第十九章 ⑥九頭龍神への願い
港区白金。
レンジの高級マンション。
「ゔああああっ……!」
いつもの悪夢を見て飛び起きた。
汗だくだ。
両手で頭を掻きむしる。
十五年前。
仕事で訪れた宇和島。
『みかん畑』で仕出かした蛮行。
あの日の影像が夢に映し出された。
それは。
あまりにも生々しかった。
……宇和島の幼女。
まるで天使のように愛らしい子供だった。
そしてその天使を。
俺は欲望のままに穢した。
天使は『ボロ人形』に変わり果てた。
雨に濡れて。
泥と血液に塗れて……。
ゴミ置き場に捨てられたボロ人形のようだった……。
今さらながら慚愧する。
あの『幼女』は息災だろうか?
今は二十歳くらいだろう。
恐らく今も。
暗澹たる日々を過ごしているに違いない。
もしかすると。
精神が崩壊してしまったかも知れない……。
ご家族の憂いや嘆きを看取する。
通りすがりの男に。
幼い愛娘を穢された。
その心痛、いかばかりだっただろうか。
きっと今も。
癒えるはずのない惨痛に。
苦しみ続けているはずだ。
醜悪極まる罪過を思い起こす。
幼女と少女をレイプした。
己の欲望のままに穢した。
あまりの悍ましさに身の毛がよだつ。
どれほど贖罪しても許されない。
どれほど後悔しても時は戻らない。
過去の自分を呪い怨んだ。
嗚呼、胸が苦しい。
吐き気がする。
首筋に負った火傷の古傷。
ズクズク、痛む。
今、痛いほど分かる。
漆黒の九頭龍神の言う通りだ。
……そうだ。
俺は『鬼畜』だ。
傲慢な破廉恥だ。
決して神仏に赦しを乞うてはならない。
最低最悪男だ!
九頭龍神よ……。
どうか、頼む。
俺を、殺してくれっ…………!




