5 夕日の脱出
脱出を諦めていたのはリアンだけだった。脱出を試みるブランとコンタクトを取るため、一緒に食事することを約束した
リアンの部屋に朝のご飯が支給される
そのお皿を持ちながら外に出た
辺りを見渡すと、見えてきたのはブラン、そしてその仲間達が地べたでご飯を食べていた
リアンは走りながら大きな声で名前を呼ぶ
「ブラン君!ごめん、昨日はいけなくて…!」
「おぉリアンか!全然平気、だって昨日"あそこ"に連れられてたもんな」
「そうなんだよね。ちなみに……"あそこ"って何してる場所なの?」
「謎に秘めてるよ。でも、毎回船で誰かが招待されるから、そこで集会でもしてるんだろうな」
ブランの仲間が割り込んで言う
「2階の向き出た場所から仮面を被った人達がいたでしょ。あいつらだよあいつら」
「確かにいた…ところで、みんなも脱出をしようと考えているの?」
「当たり前じゃん、俺の名前はマーテよろしく」
その流れで、マーテの隣の男の子も言う
「俺はトビー」
「ブラン、マーテ、トビー、よろしくな」
リアンはそれぞれの手を取り合い握手をした
「オッケーじゃあ脱出の計画をリアンに教えるから、しっかり聞いてくれよ」
ブランは意気揚々と言った
「うん、分かった」
「この島には月に一度招待人が来る。その時に使うあの巨大な船に乗り込むんだ」
「あんなデカい船なら、きっとナギサノ漁港に着くはずだ。着いたらみんなで助け合っていこう」
マーテが言った
「最近招待人が来たばかりだから後1ヶ月後、それまでは緻密に乗り込むまでの計画を立てていこう」
しかし、リアンは疑問を抱く
「でも、船の前は監視が立っているよ?」
「前からは入らない、島の内部から船に侵入するんだ。よく分からないと思うだろ?でも俺は見つけたんだ。秘密の通路を」
"仕事場の出入り口近く"にそれはあるとブランは言う
「船が島から離れるまで、着いてから6日くらいはかかる。だからその最初の5日間は何もしない。最終日に乗り込もう」
次の日――
リアン達は再び外で食事をしていた
監視に怪しまれないためか、みんなはアホなことをして笑い合う
たとえそれが"フリ"であろうともリアンは楽しむことを徹すると決めた
(脱出してもこの友情は続くのかな…)
そんなことを考えながら
リアンの浮かない顔を見てトビーが声をかける
「鬼ごっこしよう」
「じゃあ俺が鬼やる」
マーテは鬼になると、逃げるリアン達を追いかける
リアンはこんな時間がずっと続けばいいと思いながら走り続けた
だが、そんな時間もすっとは続かない
計画を立ててからの一ヶ月は、長くもあり短かくもあった。島に慣れ親しみだした頃、遂にその時が来た
夕日が赤く煌めく頃、その日の仕事が終わった
出入り口の柵を通り過ぎたその時、前を歩いていたブランが突然足をくじきその場に倒れ込んだ
「痛っ、いて…、」
「ブラン大丈夫?」
仲間達が近寄る
「大丈夫、まぁそこら辺で休めれば痛みは無くなると思うから」
ブランは建物の壁に寄りかかって休んだ
「今日、ちょっと張り切りすぎたかな…?」
子供達が建物内に流れていく中、連行人が声を上げる
「お前ら早く戻れ、そんな奴軽いんだから担いで持っていけ」
「ごめんなさい!」
「それじゃあ…3人で担ぐぞ…!」
ブランを担ぎ上げたところで、連行人は門を通って中に入っていく
「重くてゴメンなみんな〜」
連行人が見えなくなったのを確認すると、ブランの目つきが変わった
「リアン、ゆっくり近づいてあいつが待ち伏せしていないか見てくれ…」
ゆっくりと近づき、顔だけを覗かせて連行人の動向を伺った
連行人はこちらを気にする素振りもなく先へ進んでいく
リアンは振り向いてブラン達に親指を立てた
ブラン達は急いで地下通路の扉を探し始める
土をこそいで地表を薄く削る。出てきた木製の板を取り除き、あらわになった鉄の扉を開けた
地下へと繋がるハシゴにそれぞれ足をかけて慎重に降りる
「ブラン君、いい演技だったよ」
「ありがとう、でもこの下がどうなってるか分からないから、本番はここからだよ」
そう、怪しまれないために下見すらせず初見の状態
異様な匂いが漂う洞窟内、大人2人分の高さで閉塞感はさほど無い
ただただ真っ直ぐの道を歩み続ける
夕日が沈み始め、たんだんと暗くなりゆく中
進み続けた先に広がる空間、そして、そこから船の側面が姿を現した
一同、つばを飲み込んだ
マーテは震えて喜ぶと、走って垂れ下がっているハッチに手をかける
ハッチを駆け上がると、着いた場所は鼻をつんざく程の異臭を放っていた
排泄物や残飯をまとめた袋が散らばっており、少し寒さを感じる場所
辿り着いた先は船内の廃棄場だった
だが、
こんなところに人は来ない、隠れるには最適だと考えた彼らは狭くて臭いその室内にあるゴミ袋の山の中に姿を隠した
数時間後――
廃棄場に誰かの気配がした
焦ったようにゴミを漁る音だけが聞こえてくる
ゴミ箱を雑に開け、すぐに閉める。その姿から、自分達を探しているのではと考える…
だが、息を殺して何とかやり過ごす
やがて重低音が響き、船から汽笛が上がった
――出港
安堵の吐息が漏れる。これでようやくあの島とおさらばできる。漁港に着いた後の未来を想像し、緊張と期待で胸が躍るばかり
すると
その瞬間、強い光が彼らを襲った
ブランは思い出した。この光を食らった先にあるのは死、必死に目を瞑って耐え忍んだ
しかし、光が収束した時ブラン達の身体に何の損傷もなかった
何事もなく長い船の旅が終わる
船内の揺れが収まった時、彼らに安堵の表情が浮かぶ
ようやく島での生活からおさらばできる喜び
漁港に着いたあとを想像し、緊張が沸き立ってくる
ゴミ袋を崩し、見えた先に立っていたのは
1人の男だった
リアンの表情が曇る。なぜならその顔を見てすぐ分かったからだ
それは島に初めてきた時、島で出迎えていた男であった
「君達にはガッカリしました…特にリアン君にはね」
「ど、どうすれば…」
ブランは冷静に判断する
「ここから出ればいいだけだ…!船はもう目的地に辿り着いたんだから!」
すると…
「みんなどけ…!」
マーテが全員を押しのけて走った
「お前の目的はリアンなんだろ?なら出させてくれよ!」
「勝手にしてろ」
するとマーテの足が止まった
「し、……島……」
そこに広がっていたのは、ナギサノ漁港ではなかった
見慣れた、あの忌々しい建物が立ち並ぶ島。何も変わらない景色がそこにはあった
マーテが絶望に引きつった声で発狂し、崩れ落ちる
「私の"力"にひれ伏せ」
「ダメだ……俺らは脱出することは出来ない…」
男がゆっくりと歩み寄る。その男が腕をひと振りすると、リアンの視界は塗りつぶされるように暗転した
――目を空けると
冷たい土の感触。彼らは地面に倒れ伏していた
辺りを見回すと、屈強な大人達に周囲を囲まれていた。そして容赦なく踏みつけられる
「お前、裏切ったな」
「お前のせいでバレた」
「お前のせいだろ」
今までの仲の良さは消え去っていた。所詮、脱出計画をするための仲間であって、失敗した今、




