洞窟の光
それから長い年月が過ぎる。洞窟の入り口に小さな川がある。洞窟から送られる川の流れは周囲の木々へと注がれる。
洞窟の中には泉がある。天井からは水が流れ込み、小さな滝を作っている。そこから射し込む光は泉の水に反射し。踊るように周囲を照らし出す。泉には、周りに寄り添うように白い花畑が広がり、泉もまた、花を見守るように静かに水を流し続けている。
そこに二つの小さな影、そして洞窟の中に声がこだまする。
「ねぇ、ここって昔はもの凄く怖い場所だったって知ってた? 一度入ったら二度と出られない魔の洞窟、そこには竜が住んでて、みんな食べられるんだ ぐわおぅ!!」
男の子は自慢げに語り出す。
「わわっ! 大きい声ださないでよぅ、びっくりしたよぅ、でも、お婆ちゃんが言ってたよ。ずっと昔、平気な顔で洞窟に入っていく女の子がいたんだって」
女の子はそれに答える。
「じゃあ、そいつも食べられたんだろ?」
「分からないって言ってた。でも女の子は死んじゃって、竜も居なくなってたんだって」
「じゃあその竜が殺したんだ、その竜は何処に居るんだろ、ここに帰ってこないよな……」
「怖いこと言わないでよぅ、 でもお婆ちゃんの師匠がこれを見つけたんだって」
「何だこれ? ボロボロじゃんか、これって鱗っぽいな」
「ここに住んでた竜の物だって、古い物らしいけど、お婆ちゃんがくれたんだよ。いらないって言ったけど、お前が持つべきだって言われた」
「へぇ、いいじゃん、竜の鱗ってなんか格好いいじゃん。俺も欲しいな」
「じゃあこれあげる!」
「何これ? ただの石じゃんか」
「これはお前が渡したい人にあげなさいって言ってた。だからあげる!」
「おっ! これベルトにすると格好いいじゃん、ありがとな」
「よし! お前のお婆ちゃんに聞いてみようぜ、なんか凄い力があったりして!」
「そんなの無いよう、ちょっと待って!」
「はははっ、お婆ちゃんちまで競争だ!」
二人の影が洞窟を後にする。洞窟の出口から射し込む光が二人の影を包み込む。そして花の咲く泉は、ただそこに静かに有り続けた。
読んでくれてありがとうございました。
この物語は色々な「変化」をテーマにつくってみました。
悲しい話では無く、変化を受け入れて幸せをつかむ話にしたかったので、
そう感じてもらえたら嬉しいです。