21話 結ばれる夜
ベッドにそっと寝かせると、ソラは力なく横たわる。
はだけたシャツから白い肌がのぞく。
この身体が、知らない男にどうされたのか――考えたくもない。
梨夏のときとはまったく違う感情。
純粋に黒い独占欲が、俺の心を塗り潰していく。
ずっと見て見ぬふりをしてきたソラへの渇望が、理性の堤防を打ち破ろうとしていた。
「んん……、ケイ……」
ソラがうわ言のように俺の名前を呼んだ。
その甘い声に、抑え込んできた熱い衝動に突き動かされた。
「ソラ」
桜色の唇に引き寄せられる。
酒と微かに残るタバコの香り。知らない男の残り香だ。
それがさらに俺の嫉妬を煽り、行動を加速させる。
「……ん」
やがて開いたソラの瞳。潤んだグレーの瞳に、独占欲の塊のような俺が映る。
「お前さ、本当のところ……、誰が好きなんだよ」
ソラを折れるほど強く抱きしめた。
「俺を好きだって言ったくせに――」
「……ケイ?」
何度もキスを繰り返すと、ソラは身体を震わせ、俺の背中に爪を立てるように腕を回した。
「やだな……まだ、夢をみてるみたいだ。ケイが、こんなに熱いキスをしてくれるなんてさ」
俺のキスをすべて受け入れてくれる。そんな、ソラがたまらなく愛おしい。
「ソラ――」
唇が離れても、すぐに熱を求めてせがむように引き寄せられた。
「抱いてもいいかな」
長いキスで意識の戻ったソラが、ふわりと笑う。
「いやだな、このタイミングで聞かないでよ。ずっと待ってたのに」
ソラのシャツを床の上に投げ捨てる。
月光に照らされた彼の身体は、芸術品のように美しく、そしてひどく無防備だった。
「どうすればいいか、本当はわからないんだ」
「ケイに壊されるなら、本望なんだ」
ソラは待ち望んでいたものを求めるように、真っ直ぐに俺を見つめていた。
「怖い?」
「そうだな。でも、ソラを失う方が怖い」
正直な気持ちを打ち明けると、ソラは切なそうに、けれど愛おしそうに目を細めて俺の頬を撫でた。
「ケイのそういうところに、惹かれたんだ」
トクン、トクンと早鐘を打つ鼓動。それは俺の心臓の音と共鳴し、重なり合っていく。
やがて、肌と肌が触れ合うたびに、火花が散るような熱が全身を駆け巡った。
「好きだよ、ケイ」
ずっと欲しがっていた夜が、ようやく訪れた。指先が絡み、吐息が混じり、互いの孤独が熱に溶けて埋まっていく。
「はじめて会ったときから、ずっと、ケイのことが――」
その言葉の切実さが、俺の心を締め付けた。
こんなにも純粋で、狂おしいほどの愛情を、俺は遠ざけようとしてきたのか。
「好きだ……ソラ」
俺は祈るように言葉にした。
ソラの瞳には今、この世界で俺しか映っていない。
「あ、ん……っ、ケイ……っ!」
俺は彼の唇に再び口づけをした。
今度はもっと深く、もっと激しく。
俺のすべてをソラに捧げ、彼の孤独も、過去も、その熱い身体も、丸ごと俺の中に閉じ込めるように。
朝が来ればすべてが消えてしまうのではないか、そう思えるほど、それはどこまでも甘い夜だった。




