PBとNBの違いって知ってるの?
館内放送で呼び出された雅樹はどんな理由で呼ばれたのか…多分トラブルなんだろう…
~20話~
店内放送で名指しで呼ばれた雅樹は急ぎ足でレジに向かう…
そこには焦った顔の店長とレジスタッフ、困り顔の年配の女性のお客さんの三人がいた…
『お待たせいたしました!』
『英さん!こちらのお客様の特注って受けてませんか?』
店長は雅樹に確認とばかりに質問する。
雅樹はお客さんの顔を確認するが、思い当たる事が何もなかった。
『大変お待たせいたしました。お客様、ご注文の商品、承ったスタッフは覚えておいでですか?』
『あなたじゃなかった…もう少し若い男の子だったんだけど…』
『左様ですか、度々お伺いして申し訳ございませんが、ご注文の商品はどのような商品だったでしょうか?』
『先日、ブロックチョコを300個お願いしたんですよ。納期は後で連絡するって。期日は明後日なんですが…何も連絡もなくって…』
『ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。ただいまご注文を承ったスタッフが不在でして、再度私が承ってもよろしかったでしょうか?』
『明後日に間に合うなら…コレなんですが…』
雅樹はお客さんから空き袋を受け取る。その際に店長に目配せをする。
店長は商品を確認すると、雅樹が何を言いたいのか察して、特注を受けた可能性のあるスタッフに聞き込みを開始する。
『これは…他社のPB商品ですね…』
『このお店で買えないかって聞いたら、若い男の子はどこでもよく見かける商品だから大丈夫です!って、自信満々で答えたのよ。だから信用したのよね…』
プライベートブランド…これは企業の自社ブランドであった。分かり易く車で例えるなら…T社の正規ディーラーでN社の新車の車を求める様な話だ。
『申し訳ございません。当店のスタッフの確認不足と指導不足です…』
雅樹は深々と謝罪をする。特注を受注したスタッフはPBとNBの区別がついてないか、はたまた国内でも最大級のスーパー、系列企業も山の様にあり、その為、どこでも置いてあると勘違いしたのか…
『後半日だけ、お時間を頂けないでしょうか?』
『半日でどうするの?やっぱりダメでした…じゃあ困るのよ…お宅が大丈夫って言ったから準備も進めてるのよ…』
『当社は中規模のスーパーですが、大手に負けないフットワークが自慢です。富山の薬売りと同じです!』
雅樹はニコっと心からのスマイルを出す。
これは雅樹が営業マン時代によく使った手だ。
相手の年齢や話し方を見て少しだけ笑わせる。
すると相手の感情が少しだけ変わる。ここで信用を取り付ける…雅樹の得意技であった。
『薬売りって…今回は都内のチョコレート売りね?』
困り顔の女性は少しだけ緊張がほぐれたのか…フッと笑う。
『同じ商品が万が一手配が出来なかった場合、代替品として、こちらのチョコレートを必ず御用意いたします。』
『半日で何とかなるのかしら…』
『都内のチョコレート売りにチャンスを頂けないでしょうか?』
『わかったわ、あなたを信じます。ええと…お名前、なんと読むのかしら?えい?ひで?』
『申し遅れました、私はこのお店で売り場を任されています、《はなぶさまさき》と申します。中々読めないですよね~、学生の頃苦労しました。お公家さんか!とか…』
雅樹は苦笑を浮かべると、女性は声を出して笑う。
『中々ない苗字よね?お公家って…』
楽しそうに笑う女性を見て雅樹は売り場から代替案のチョコレートの袋を開け、個包装のチョコレートを、一つ女性に勧める。
『先程、万が一のお話をしましたが、こちらが代替品のチョコレートです。味を見て頂けないでしょうか?』
女性はチョコレートを一つ手に取り、見た目、香り、そして味を確認する。
『このチョコレートなら、万が一の時でも代わりになるわね。』
雅樹は先程空き袋を見た際に製造元も確認していた。そこには自社のPBと同じ製造元だったのを見逃さなかった。
その為、このチョコレートを代替品として勧めたのだ。
この後の行動をシミュレーションする。
先程の女性から改めて連絡先等を伺い、名前は中村と確認する。雅樹は中村を店頭の入口まで見送る。
『ヨシ!』
雅樹は両手で顔を叩き、気合いを入れる。
『まずはセンターに電話だな。最悪の事態の代替品の確認…それから…試食のチョコレートは…自腹だな…』
そこから雅樹の行動は早かった。
センターにストックの確認、自社のPBの在庫情報を調べ、仮押さえの連絡。その後、商品の扱いのある他社を確認する。
これは雅樹が以前、警備員として勤務していた時の現場…超大型のショッピングモール店舗を何軒か調べる。バックヤードが大きい分、大量の在庫を持っている可能性が高いからだ。
その時、店長は…犯人捜しではなく、若いスタッフ、その中でも特注を触ることのないスタッフ中心に今回の事案を丁寧に説明している。
雅樹も店長も犯人捜しをするなら商品手配や、同じミスが起こらない教育を優先させていた。
『もしもし、私、英と申します。在庫の確認をお願いしたいのですが…』
雅樹は調べた店舗に順に電話をかける。
出来ることなら賞味期限が同じ日付、最悪300個を確保しなければならない。
今回は仕方ない事情があるが、本来なら日付がマチマチになるのは商品手配失敗と同じと雅樹は考える。
『数はどうにかなりそうだけど、賞味期限がバラバラだ…』
雅樹は頭を抱える。
そこに雪柳と椿が心配そうに雅樹に声をかける。
『英さん、どうして賞味期限を気にするんですか?』
『数が揃えば大丈夫ではないのか?』
『今回は最悪賞味期限がバラバラでも許して貰えるかもしれません…ですが、もし椿さんや雪柳さんがお客さんとして、渡された商品が賞味期限が全て違っていたらどう思いますか?』
雪柳はハッとすると…
『そうか、商品が集まらなかったから慌てて集めた…』
椿も納得したのか、
『手配が失敗と言い訳か…』
『少なくとも俺はそう思います。じゃあ電話を再開するとしますか…』
雅樹は一縷の望みを託して超大型店舗に電話をする。
この店舗は近隣の超小型店舗に商品を供給している。だから最後の希望でもあった。
『もしもし、私は英と申します。商品の在庫をお聞きしたいんですが…』
雅樹の後で椿と雪柳が静かに見守る。
『はい、はい、本当ですか!はい!取り置きをお願いします!』
この言葉に椿と雪柳は微笑を浮かべ無言でハイタッチをする。
雅樹は電話を終えるとすぐさま先程の女性に電話をかける。
『もしもし、私、英と申します。中村様のお電話でよろしかったでしょうか?先程は大変失礼をいたしました。商品の確保が出来ましたのでご連絡させていただきました。はい、明日…ご来店時にお支払いですね?承りました。お品物は当日お持ち帰りですか?はい…それでは明日、お待ちしております。当日はお気を付けてお越し下さいませ。それでは、失礼いたします。』
電話を終えた雅樹は二人に振り返り、
『数、賞味期限共にクリア!今からでも引き取りO.K.!店長に報告してきます!あと…車を手配しないとなぁ…』
雅樹は小走りで店長を探す。
その時…静かにスマホを取り出す椿…
『もしもし、私だ。すまないが車の手配を頼む。荷物を運びたい。バンタイプを一台至急手配してくれ。』
『椿…浜田秘書か?』
雪柳の問い掛けに無言で頷く椿。
数分後・・・・
『店長、商品確保です!コレから買いに行きます!』
『英さん!やったぁ~!所で他社のPBですよね?売価…どうします?』
『申し訳ないですが、購入価格で販売、原価売価ですが…それと購入の資金を立て替えますので後日精算…お願いします。』
『金額は…まぁ当然ですよね。マージン取ったらお客さんには不誠実に映りかねないですからね…清算は早めにしますので領収書だけは忘れないで下さいね?それから荷物をどう運びます?』
『それなんですが、レンタカーをコレから探します。』
『でしたらその、お金も領収書をお願いします。』
『何から何までありがとうございます。では、車を手配したら出発しますね。』
『お願いしますね。』
そこに椿と雪柳が現れる。
『店長、英さん、話は聞いたよ。車なら私の知人が貸してくれそうだ。少しだけ時間をもらっても?』
『俺も荷運び、手伝いますよ?』
『『お願いします!』』
店長と雅樹は最高のタイミングで味方が現れた喜びに声を合わせて喜ぶ。
雪柳が喜ぶ二人を見て椿に語りかける。
『雅樹さん、難なくトラブルを解消したな…』
『ああ、普通ならここまでスピーディーには出来ないな…益々欲しい人材だ。店長には申し訳ないがな…』
『フッ…この様子を見ているとさっき話してたスイーパーのアニメ、あのエンディングの入り方が雅樹さんに似合うな…』
『そうだな、私もそれを思っていたよ。シンセサイザーの悲しげな音色から急にロックに変わる…最高のエンディングではないか…』
『ああ、だが、エンディングには少し早いな…次回に続く…と言った所か…』
案の定トラブル発生。しかも自社では取り扱えない他社の商品…
実際に遭遇したトラブルです。
もっとも椿や雪柳はモデルも含め、存在していませんでしたが…
思い出すといまだに胃が痛い…




