表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/81

第三章 ②トールと新たな家族

 岐阜県・中津川市。

 南アルプスの最南端。

 白竜伝説残る裏木曽の滝に『黄金龍王トール』は棲んでいる。

 トールは真珠色龍神ノアの父親(パパ)である。

 

 トールは感懐(かんかい)(いだ)く。

 凛花を龍使いに任命するにあたり。

 ()契約書第六条『不接触・無欲』を追記した。

 二度と凛花の心身がむやみに傷つけられてはならない!

 龍神界の新たな家族を守るため、厳に定めた。


 龍使い認定に際して。

 冷厳なる(おきて)が存在する。

 まずは。

 天上界の特別な御方から指名されなければならない。

 次に。

 『自利(じり)』と『()()』の選択肢を迫る。

 そして即座に。

 『他利』を選択せねばならない。

 つまり。

 私欲に走らなかった者のみ、龍使いに認定される。


 龍使いに認定された者には。

 龍神界から『瑞光(ずいこう)オーラ』が与えられる。

 その瞬間。

 菩薩の如くに全身が光り輝く。

 さらには。

 天上界から『フィールリズム』が与えられる。

 このリズムは。

 慈しみと真心が最大値となった龍使いにのみ宿る。 


 凛花は数百年ぶりに現出した正当な龍使いである。

 瑞光オーラに包まれた姿は(まばゆ)く美しかった。

 優美高砂(ゆうびたかさご)なるフィールリズムが即座に宿っていた。

 それは嘘偽りのない『他利の心』の持ち主であることを証明した。

 

 グラビリズムやモアレリズムの所有者であっても。

 フィールリズム状態の龍使いに(かな)うことはない。

 なぜなら。

 『是契約』の締結(ていけつ)に。

 龍使いのフィールリズムが不可欠だからだ。


 フィールリズムとは。

 ふたつのリズムを超越した特別なリズムといえる。


 遥か昔から今までに。

 多くの龍使い候補と接触してきた。

 しかし『他利』を選択する者は皆無だった。

 本音を偽って。

 「他利を選択する」と宣言した噓つき者は居た。

 だがしかし、所詮は偽物だ。


 フェイクに『瑞光オーラ』は与えない。

 フェイクに『フィールリズム』は宿らない。


 ()契約者は。

 龍神とリズムを調和持続させることにより。

 才気(さいき)煥発(かんぱつ)の極みとなる。

 肉体的修復力にも裏打ちされて。

 社会的成功の『(ほまれ)』を手にする。


 あらゆる文化や文明の開拓者は。

 心の命ずるところに従って天質を涵養(かんよう)する。

 結実した果実は大衆に恵みをもたらす。

 『与える行動』の継続こそ。

 龍神界からの恩沢に浴することに繋がっている。


 その一方に。

 契約不履(ふり)(こう)者は。

 最大値だったリズムが停止消滅する。

 不協和音を発することさえ不可能となる。

 今まで優遇されていた才覚や体力は急激に衰える。

 そして(あわ)れな顛末(てんまつ)を迎える。


 『エラー人間』と判別された者は。

 呂色九頭龍神から(いな)の制裁を受ける。

 契約違反のツケ。

 それは甚大(じんだい)であることを思い知ることになる。

 そしてわずかな余生は。

 空蝉(うつせみ)インコとして終えるのだ。


 思いやりを失って。

 欲楽に支配されて。

 そうして『鬼畜』と成り果てた。

 意地汚い心、姑息な心が招いた結果である。


 実らせていた秋の稲穂を消失させる。

 その火元は欲望と破壊である。

 天界より選ばれし者だったはずの是の契約者の転落。

 それは一層に罪深い。


 神仏をも(あご)で使う傲慢(ごうまん)さと搾取(さくしゅ)

 他者への(さげす)み。

 『過信』と『妄信』が転落への道筋である。

 迎える最期は自業自得(ブーメラン)(ことわり)(のっと)る。

 多大な代償を支払うより他に(すべ)はない。


 トールはしみじみ感じ入る。

 凛花は只者(ただもの)ではない。

 なぜなら。

 我が娘であるノアは簡単に心を許す性格ではない。

 警戒心が強いうえ、激しい人見知りだ。

 しかし。

 凛花とは瞬時に心を通わせた。

 そしてまるで。

 姉妹のように同居生活を楽しんでいる。


 それだけではない。

 ノアの恋人・コン太とも親しいとは驚愕(きょうがく)した。

 そもそもコン太は。

 人間という『打算的生物』を好ましく思っていない。

 むしろ激しく嫌悪(けんお)している。

 そんな気難しいコン太をあっさり懐柔した。

 凛花の潜在的資質(ポテンシャル)は計り知れないものがある。

 

 黄金龍王トールは。

 心根の美しい龍使いの現出を(たっと)んでいた。

 凛花を龍神界の家族として。

 娘ノアの親友として。妹として。

 八百万(やおよろず)の神々の仲間として。

 心の奥底から。

 歓迎しているのだった……。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ