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経験値ゼロの召喚士  作者: NAG
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12/14

試される能力——前編

カナちゃんの興奮が全く持って冷めないのは、俺のステータスにERRORの文字が並んでいたことなのか。



あるいは、そこから少し下に表示されている異能(スキル)についてなのか。



「それじゃあ次は──!」



カナちゃんがウキウキした様子で話すのを尻目に、マスターとエイジットが何かに気付いた様子で辺りを警戒していた。



「カナちゃん、悪い。そいつは後だ」



エイジットはマスターとアイコンタクトを取り、カナちゃんに水晶をしまうことを促した。



「エル、お主で行けるかの?」



マスターは先程までの飄々とした様子とは裏腹に、何かの気配を探るようにエイジットに問いかける。



すると次の瞬間だった。



鈍い地鳴りとともにけたたましいまでの叫び声が響き渡る。



「いったい……。なんなん……だ……。」



誰もが学生の時に苦しんだであろうあの音。



黒板を勢いよく引っ掻くような、背筋から寒気がするあの音が。



大音量で垂れ流されている、そんな感覚だった。



やがて叫び声が止むと、エイジットはマスターに一言何か声をかけた。



そして、もちろん不愉快でしかないこの状況でも、エイジットはその音の鳴る方へまっすぐ外に向け駆け出していった。



「あっ、俺も行き──うぐっ……。」



それを追い、走り出そうとした瞬間。何者かに襟を強く引っ張られる。



「いったいな!何するんです……。って、アイシャ?!どうしてここに?」



マスターに引っ張られたと思った俺は内心焦っていたが平然を装い問いかける。



「話は後。蒼真君となら多分行けると思うから。行こうか。」



そう言うとアイシャはいつもとはどこか違う表情を浮かべたまま、エイジット達が向かった方向へと進み始めた。



──黒双剣(ブラックデュアル)



試したい事もあるし、とりあえず黒双剣を呼び出してアイシャの後をついて行く。



音の方向、それはちょうど俺たちが入ってきたこの街の門の方向だった。



ギルドを出て正面の鍛冶屋を右に。続く道を100mほど進むと居住区へ差し掛かり、そこを左へ。



しばらく行くと見えてくる巨大な壁を超えると、丁度俺が初めにこの街に訪れた時に守護獣に襲われたところが見えてくる。



しかし、そこにいるのは守護獣、ではない。



全身漆黒、そして黄色い眼光が特徴的なインプと呼ばれる西洋の悪魔のような見た目をした魔物と、それに対峙しているエイジットの姿があった。



エイジットが向かってから数分。両者に争った跡はなくただお互いを探りあっているかのような張り詰めた時間だけが過ぎて行っているようだった。



俺とアイシャは言葉を交わすわけでもなく、ただエイジットに並んで悪魔に対峙する。



しばらくの沈黙の後、口を開いたのは悪魔の方だった。



いや、口を開くという表現は少しおかしいか。



その悪魔には口がなく、どこか別の器官から発せられているようだった。



『俺は、インプキングのジェイル。お前にタナトス様から話を預かってきた。』



「タナトス……?」



ジェイルと名乗ったインプが確かにそう言ったように思ったが、アイシャとエイジットはそれに気づいた様子が全く無かった。



すぐにそれは気付く以前の話だということがわかる。



『音だ……。どうせお前らには魔物のうめき声にしか聞こえていないんだろうが。まあいいさ。タナトス様からの言葉だと思ってよく聞け。』



無言でうなずく俺に淡々と頭の中に流れてくるジェイルの声に、なぜかどこか懐かしさを感じてしまっていたが今はタナトスとやらの言葉を聞くとする。



『黒野蒼真とその主よ。私は時の化身タナトス。この世界を頂くにはあなた方の存在が非常に邪魔だということがわかりました。よって、今ここにいるジェイルによりその首を捧げんとすることです。あなたのお仲間は既に動けないよう時を止めておりますので、悪しからず。


ということだ。だけど俺はインプキングだからな。ひとまず逃げ惑うチャンスをやろう。3分経ったら戻ってくるんだぞ。それまで仲間はそのままだ。』



なんだか良く分からないことを言っている気がするんだけど、これ多分あれだ。ゲームなんかで言うイベント戦ってやつだ。



そもそも時を止めるって反則じゃない?



俺、黒双剣しかまともに使える武器ないんだけど。



やるしかないよなあ。だって、3分後に戻ってこいとか言われちゃったし。



かといって闇雲に突っ込むわけにもいかないよなあ。こんな時、俺時空間魔法使えるから。とか言ってドヤ顔で……。



その時だった。



スライムを倒したときに出できたあの四角のパネルが目の前に現れ、それと同時に音声が頭に流れ込んできた。



——————————————————————————————————


ステータス起動


異能を付加エンチャントします。


【時属性付加】

効果——使用能力に時属性を含む異能が追加されます。


【空間属性付加】

効果——使用能力に空間属性を含む異能が追加されます。


属性変化が発生します。


時属性と空間属性を付加したことにより、時空間属性が付加されます。


異能を習得しました。


【時間操作】

効果——指定範囲の時間を操作します。


【空間操作】

効果——指定範囲の空間を操作します。


【時空間移動】

効果——任意の距離を時空間移動することが可能になります。その距離は熟練度に左右されます。


その他、16種類の異能及び派生異能を習得しました。


ステータス終了


——————————————————————————————————



なんだよこれ……。



こんな機能、MHSモンスターハンティングスペースには無かったよな。



だけど、時間操作の異能はでかい。



なぜならアイシャとエイジットの時間停止を解除できるから。



不思議と異能の使い方は知っていた。



異能付加スキルエンチャント——時間操作タイムマスター

効果——半径10mの時間停止の影響を解除



「アイシャ!エイジット!説明してる暇はないけど、なんかあのでかいの倒さないとこのイベントは終わらないみたいだ!」



うっかりイベントと言ってしまったが二人はすぐに俺の言葉を理解してくれた。



それと同時に、ジェイルも戦闘態勢に入る。



これレッドプリンよりもちろん強いよな?



そんなことを考えるほどに、頭の中は冴えわたっていた。

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