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夢世界で受験勉強!!  作者: モノクロヨク
4/11

3限目 山羊?牛?

海外旅行とか行きたい


 無になれ。無になるんだ・・・。


 俺はひたすら右手を動かし、般若心経を写経するかのようにただ黙々と反省文を書いていた。そうでもしないと気が狂いそうだったからだ。


 今回用意された原稿用紙は200字3枚。それに俺は浮かんできた反省の言葉を書いては考え、書いては考えを繰り返して埋めていく。


 そうすることで、ぱっと見はぎっしりと書いているように見えるが実際は文の構成はめちゃくちゃで、内容は原稿用紙一枚にも満たないものになってしまった。だがそれでいい。どうせ先生は読まずに捨てるのだろうから。


 「ふうーーーー。おわったーーーーーーーー。」


 ペンを置き、長い溜息を吐く。

 

 句読点と段落わけを多用したので案外早く終わったが、ここまで集中したのは昨年度のテスト以来だ。


 「先生、書き終わりました。」


 「あら、早かったわね。そこのプリンタの上にでも置いといてちょうだい。」


 はい、見る気ありませんね。このままだと俺の20分が詰まった原稿用紙は古紙回収箱行き決定かな?トイレットペーパーになったら全部使ってやる。


 「あ、そうだ。柊君。」


 「はいなんでしょうかせんせい。」


 「ついでと言っては何だけど、そこのシュレッダーのごみ捨てといて。」


 f〇ck you


つい小声で言ってしまった。











――――――――――――


 ガタン


 「!?」


 急に聞こえてきた音にハッとなり振り返る。


 見るとさっきまで開いていた扉は固く閉ざされていた。


 「え・・・嘘!?」


 急いで駆け寄り、外開きのドアを頑張った空けようとする。がしかし、扉はびくともせず、まるで閉まるのに気が付かなかったボクを嘲笑うかのようにその場に立ち尽くしていた。


 「・・・。」


 何かハンマーのようなものを思い浮かべる。


 だがそれはここに来る前と同様、何かが変わるわけではなくただ思い浮かべただけにすぎなかった。


 「も~。何で・・・。いつもならパッと出てくるのに・・・。」


 今まで彷徨っていた夢の空間では、明晰夢と同様に自分のやりたいこと、望むものが想像するだけで何でもできていた。しかし、この世界に来たとたんに、何もできなくなってしまっているのだ。


 「ん~・・・!!!」


 何度も開けようと挑戦するが、扉はピクリともしない。


 流石に力任せに開けられたとしても、このボクの華奢な体では無意味だろう。こうなってはヒナタさんに向こうから頑張って出てきてもらうしかない。


 「とにかく、何かボクにできることは・・。」


 再度あたりを見渡す。そして気が付いた。


 小川の近くに、さっきは花と虹の輝きに気を取られて気が付かなかったのだがよく見ると水車小屋のようなものがたっていた。


 「何かあの中に、この扉をこじ開けられるものは入ってないかな・・・。」


 ボクはとりあえず、水車小屋へと足を進めた。
















 


 

――――――――――――


 キイイイィィィィ


 恐る恐る扉を開ける。かぎはかかってなかったみたいだ。さび付いているのか、扉のきしむ音とともに中へと足を進める。


 その時だった。


 「・・・ウッ。」


 私を襲ったのは強烈なカビ臭さと腐臭だった。外の景色からは想像もできないくらいのひどさだ。

 思わず嗚咽しそうになるが、何とか踏みとどまった。


 「何なのよココ・・・。」


 口に手を当て、警戒しながらも中へと歩いていく。


 大体4畳半程度の大きさだろうか。中には蜘蛛の巣の張った椅子と机、無意味なくらいに整頓された棚、壁にかかったロープと・・・何かの肉の燻製?そして・・・


 「キャ!?」


 思わず叫んでしまった。


 何故なら開いた扉のすぐ横には山羊とも牛ともにつかないような謎の生物の頭がはく製にして飾られていたからだ。悪趣味すぎる。一体だれが何の為に?


 戸惑いながらも何か使えそうなものを探してみる。


 棚の中にはよくわからない木箱、酒臭い瓶、やたら分厚い本2冊と普通の本が数十冊、そして謎の水晶と・・・。


 駄目だ、使えそうにないモノばかりだ。


 と、諦めかけていたが・・・、


 「ん?」

 

 棚の下に、入口からの光で光沢を放っているものを見つける。


 何だろうと拾い上げてみると、それはやや大きめの、芝を狩るときに使うような鎌だった。


 「・・・。」


 嬉しい気持ちの反面、よく見ると鎌には何か赤いものが付着していた。が、何なのかは考えないようにしておこう。とにかく、やっと使えそうなものも見つかったし、急いで戻ろう。


 と歩き出した途端、


 バタン!!


 目の前で勢いよく扉が閉まる。


 「え?」


 急いで駆け寄ると、先ほどの扉と同様、びくりともしなかった。


 「もう・・・。本当に何なのよココ・・・。」


 とため息交じりの声でつぶやいた時だ。


 『ほ~う、そんなに嫌か、ここが?それともこの世界がか?』


 「え!?」


 どこからか声が聞こえる。


 『ははははは。そんなに探す必要はないだろう?さっきも私に気付いて驚いてたじゃあないか。』

 

 驚く?まさか!?


 扉の横のはく製を見る。山羊か牛かわからないそのオブジェは、こちらを見てニヤリと笑いながらそのまま口を開いた。

 

 『ふふふふふふ。気づいたね。私の名前はリューギェル。人間からはギャベロンともいわれてるねぇ。ま、呼び名はご自由に。』


 「!?」


 何の事だか分らなかった。だが目の前で起こっていることは全て夢の世界の事だ。信じれないわけではない。


 リューギェルという名のはく製はそのまま、抑揚をつけた大きな声でボクに問いかけた。


 『レインよ、ここから出たいのだね?』


 「!!だしてくれるの?」


 『ああ、勿論。だけど、ただで出すわけにはいかない。私の問いに答えてもらおう。』


 「問い?さっきの扉の事?」


 『ああ、それとほとんどおんなじさ。物分かりが良くて助かるよ。それじゃあ問題だ。』


 そうリューギェルがいった途端、目の前の扉に文字が浮かび上ががった。

――――――――――――

 うすい水酸化ナトリウム水溶液10cm3にBTB溶液をいれ、そこにうすい塩酸を少しずつ加えていった。

塩酸を12cm3加えたところで水溶液の色が緑色になり、そのあともさらに塩酸を加えていった。これについてカッコに入る適切な語句または数字を答えよ



 塩酸を12cm3加えたときに水溶液中に存在するイオンは( )と( )である。


 同じ濃度の水酸化ナトリウム水溶液15cm3を中性にするには、実験で使った塩酸( )cm3を加えれば良い。

――――――――――――


・・・さっきと同じく中学生レベルの問題なのね。


 『さあ、答えるときはその鎌で扉を切り裂いて文字を書いてくれ。』


 「ってことはチャンスは・・・。」


 『ああ、一回だ。そこの机の引き出しに鉛筆と古紙がある。有効に活用してくれ。』


 「・・・もし間違えたら?」


 『さっきと同様、ここは私ごと吹っ飛んで更地になるよ。だから間違えないでくれよ。ははははは。』


 狂気じみた笑いとともに、リューギェルの口からはよだれが垂れている。気持ちが悪い。


 とにかく、今すぐにでも問題を解かないと・・・この悪臭に何時間も耐えられない・・・。


 引き出しを開け、ペンを取り出す・・。


 「ひゃ!?」


 引き出しからは数匹の虫が飛び出してきた。


 『はーっははははは。期待通りの反応をしてくれるねぇ。』

 

 「っ・・・。う、うるさい!!!」


 煽りやがって。ここから出られたら切り裂いてやるから。


 ・・・とにかく、かんがえよう。


 水酸化ナトリウムのイオン式はNa+と(OH-)だ。そしてH+とCl-が塩酸。つまり出来るのはH+と(OH-)で、H₂O、塩酸のほうが元の水酸化ナトリウムの量よりも多くなってるから・・・。残るのはナトリウムイオン(Na+)と塩化物イオン(Cl-)。


 よし、一問目は突破できた。次の問題にいこう。
















――――――――――――


 「日向!!こっちにパスだ!」


 「オーケー牧場!!!」


 デカに向かって勢いよくパスを出す。


 今は5限目体育の時間、合同体育で男女別でバスケを行っている。

 うちのクラスはデカをはじめ、運動神経がいい奴が多いのでまず負けることはほとんどない。


 「っ!!日向ッ!やっぱ返すぞ!!」


 敵が集中し、囲まれたデカは俺にボールを返してきた。


 前を向く。

 前方約2Mに敵二人、ゴール付近一人。デカを囲んでいた奴はすぐに周りをマークする。


 仕方がない、シュートしよう。ハーフラインよりもやや後ろだが大丈夫だ。


 なんてったって俺のシュートエリアはコートすべ(ry


 シュッ


 ボールが俺の腕から離れていく音


 ガン


 リングにボールがはじかれる音

 ・・・分かってましたよ。


 「ナイスだ日向!!」


 そう返したのはバスケ部の滝山たきやま。あだ名はタッキー。身長185cm、バスケの県選抜、昨年度のバレンタインチョコ取得数実に学年4位。いわゆる恵まれた人材。そしてリア充。


 タッキーはすぐにマークを外し、リングにはじかれたボールを奪ってそのままレイアップシュート。


 パスッ


 ネットにボールがこすれる音


 ブーーーーーー


 試合終了を伝えるブザーの音。いわゆるブザービートを彼は決めたのだ。


 「っしゃっオラ!!!」


 次々と囲まれるタッキー。隣のコートからの女子の歓声。コートの端、一人たたずむ俺。

 フッ、これが才能というやつですよ。滝山を中心に爆発してもらえないだろうか(恨みはない)。


 ん?『ブー』?『爆発』?


 ・・・ ・・・ ・・・


 「あ。」


 思い出した。あの後門を開けてあの狭いとこから抜けれると思っていたら予鈴という名の目覚まし時計によって現実に戻ってきてしまっていたのだ。


 ・・・今レインはどうしているだろうか?

 いや、それともレインなんて夢の中の偶像にすぎなかったんだろうか?


 「よお、何ポケーっと突っ立ってんだよ。」


 いつの間にか目の前には俺の爆発希望の相手が立っていた。


 「・・・タッキー。」


 「さっきはありがとよ、お前のシュートが俺への最高のパスになったぜ。おかげでブザービーターにもなれたしな。」


 褒められてるのか蔑んでいるのか・・・。

 いずれにしよ良い気はしない。要するにこういう事だろ?『引き立て役になってくれてありがと。』


 「・・・そりゃどーも。どうかしたのか?」


 「いや、別に。それが言いたかっただけだ。じゃ、鍵ヨロシク。」


 「は?」


 そういってタッキーはネームプレートのついた小さなカギを俺に投げつける。そしてさっさと行ってしまった。

 残っているのは俺と体育の教師のみ。


 「柊ーー。カギ任せたぞ――――――。」


 前言撤回。たった今一人になりました。

 てかいつの間に終わってたんだよ。男子にしても女子にしても早く帰りすぎだろ。挨拶くらいしていけ。


 「はーーーーー、マジかよ。」


 よくよく見渡してみるとボールは転がり、得点版は『33-4』のまま、おまけに使ってもないのに器具庫の電気はすべてついたままだ。なんでや!俺関係ないやろ!!


 「全く・・・。」


 そこで放置せずに帰らないのが俺の紳士的かっこよさ。ボールを拾い、得点版をしまって、器具庫の電気を切ろうとした、その時だ。


 「ん・・・?こんなところに額縁?」


 跳び箱と跳び箱の間に誇りまみれの額縁が挟まっていた。


 美術室でもないのにと思い、拾い上げ、ほこりを払ってみるとそこに描かれていたのは山羊と牛の中間のような頭を持った謎の生物だった。正面を向いてニタニタと笑っている。こっち見んな、気持ち悪い。


 「とりあえず美術室に返しておこう。」


 そう独り言をつぶやき、俺は額縁を持って体育館の鍵を閉め、美術室へと向かった。



―――――――――――――――


 「・・・これ、うちの学校のものじゃないわよ。」


 「はい?」


 「うちで借りてる作品にはね、全てどこかしらに白い張り紙で借りた日時と作品名、作者名が書いてあるはずなのよ。ホラ。」


 そういって美術の先生は俺に謎のツボに張られた紙を見せてくる。確かにそこには日時、作品名、作者名が書かれていた。

 

 「・・・じゃあ、この絵何ですか?」


 「さあね、でも額縁は結構高そうなの使ってるみたいだし、それだけもらってもいいかしら?」


 「絵はどうしろと?」


 「あげるわ。もしかしたら、ヤ〇オクとかに出したら高く売れるかもよ?」


 「・・・そうっすか。」


 中の絵だけを抜き取り、嬉しそうに額縁だけを持って先生は準備室へと入っていく。


 少ししわの入った。絵を右手に握って、俺は美術室を後ろにした。













―――――――――――――


 夜九時。出された課題を回答を見て速攻終わらせ、ベッドに入る。この寝る時間だけが俺の生きがいだ。


 「・・・・。」


 いつもなら快適な睡眠タイムに入るはずなんだが、机の上のあの絵がどうしても気になる。持って帰るんじゃなかった。


 結局親に見せてみたが『悪趣味ねぇ』とだけ言って携帯をいじりだした。俺もそう思う。


 しかし、何故か捨てられないのだ。不思議なものだ。


 俺は机に手を伸ばし、絵を見る。


 うん、何度見ても気持ち悪い。やっぱ明日にでも捨てよう。


 俺は机と逆方向を向いて羊ではなくお金を数えながら眠りについた。


 ・・・最近金欠なんですよ。




―――――――――――――


 「濃度が同じで15cm3の水酸化ナトリウムでしょ・・・。イオンをすべて中和させればいいから・・・18cm3塩酸を加えればいいのか。」


 答えが出た。すぐに扉へと向かい、鎌で文字を刻んでいく。


 「く・・・。ふぬぬ・・・。」


 か き に く い


 何で鎌なんかで文字を書かなきゃなんないのよ。全然傷がつけれないじゃない!!


 『困ってるようだねぇ。手伝ってやろうかい?』


 「手伝う?どういう事?」


 『その鎌を私の前に差し出して見なさい。』


 生理的に近づきたくないが、助けてくれるというのなら力を借りよう。

 流石に答えを妨害するようなアンフェアな事はしないだろうし。


 『ふふふふふふ。【武器変形ウェポンチェンジ】。』


 そうリューギェルが唱えると、鎌の鉄がドロドロに溶けていき、形を変えていった。そしてそれは持ち手である木の部分を残し、アイスピックのような形に変化した。


 『それならさっきよりはまだ使い物になるだろう?』


 「・・・ありがと。」


 それだけ言ってボクは再び扉の前に立ち、ガリガリという木の削れる音とともに答えを書いた。


 『答えは・・・・。ザ~ンネ~ン。』


 「え!?」


 『なんてね。正解だよ。』


 煽られてむかつき、ボクはアイスピックをリャーギェルの目の前にかざした。


 『おお、怖い怖い。【武器変形ウェポンチェンジ】。』


 目の前でリューギェルが再びそう唱えた。

 瞬く間にアイスピックは溶け、今度は…。


 「ナイフ・・・?」


 怖いと言ってた割にはもっと殺傷力のある武器に変えてきた。


 『この先ソッチのほうが使いやすいと思ってね。感謝してくれよ私に。』


 「・・・。無視しときます。」


 その時、扉が外側に倒れ、その向こうにはさっきと同じ美しい景色が見えた。

 

 「じゃ、ボクもう行くから。」


 『ああ、それじゃあ、また。』


 リューギェルに背を向け、ゆっくりとヒナタさんのほうへと向かった。












 


 

 


 

 


ドライブ嫌いだから自家用ジェットとかほしいな

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