試される能力——後編
せめてジェイルの能力が分かればどれだけ戦いやすいか。
「蒼真くん。時間は?」
アイシャがジェイルへと視線を向けたまま小声で話しかけてくる。
「ん、ああ。あと1分もないくらいかな。」
体感だけど。と付け加えておけばよかったな。
一瞬で起こった出来事に、時間の感覚がずれてはいないだろうか。
アイシャの方を少し見ると、その先でエイジットは抜刀しジェイルへ刃を向けている。
ただの大双剣なら背中の翼を動かして宙に浮いているジェイルには届かないが……。
『ケケケッ! おいおい、さっきの俺の話聞いてたか? “逃げ惑う”時間を3分って言ってやったのに、何歯向かってきてんだ?』
飄々とした様子で話すジェイルだったが、次の瞬間その翼を大き広げる。
『殺すぞ』
その言葉でその場の空気が変わった。
「避けてっ!」
アイシャの言葉で咄嗟に右に飛び退いた。
そのまま転がるようにして地面に着地すると、ジェイルが放ったであろう攻撃の跡に目を疑った。
アイシャの声が無かったら気付かなかった……。
俺とアイシャ達を分けるように、地面が大きく割れていたのだ。
あれ、これ負けイベントだっけ?
不敵に笑みを浮かべるジェイルを見ながらそんなことを考えていたが、なんにせよ痛いのは嫌だ。
「時空間付加──時空間移動」
効果──時空間の概念を移動する事で半径50mの任意の位置に瞬間的に対象を移動させる。
俺はすぐにアイシャと合流するため異能を使おうとした。
「なるほどな……。」
しかしその考えは失敗に終わる。
『おいおい、お前もさっきの“音”を聞いただろ?
授法──時神の囁き』
効果──時神の目覚めと重ねることで効果を発揮する。時神の目覚めで聲を聞いた者の時を掌握する。熟練度により任意の範囲で効果を現す。
そう唱えたジェイルが真っ直ぐに俺の方飛んでくる。
それに合わせ左半身をずらし、左手の剣を逆手に持ち替える。そのまま勢いを受け流すように刀の背をあてがい攻撃を躱す。そのまま右手に持った刀身を振り上げカウンターを仕掛ける。
『なっ?!』
振り上げた剣はジェイルの左膝あたりから切り裂き、切り離された足と吹き出す血にまみれながら地面への激突した。
「おっと……。そんなもんか?」
と、言いつつ自分自身が一番驚いている。
ジェイルの攻撃の最中、先程までとは違いステータス画面は出てこなかったが確かに頭の中で理解ができた。
常時発動型異能──剣士の心得・極
効果──刀身を持った武器の扱う時に発動する常時発動型異能。全てのステータスを大幅に上昇させる。剣士の心得・初、中、上を習得している時、さらにステータスを上昇させる。
まさかここまでとは。
この異能があれば……。
「あっれぇ?ジェイルさん、まさかそんなもんで終わりですかぁ?」
俺の挑発的な態度にゆっくりと立ち上がり、肩を震わせている。
その先に俺は時空間移動を使いアイシャ達の元へ行く。
「お、お前……。一体何者なんだ。」
エイジットがやや怯えた様子で問いかけてきた。
「すいません、今はそれどころじゃないみたいです。」
ジェイルを指差しそう告げる。
いや、正確にはジェイルだった“何か”に指をさした。
そしてその先で広がる闇が、危うく心に入り込みそうになった頃。
『ニンげン…ゆるサなイ…俺は…ジェいるダぜ…じぇイる…おれ…は……。』
俺たちはどこかおかしい様子で声を紡ぐジェイルを見つめていた。
そして次の瞬間──。
一瞬にして吸い込まれた闇は、俺たちに向け放たれていた。
「──鉄鎖陣!」
「──鳴神!」
「────!」
エイジット、アイシャ、俺はそれぞれ異能で身を守ろうとした。
俺は無我夢中で手を前に差し出し巨大な盾をイメージする。
地面が振動で大きく揺れ、辺りが闇に包まれその圧に押されてか、地面からおぞましい物体が出てきては消えていく中でそれは起こっていた。
夥しい量の鎖と、激しく纏った雷。
盾と呼ぶにはあまりに不格好だが、楕円形の板がジェイルと思わしきそれを潰す格好で横たわっていた。
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メニュー起動
黒野蒼真 付加術師 LV.3
スキル数 78
☆イベント☆
刺客──クリア
ジェイル LV.27 討伐成功
exp 35,000 獲得
LV up! LV.3→18
SP 45 獲得
ステータスが上昇しています。
注意!能力値の急上昇により身体負荷がかかります。
ステータス画面へ移行しますか?
→いいえ
はい
メニューを終了します。
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この様子を見ていたアイシャと、目の前の出来事に体を震わせるエイジットの姿があったのは覚えている。
頭に響くような音声の後メニュー画面は消え、俺の視界もブラックアウトした。




