パラレルワールド 4
G《ところで、あっちの俺はこっちで何言ってたんだ?》
B《JとKに対して、部外者は此処から出て行けと騒いだらしい》
G《 ・・・ 》
B《そこにAが来たんで、話をややこしくしたくないKがあっちのお前をラウンジに連れて行き、双方のチームがどの様に異なるか確認したそうだ》
G《俺もそんなとこだ。ただし、相手はあっちのCuだったけどな》
B《すると今度はCとRがラウンジに来たから、Kは観念してお前を無理やり早退させたんだ。ざっくり話すとこんなとこだな》
G《って事は、JKの話には至らなかったんだな?》
B《そうだ。そんなにJKの正体を知りたいのか?それなら、もう一度あっちの世界に行くしかなかろう》
F《 それは無理だろう 》
B《 どうしてだ? 》
F《例えば・・・Gは10年前の今日の朝、何食ったか言えるよな?》
G《ああ、全粒粉で作ったパンとトリプルベーコンエッグ、野菜ジュースだ》
B《よく覚えているな、お前。俺達は下手すると3日前に何食ったかも忘れてしまう》
F《簡単な事だ。毎朝同じもん食ってるからだよ》
B《 ・・・ 》
G《朝飯と再度あっちに行けない事と、何の関係があるんだ?》
F《まず、何故俺達や他のメンバでなく、Gん家にパラレルワールドを繋ぐトンネルが出現したかという事だが、理由は2つあると思う》
B《 ほう 》
F《まず、Gのクソ真面目で几帳面な性格故、こっちのGとあっちのGの生態的な差は殆どないはずだ》
G《すげぇ回りくどい説明だな。簡潔にできないのか?》
F《まぁ、聞け。だから、あるタイミングでこっちのGとあっちのGが身体的数値だけでなく、胃腸の内容物迄同じになっている確率は、俺達より遥かに高い》
B《毎日同じもん食ってりゃ確かにそうなるだろうよ。俺達は食事の内容をその時の気分で変えるからな。胃腸の内容物が同じになるはずがない》
F《次に、毎朝±2秒の誤差で起床し、毎朝同じもん作って食ってんだから、動線も同じになるだろ?つまり、胃腸の内容物、皮膚常在菌の種類や数まで等しい完全な同一人物であるこっちのGとあっちのGが、同じ時間に同じ動線を辿った結果、トンネルが出現したんじゃないのか?これなら2人のGが入れ替わっても、質量が保存されるから2つの世界双方に問題が生じないはずだ》
G《って事は、トンネルが出現したのは、俺とあっちのGが完全な同一人物になって、同じ場所にいたからだという事か?》
F《 そんなとこだろ 》
B《それなら、どうして帰ってこれたんだ?二度目の入れ替わりは、最初の入れ替わりから2時間近く経過していたはずだ》
F《2人のGは朝飯食ってから戻って来るまで、トイレに行っていないし何かを口にしていないだろ?だから、トンネルを出現させる諸条件が維持されていたんだろうよ。こっちのKとあっちのCuが機転を利かせて2人を無理やり早退させた事が幸いだったんだ。昼飯を食っていたら、二度と戻ってこれなかっただろうよ》
G《しかし、それなら確率は非常に低いけど、再度トンネルが出現する可能性が全くない訳じゃ・・・》
F《ああ、可能性が全く無い訳じゃない。だけど、そのトンネルはJKがチーム代表を務める桜町でなく、別のパラレルワールドへ繋がるトンネルである可能性が高いんじゃないのか?例えば、Aの完全支配下にあるディストピアとか、あるいは全ての人間が暴力や貧困から解放された自由な社会、真のユートピアかもしれない。パラレルワールドは多数あるかもしれないんだからさ》
B《なるほど、一理あるな》
F《それに、JKの正体を知り、何故JK率いる桜町に拒否権を有する理事で構成された理事会がないのか、それが分かったとこで何になる?》
G《 どういう意味だ? 》
F《謎が詳らかになったところで、俺達の桜町を変える力にはならない》
B《メンバの多くは理事会に疑念を抱いている。俺達も、桜町温暖化や貧困の拡大に関してはCやRですらAの拒否権乱発に辟易している。俺達理事ですら、何も変える事ができない無力感に苛まれているからな・・・》
F《75年前は必要悪と妥協した理事会と拒否権だけど、今となっては史上最大の大失態になってしまったからな》
G《そうだな・・・JKの正体が分かったところで、現実には無力だという事か・・・》
B《しかし、俺達は皆騎士の末裔だ。座して死を待つ事を拒否する。大義のために最後まで闘う、これが俺達の務めのはずだ》
F《そうだ。Aが如何なる妨害をしようとも、桜町温暖化と貧困の拡大を阻止しなければならない!》
G《俺達が知っている世界は桜町だけだ。他の世界の出来事に囚われる事なく、現実の桜町を何とかしない事には、いずれ住む場所すら失ってしまう・・・いい教訓になったな》