最終話 ワニ生に幕を下ろそう
飛竜との因縁に決着が付き、村人たちは平穏を取り戻した。
そして俺を間違いなく沼神と信じて、その巫女であるミーシャと共に祀り上げた。
飛竜に焼かれた村は復興に時間がかかったけど、なんだかんだ村が滅びることはなく復興した。
そしてそれから何十年も経ち、俺とミーシャの関係も進展した。
長く夫婦として暮らし、形だけだったのが本当の家族になっていた。
流石にモノのサイズの関係で、熱い夜を過ごすことはできなかった。
お陰で子供ができることはなかった(そもそも種族が違うのに子供ができるのか?)。
それでも俺たちは幸せだった。
掠れ忘れていった記憶から考えても、想像できただろうか。
この暮らしを。
神として祀られ、美しい妻をもらい、穏やかに村のそばの沼で暮らす人生(ワニ生?)を。
長い長い時間が過ぎていった。
その中では町から憲兵団が来たり、魔王の配下と勘違いされたりしたが、なかなか面白い生だったと思う。
そして一つ発見があった。
どうやら俺はミーシャより長生きできないようだ。
優しくも強い我が妻を置いて先立つのは心苦しく感じる。
だけれど、彼女ならこの先もきっとやっていける。
そんなほぼ根拠のない自信がわく。
老化でもう洞窟からほとんど出ることがなくなった俺。
そんな俺のもとに餌を持ってきてくれるミーシャ。
もう100年近く経ったと言うのに、初めて出会った時のまま美しく可愛らしい。
「眠いの? クロ」
あぁ、とても眠いよミーシャ。
でもまだ眠るには早い気がするんだ。
せめて村が滅びるそのときまで起きていたいんだ。
だけれど、体は素直だ。
瞼も体も鉛のように重い。
寿命が来たんだなぁと思うよ。
ペロリとミーシャの頬を舐める。
心地よくそれを受け入れるミーシャ。
それにまた愛おしさを感じる。
「逝ってしまうのね」
あぁ、そうだな。
不死身でなかったことを悔しく思うよ。
だけれど、俺のことをミーシャは忘れないでくれるだろう?
それさえあれば俺は安心して逝けるよ。
ミーシャ、来世でもし会うときは……同じくらい長生きしたいな。
魔法歴1942年、10月6日。
午後3時30分、沼神は主の元へと還った。
その伝説は長く永く語られ、村がやがて町になり、都市となっても忘れられることなく語られた。
ワニに転生した男子高校生、彼の物語は幕を閉じる。
その長い人生の中で感じたであろう出来事を追憶できるかどうかは、もしかしたら貴方にかかっているかもしれません。
ですが、いまはそれは関係のないこと。
青年だった老いたワニの魂は、輪廻の輪に加わり……それから数百年。
エルフの村に一人の少年が生まれました。
少年の名前はクロ。
クロは……エルフではなく半分沼神でしたとさ。
「またワニなのかよ!?」
ここまでご愛読ありがとうございました!
短く雑な終わりになってしまいましたが、元々これくらいの短さで予定してましたので申し訳ありません。
このまま仮に人気が出るようでしたら、語らなかった憲兵団や魔王、勇者のお話を二部として公開する予定です。
逆に人気が出なかったらお蔵入りします。
しかしここまでこれたのは皆さんのお陰です!
評価ポイントが100を越えたのは私のなろう歴で初めての事で、大きく勇気つけられました。
最初は沼神になったところで切る予定でしたが、評価のお陰で少しでも伸ばすことができました!
本当に皆さんのお陰です!
ありがとうございました!
もしまた縁があったらしじるの作品をよろしくお願いします!
それではまた何かの作品で!
また会いましょう!!