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AIアリスの旅記録  作者: 龍翠
第四話
29/51

 始まりの街の広場で、一人の少女が呆然と立ち尽くしていた。ショートカットの黒髪に、魔法使いの初期装備である黒のローブ姿。フードは被っていないため、不安そうに瞳を揺らしながら周囲に視線を走らせる様子がよく分かる。背は低く、小学生、よくて高学年だろう。

 少女の焦燥感のにじむ様子は、どこからどう見ても迷子だった。親か兄弟と共にゲームを始めたのかもしれない。このゲームは、機械は高いが理不尽な値段というわけでもない。学生でも、アルバイトをして真面目にお金を貯めていれば十分に手を出せる額だ。親がゲーム好きなら、自分の子供に与えて一緒にプレイする、ということもあり得るだろう。


 少女を知っている者が探しに来れば解決なのだが、少なくとも近くにはいないようで、誰も声をかけようとはしない。助けるために声をかけようとする者も、いない。余計なことに首を突っ込めば、面倒事に巻き込まれる可能性がある。例えば、声をかけるところをたまたま見かけた親が通報したり、など。関わらないのが一番だ。

 少女もログアウトをすれば解決なのだが、未だその考えは思い浮かばないらしい。


「おにいちゃん、どこ……?」


 か細い声が小さく響く。さすがに泣くようなことはないようだが、それでも声は震えていた。


「おにい、ちゃん……」


 寂しげに呟きながら、少女は歩き始める。兄の姿を求めて、広い街に一歩を踏み出して。




 そして気づけば薄暗い裏路地にいた。

 幽霊とか、そういったものが出そうな雰囲気だ。まだゲーム内の時間は昼過ぎなのだが、日の光があまり届かないために薄暗い。幼い少女にとって十分に怖い場所だ。

 思わず瞳に涙をため始めたその少女の肩を、誰かが叩いた。


「ひっ!」


 短い悲鳴を上げて跳びすさる。慌てて振り返れば、少女と同じ黒いローブ姿の誰かがいた。フードを目深に被っているため、顔は分からない。それが余計に恐怖心を煽ってくる。


「あ、ごめんね。驚かせちゃった?」


 高く澄んだ声音だった。その声だけで安心してしまいそうになる。目の前の誰かがフードをとり、顔を見せてくれた。長い金髪の、まさに美少女だった。


「初めまして。私はアリス。こんなところでどうしたの? 道に迷っちゃったのなら、表の通りまで案内するよ」


 優しく、そう語りかけてくる。その声だけで安心感に満たされてしまい、

 少女は大きな声で泣き始めた。


   ・・・・・


「ど、どうしよう……」


 アリスは途方に暮れていた。目の前には泣き続ける女の子。着ているものからして冒険者だとは思うのだが、これほど幼い子供が冒険者をしていることが信じられない。確認しようにも、女の子は泣いてばかりで何も答えてはくれない。

 アリスは少し考えた後、孤児院で培った経験を活かすことにした、女の子と視線を合わせ、そっと抱きしめる。頭を撫でながら、できるだけ優しく、言う。


「大丈夫。何も怖くないよ。大丈夫」


 女の子はしばらく泣き続けていたが、やがてそれも小さくなり、嗚咽を漏らすだけになった。ほっと胸を撫で下ろして女の子を放す。女の子はアリスを上目遣いに見ながら、照れくさそうにはにかんでいた。正直に言おう。かわいい。

 女の子の頭を撫でると、女の子は気持ちよさそうに目を細めた。犬か猫みたいだ。

 そこまで考えて、アリスは我に返った。何をやっているんだ自分は。


「えっと……。名前は言える?」


 アリスが問いかけると、女の子は頷いて言った。


「ミカ……」

「ミカちゃんだね。かわいい名前だね。ここには一人で来たの?」

「ううん。お兄ちゃんと」


 どうやら兄と一緒に冒険者をしているらしい。保護者がいるならこの年もあり得るのかな、と思いながら、話を続ける。


「お兄ちゃんの名前は分かる?」

「えっと……。クール、だったかな……?」


 何故うろ覚えなのだろう。本当に兄弟なのだろうか。


「お兄ちゃんは、どんな人?」

「とっても優しい!」


 違う。そうじゃない。人柄の話じゃない。内心で苦笑しながら、そうなんだ、と相づちを打つ。


「どんな服を着てるかな? あと、髪型とか、背とか……」

「背は高いよ! 服は、よろいだった!」

「んー……」


 これだけ聞き出せただけ十分と思うべきだろうか。結局のところ名前しか分かっていないのだが、仕方がない。むしろ名前だけ分かっただけでも良かったと思うべきだろう。


「まずはギルドかな……。冒険者ならあそこに立ち寄るだろうし。ミカちゃん、ちょっと一緒に行こっか」

「お姉ちゃんと一緒に? どこに?」

「ギルドってところだよ。お兄ちゃんを探しに行こう」

「お姉ちゃん、一緒に探してくれるの?」


 ミカと名乗った少女は潤んだ瞳でそう聞いてくる。アリスは笑顔で頷いた。


「うん。もちろん」

「わあい! ありがとう、お姉ちゃん!」


 抱きついてくるミカを抱き留めて、優しく頭を撫でる。落ち着いてくれていることに安堵しつつ、早く見つけてあげないと、と心に誓った。


壁|w・)導入?部分なのでちょっと短め。

今回は迷子の保護者探しです。のんびりほのぼの。

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