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幕末異聞 おらぞの藤兵衛 ~異界帰りの侍、海から歴史を変える~  作者: 曽我部穂岐
第二章 舫と白波

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あとがき

 ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。


 本作『おらぞの藤兵衛』は、異世界オラゾより帰還した一人の下士・朝倉藤兵衛が、幕末土佐という激流の中で何を見つめ、何を選び、何を遺せるのか、という物語でした。


 吉田東洋、山内容堂、坂本竜馬、武市半平太、後藤象二郎、板垣退助ら、史実に名を残した人々。彼らの光と影を借りながら、もし少し違う出会いがあったなら、何を選び、何を守り、何を失ったのかを、「もう一つの土佐」「もう一つの幕末」として描きました。


 藤兵衛が持ち帰ったものは、万能の知識でも、歴史を思い通りに変える力でもありません。異なる世界で見た理、交わした言葉、失ったもの、託されたもの。それらを土佐の人々へ少しずつ手渡していくことが、彼の戦いでした。


 船を造る者。

 言葉を繋ぐ者。

 金と人の流れを読む者。

 若い熱を、刃ではなく道へ向けようとする者。

 そして、かつて失った者を、今度こそ守ろうとした者。


 歴史は、一人の英雄だけで動くものではありません。けれど、一つの出会いが、誰かに手を伸ばさせることはある。藤兵衛はそのための白波であり、もやいであり、時に火種でもありました。


 そして同時に、本作は帰還者・藤兵衛の視点を通して描いた、回帰者・山内容堂の歴史改変の物語でもあります。


 未来を知る容堂は、一度目の人生で失ったものを取り戻すために、常に正しい手を打ち続けます。


 容堂が救おうとしたのは国ではなく、ただ一人の師でした。


 けれど、それでも東洋暗殺を止めることはできませんでした。

 むしろ、正しい手を打ち続けたからこそ、その死を早めてしまったとも言えます。


 藤兵衛が「未来を変えようとする者」なら、容堂は「過去を変えようとする者」でした。

 けれど、未来を知っていても、過去を悔いていても、救えないものはある。


 この物語の底に置いたのは、「救えなかったもの」です。


 失われる命がある。

 届かない願いがある。

 変えられない日がある。


 それでも、渡るものはある。


 言葉が渡る。

 理が渡る。

 船が渡る。

 人の熱が、次の誰かへ渡る。


 藤兵衛が本当に遺したかったものは、自分の名ではなく、その渡っていく何かだったのかもしれません。


 そして、この物語は『最後の楽園 ORAZO』の外伝でもあります。オラゾで得たものが幕末土佐へ渡り、幕末土佐で受け止めきれなかったものが、またオラゾへ還っていく。その往復を書くことができたなら、この外伝にも意味があったのだと思います。


 長い長い物語にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


 藤兵衛たちの白波が、読んでくださった皆さまの中で、少しでも先へ進んでくれたなら幸いです。


 物語を語り直すその日まで。



最後になりましたが、作品全体の感想と評価をいただけましたら、これ以上ない幸いです。

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