
次の試合はドライと行う事となった。
ドライの要望により、今回は飛行も武装の使用もあり。ただし武装の出力だけ絞ってある。
先の試合で、彼女達を侮るべきではない事を理解した私は、様子見でなく最初から倒すつもりでドライを見る。
ドライはと言えば、「魔法だけ教えるから、ドライの負けで良いよ〜」などと言った事により必要な訓練なのだからとアインに詰められ、少しいじけた様子であったが、正対すれば普段の垂れ目は油断なく私を見据えている。
既に魔法を開示したフィアとフンフが二人掛りでイオナと、そちらはアインが、こっちはツヴァイが就いた。
「じゃ、始めなさい」
ツヴァイの合図と同時に翼を展開し、盾を握りながら最短で殴り飛ばす。ドライが吹き飛びながら、放った光弾を悉く盾で撃ち落とし、着地と同時に突っ込んできたドライの胸にカウンターの拳を叩き込む。ドライは勢いのまま数歩よろめくとドサリと倒れ、その喉元に盾を突きつけチェックメイトだ。
「時計の針よ...」
「じゃ、始めなさい」
ツヴァイの合図と同時に翼を展開し、盾を握りながら最短で殴り飛ばそうとした。その拳をドライは間一髪で避け、懐に潜り込みながら展開した砲口を私のガラ空きの脇腹に照準する。引き金を引く瞬間、私はあえて砲身にぶつかる事で砲口を逸らし、そのまま腕を固めて投げる。対応できていない彼女の喉元に盾を突きつけ、チェックメイトだ。
「...紡いだ時を解き...」
「じゃ、始めなさい」
ツヴァイの合図と同時に翼を展開し、盾を握りながら最短で殴り飛ばそうとした。その拳をドライは間一髪で避けると後ろに下がり、展開した砲から光弾を乱射する。当たるものだけを防ぎながら土煙の向こうを透視し、左手に砲を展開し照準する。威力を抑え、彼女の足元を爆ぜさせ、バランスの崩れた隙に盾を手放し真っ直ぐ駆け寄り、慌てて照準された砲に砲身にぶつかる事で砲口を逸らし、腕を固めて投げる。だが、直ぐに転がって逃げようとしたので足で踏みつけ、盾を喉に突きつけ、チェックメイト。
「...新たな時を編め」
「じゃ、始めなさい」
ツヴァイの合図と同時に...そこで私は違和感を覚えた。ドライが鼻血を流している。私の記憶では勝負の直前までドライは平然としていたはずだ。だがどこか摩耗した様な彼女に気付いた途端、思い出す様に違和感が積み重なる。どうにもこの瞬間を何度も体験しているような気がする。
翼を展開して速攻するつもりだったが辞めて、砲身を展開する。その瞬間の彼女の驚きようは明白だった。
私は確信を持ってツヴァイに手を挙げる。
「...?どうしたのエリニュス」
「違う。私じゃ無くドライを見て」
「...え?ドライ?...!ちょっと!何回使ったらそうなるのよ!?」
ツヴァイはドライに駆け寄ると、止まらない鼻血に慌てて再生術式を掛けるが、貧血様でフラフラとしたまま、ドライは答える。
「...12回...」
「あー、もう。何やってんのよ!これも止まらないじゃ無い!」
ゆっくりと地面に寝かされたドライはこちらを見た。
「エリニュス、強すぎ。やっぱりドライじゃ何回やっても勝てない」
いつもの間延びした調子もなく、しかしその発言に確信を深めた。
「はぁー。とりあえず止まった。ドライ、しばらく寝てなさい」
そういうとツヴァイはこちらに向き直る。
「ねえツヴァイ、ドライの魔法って」
「ええ。なんて説明したら良いか...やり直せる魔法?詳しくは分から無いけど、孤児院でカードゲームが行われなくなった原因よ。まあ、いつもは2、3回のやり直しだけでダメでも諦めるんだけど...バカね」
「鼻血の方は?」
次の問いにはドライが寝たまま答えた。
「普通は頭痛や眩暈で済むんだけどね〜使いすぎるとたまに鼻血が出るんだ〜。まあ、こんなになったのは初めてだよ。それにまさか見抜かれるなんてね〜」
いつも通りを装ってはいるが声色が明らかに無理している。
「詳しくは後で聞かせてもらうから、今は寝てて」
ドライに告げて私は今組み手をしているイオナとフンフを見やる。
ドライの魔法の代償について正確に確かめておかなければならない。それにそうと見えないフィアやフンフも何を払っているのか。
今まさにその二人がイオナに伸されて、試合終了の合図をかけるアインを見ながらそろそろ日が傾くから終わりにしようと彼女達の元へ近づいていった。




