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真・摂政戦記 0026話 条件 

 1941年12月下旬 『日本 東京』


 ジョセフ・グルー駐日アメリカ大使から日本政府に対し講和の申し込みが為された。

 そのため日本政府では安堵の空気が流れている。

 大国アメリカとの戦争で、どのような結果になるか最初は不透明だっただけに、拍子抜けした感すらある。

 まさか年内にアメリカから講和を言って来るとは思いもよらぬ展開だった。


 これも全ては閑院宮摂政がウラン爆弾(原子爆弾)を始めとする対米戦の準備を早くから行っていた成果であるとして、摂政を高く評価する声は政府内にも軍部内にも大きい。


 ただし近衛首相は閑院宮摂政に疑いの目を向けており、その胸中は複雑であった。


 アメリカが講和の条件として提示して来た項目は大別して四つからなる。 


1.賠償金の支払い。

2.フィリピンの割譲。

3.ハワイ諸島を始めとする太平洋上のアメリカ領の島々の割譲。

4.日本軍の速やかなアメリカ本土からの撤退。


 この講和条件について話し合うため大本営政府連絡会議が行われた。


「ドルはもはや紙屑です。賠償金はドルを基準ではなく円を基準に貰うべきでしょう」

 この大本営政府連絡会議では、いつもは影の薄い大蔵大臣が、率先してそう発言する。


「幾らぐらい要求するべきかな?」

 近衛首相が皆の顔を見回して尋ねた。


「先例に倣うならば日清戦争の時は日本が費やした戦費の額に約三割の増しの額を賠償金として支払わせています。それを今回に当て嵌めますと250億円に相当するかと」

 大蔵大臣がそう発言する。


 史実における1941年の日本の軍事予算は約150億円である。

 しかし今回の歴史においては閑見商会が閑院宮摂政の指示で多額の費用を独自に負担し桜華部隊の戦費に充当していた。

 既に、その額は大蔵大臣にも伝えられている。

 それを考慮しての250億円という額であった。


 賠償金の金額に対しては、他からは然したる意見は出てこなかった。

 既にアメリカの保有していた大量の金塊、銀塊を日本が奪取していたという事もあり、それなりの額を取れれば良いという考えが大方の者の考えだったからである。


 割譲される領土については議論百出となった。


「フィリピン、ハワイは当たり前、西海岸一帯、特に油田のあるカリフォルニアは貰わなくては」

海軍大臣がそう話す。


「それだけは足りん。モンタナ、アイダホ、ネバダ、ユタ、アリゾナも貰わなくては」

 外務大臣が更に要求を増す。  


「ちょっと欲張り過ぎではないか。そこまで軍を派遣するのは骨だろう」

 陸軍大臣は懐疑的だ。


「手に余るようならアメリカに買い戻させればいい。メキシコに売る手もある。まずは土地を確保するべきだ」

 外務大臣はそう言って要求を増すべきだと言う姿勢を見せた。


「条件を厳しくすればアメリカは講和を蹴り窮鼠と化すかもしれない。西海岸くらいにとどめておくべきでは」

 大蔵大臣は消極的だ。


「殿下はどうお考えでしょう?」

 近衛首相が最も重要な人物にその考えを尋ねた。


「まだ南方が片付いておらん。マレーと蘭印は日本に不可欠だ。それを押さえずしてアメリカに深入りは危険だ。

ここはアメリカ本土に領土を獲得するよりも、まずは騒乱の種を撒いておきたい」


「と、申されますと?」

 陸軍大臣が真意を聞くべく問い掛ける。


「それは……」

 閑院宮摂政が以前より考えていた案を披露した。


 それを聞いていた皆の顔には話しが進むにつれ驚きの色が見て取れた。

 だが、反対する者もいない。

 元々アメリカをここまで追い詰めたのは摂政殿下直属の戦力とそさの作戦なのだ。このままお任せしようという考えがこの場では支配的だった。

 いや、近衛首相だけは何か言いたそうにしていたが、それでも反対する事は無かった。


 最終的に閑院宮摂政の案を全員が了承した。

 そうして決まった日本からの講和条件は次の通りである。


1.賠償金250億円。

2.フィリピンを日本の保護化におき数年後に独立させる。

3.ハワイ諸島を日本の保護化におき数年後にハワイ王国を再興する。

4.太平洋のアメリカ領となっている島々をハワイの帰属とする。

5.アリゾナ州、ニューメキシコ州、テキサス州を現地メキシコ系市民に譲渡、独立国とする。

6.ルイジアナ州、ミシシッピー州、アラバマ州を現地黒人系市民に譲渡、独立国とする。

7.ワシントン州、モンタナ州、ワイオミング州、ノースダコタ州、サウスダコタ州、オクラホマ州をネイティブインディアンに譲渡、それぞれの州を独立国とする。

8.アメリカ軍の軍備制限。

ハワイとフィリピンにいるアメリカ軍は全装備を破壊する事なく日本に引き渡し本国に帰還する。

今後、アメリカ海軍で駆逐艦以外の巡洋艦、戦艦、空母、潜水艦の保有は認めない。

軍の総兵力は20万人まで。

9.パナマ運河を国際連盟の管理とする。

10.これらの条件が履行され次第、日本軍は速やかにアメリカ本土から撤退する。


 この講和案はジョセフ・グルー駐日アメリカ大使に伝えられ、彼から本国の国務省経由で臨時政府に伝えられた。


【to be continued】

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