表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/142

第五章 ③否の女社長・コウメ(餓鬼)

 某テレビ局。


 サロンオーナー・コウメが情報番組に出演している。

 番組の新企画で人気化粧品(コスメ)の最新情報を発信する。

 エステのCM、雑誌取材、美容法の動画配信etc.……。

 今や、コウメの知名度は抜群だ。

 行く先々でもてはやされている。

 共演者やスタッフがコウメを褒めちぎる。

 視聴者から握手やサインを求められる。


 ……相変わらずお美しい! 

 美肌の秘訣は? 

 ダイエット法は?


 そんな浮ついた日常。

 いつしか無論(アブヴィ)当然(アスリィ)になっていた。

 そうして良からぬ方向に変貌を遂げてゆく。

 本性が(あら)わになる。


 コウメは変わった。

 女王気取りの独善的経営者になっていた。


 サロンスタッフたちは陰口を叩く。

 ひそひそ、陰で笑う。


 ……高慢(こうまん)ちきの高飛車(たかびしゃ)女。

 上から目線の自己チュー・オバサン。 

 厚化粧ババア! 

 全身整形の改造人間! 

 (そう)(しん)エステにいくら掛けてんの?

 食事は高級シャンパンと美容サプリ!

 デザートは若いホストよね?

 ムカつく! 

 嫌い、大嫌い! 


 ……とはいえども。

 スタッフにとって。

 女社長のご機嫌取りは()()()()の一環だ。

 なぜなら。

 社長に気に入られれば、給料は格段に上がる。

 居心地のいい立ち位置(ポジション)が保証される。

 幹部に抜擢(ばってき)されれば特別待遇を受けられる。


 今や全国展開となった各サロンを仕切るのは。

 女社長の取り巻きメンバーだ。 

 幹部スタッフの過剰称賛は罪深いほど見事だ。

 愛想笑いを貼り付けてお世辞を駆使(くし)する。

 コウメの強すぎる承認欲求を満たす話術(わじゅつ)が備わっている。

 だから皆、手本にする。

 真似(まね)して()(へつら)う。


 日々に(いそし)しむのは、ポジション獲得競争だ。

 いつの間にか。

 コウメに取り入ることが最優先事項になっていた。


 打算にまみれる。

 いがみ合う。

 スタッフ同士は足を引っ張り合う。

 (ひず)みや亀裂が深くなる。


 顧客対応は粗忽(そこつ)になって二の次だ。

 ぞんざいに扱われた顧客は不快感を募らせた。


 コウメの金銭感覚は完全崩壊していた。

 過剰に美を追求する。整形をくり返す。

 ブランド品、宝石を買い漁る。

 あれもこれも欲しくて欲しくて(たま)らない。

 欲心が抑えられない。我慢ができない。

 地獄の餓鬼(がき)の如く。

 満たされる感覚がなくなっていた。


 金が足りない。

 収益をひたすら優先する方針にシフトチェンジを決めた。

 価格改定を決行する。

 サロンの入会金、施術料金を派手に引き上げた。

 美容サプリ、化粧品価格も便乗値上げした。

 行き過ぎた値上げによって客離れが止まらない。

 大幅な収益減少、リストラが始まった。


 経営には(ほころ)びが生じていた。

 給与の振り込みが遅れがちになる。

 スタッフは悲鳴を上げる。

 幹部との待遇格差に不満が噴出する。

 派閥(はばつ)争いから軋轢(あつれき)が生じた。


 険悪な人間関係はスペシャリストの集団離職を招いた。

 技術者が不足して苦情が相次ぐ。

 SNSに悪評が渦巻く。

 ネットレビューは惨憺(さんたん)たる有様だ。


 しかしコウメは現実逃避した。

 酷評(こくひょう)に目を(そむ)ける。

 (ぎょ)()歓楽(よく)(ふけ)る。

 セレブとハイスペック限定パーティを頻繁に開く。

 ホストクラブで豪遊する。

 高級シャンパンを飲み干す。

 ()しのホストにひたすら貢ぐ。

 ブランド品を買い漁る。

 自慢気にインスタ投稿する。

 徹底的に容姿を磨く。

 整形を重ねた顔。

 もはや原型を留めていない。


 羨望(せんぼう)(まと)になるほど快感が増す。

 不埒(ふらち)慣習(かんしゅう)を病的に繰り返す。

 砂漠のように枯渇(こかつ)した肉体。

 欲望に(まみ)れて(すさ)んでいく。


 傲慢女王は改悛(かいしゅん)できない。

 不協和音が響く。

 リズムが乱れる。

 龍使いの言葉を(かろ)んじる。


 そうして遂に。

 ……忘れた。


 所沢市・緑町。

 コウメは西武新宿線・新所沢駅に下車した。

 記憶を辿って西口改札を通り抜ける。

 きょろきょろ、

 住宅地を迷いながら歩き回る。

 『赤煉瓦ベル』に辿り着いた。

 そうして待ち伏せる。

 龍使いとの『再会』を(こころ)みた。


 ……切望する欲念が抑え切れない! 

 だから龍使いに頼み込む! 

 この私の願いを叶えてちょうだい!


 ヒューン………………、

 最大値だったリズムが急落した。

 『()』の采配が『(いな)』に転じた。 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ