第一章:さあ、青春に汗を捧げた皆様へ!!
「ロザリアさん、まさか教職員のあの頑固な皆様を説得して、こんな無茶なイベントを認めさせてしまうなんて、思ってもみませんでしたわ」
体育館の中で、若い教師――清水先生は、企画書をめくりながら複雑な表情を浮かべていた。簡潔ながらも詳細な書式は、目の前の小柄な少女が書いたものというより、抜け目ないビジネスコンサルタントの手によるもののようだった。
「企画は資本主義の魔法ですのよ。アイドルをキラキラと輝かせるための、とっても素敵な魔法ですわ」
少女の声は甘ったるいキャンディのようだが、猫のような狡猾さが透けて見えた。
「それで、どうやってあの犬猿の仲の空手部とテコンドー部の皆様を協力させたのかしら?」
先生は参加団体の署名に目を落とした。校内でも不仲で有名なこの二つの部活を協力させるのは、至難の業のはずだ。
「彼らには素敵な因縁がありますもの。Schau mal!([ご覧なさいな])、コンサートとお伝えしましたけれど、あたくしが本当に開催いたしますのは『無差別格闘大会』ですの」
マリーは鼻を鳴らし、自慢の胸を張った。申し訳なさそうな様子は微塵もなく、むしろ誇らしげでさえある。彼女は悪戯っぽくウィンクをして、当然だと言わんばかりの表情を見せた。
「あ……あなた、どうしてそんなこと思いつきましたの?」マリーの次から次へと飛び出す奇想天外なアイデアに、先生は絶句するしかなかった。
マリーはまばたきをし、首をかしげてからニヤリと笑った。
「もちろん、漫画からですわ。熱血漫画というものは、殴り合えば大抵解決するのでしょう?」こともなげに言う彼女に、先生は頭を抱えた。
二次元の論理を現実世界に臆面もなく持ち込めるのは、マリー・ロザリアくらいのものだろう。
「ちょっと待って、優勝者の賞品が……『三ヶ月の交際権』!? ロザリアさん、あなた、なんて大胆なことを……!」再び進行表に目をやった先生は、悲鳴を上げそうになった。これはもう学園行事の枠を超え、火遊びに近い。
「あたくしが入学してからいただいた告白、もう百回を超えてしまいましたの。そろそろ、美しくケリをつけるべきだと思いませんこと?」マリーは無造作に毛先を弄んだ。その表情は初恋に戸惑う少女を演じているようでもあったが、口角は徐々に吊り上がっていく。
スマホの申し込みフォームで更新され続ける人数を見て、先生は眩暈を感じた。体育館の外では生徒たちが長蛇の列を作っていた
。確かに『無差別格闘大会』に参加しに来た者もいるが、大会に現れる猛者たちを想像して、大半は観客に回る道を選んでいた。
「申し込み人数が予想以上だわ……本当にこんな方法で彼氏を選ぶつもり? 性格の悪い人が選ばれたらどうするの!」先生の語気には不安が混じっていた。
マリーはただ微笑み、更衣室へと向かいながら、リングに向けて深い意味を込めた笑みを投げかけた。
格闘大会が正式に幕を開けると、放送部の実況と共に会場の熱気は最高潮に達した。多くの観客はアイドルのライブ目当てだったが、漫画のようなイベントを目の当たりにするのもまた一興だった。
空手部の先輩が、伝統的な道着を身に纏い、厳粛な面持ちで舞台に上がる。
相手がソフト剣を振り下ろした瞬間、彼女の目は鋭く光り、避けることなくプラスチック剣を掌中に収めた! そして、そのまま完璧な角度でカメラを見据える。
「女子空手道部、部員募集中! 入部歓迎!」
――あの日、廃部の危機に直面していた空手部に、少女は眩いばかりの舞台を用意したのだ。
続いて登場したのは男子水泳部。「午時だ、ウォーターガン・ボーイの登場だ」の実況と共に、高壓水鉄砲を装備した彼らが暴れ回る。
――あの日、彼女が交わした約束が、彼らに自由な舞台を授けていた。
もちろん、真剣に優勝を狙う者もいた。赤い革ジャンに銀色のマスクの男――生徒会長の彼は、卓越した技術で相手を制圧した。
――少女は彼の内に秘めた「武魂」を聞き届け、宿願の舞台を用意したのだ。
「黒騎士、またもや一勝! 完全なる瞬殺です!」
試合が進むにつれ、戦局は明白になっていった。
小柄な選手が、黒いプロテクターに身を包み、面頬で素顔を隠して登場した。手にする武器は、巨大な Zweihänder([ツヴァイハンダー/両手剣])。
その身のこなしは軽やかで、剣術は精緻、体力は底知れない。
優勝を決めるその瞬間まで、彼女は一度の疲労も見せなかった。
「ついに! 神秘の騎士の素顔が!」
最後の試合が終わり、司会に導かれて彼女はステージへ上がった。
衆人環視の中、面頬を外すと、結い上げられた長い髪が汗と共に乱れ落ちた。
そこにいたのは、賞品である「三ヶ月の交際権」を提示した張本人、アイドルその人だった。
マリーは勝利者特有の、悪戯めいた微笑みを浮かべ、誇らしげに胸を張り、驚愕に染まった周囲を見渡した。彼女の声が拡声器を通じ、自信に満ちて体育館中に響き渡る。
「Rosalia, Die Blüte des Reiches!([ロザリア、帝国の璀璨たる花よ!])」
「ロザリアさん、それは故郷の剣術ですの?」声が止む間もなく、新聞部の生徒が駆け寄り、マリーにマイクを向けた。
「あたくしが七歳の頃、お家にあったとっても大きなお剣を見て、使ってみたいと甘えてしまいましたの。少しお休みしておりましたけれど、あたくしの技術は劣化しておりませんでしたわね」マリーは笑ってマイクを受け取り、悪戯が成功した子供のようにピースサインを作った。
「あの頃のあたくしは、男の子よりもずっとお転婆さんでしたのよ?」
スポットライトが一度落ち、数十分の休憩の後、彼女は銀色のスパンコールが輝く衣装で再び現れた。
「さあ、青春に汗を捧げた皆様へ……あたくしからの最高のステージ、受け取ってくださいまし!!」
少女の声と共にライトが点り、軽快なメロディが響き渡る。透き通るような歌声が瞬時に会場を支配した。流麗で鋭いダンスに合わせ、人々は一斉に両手を挙げ、そのステージに酔いしれた。
――最初から最後まで、主役は彼女ただ一人だったのですわ。




