11 潜伏
何者かによってジュノが怪我を負ってしまう
これからのモリケルトでの生活、彼らはどうなってしまうのか、どの選択をしていくのか
追手がいないうちに、息を切らしながらリンシルたちはリアンの家を目指して走った
「リ、(ダメだ…リアンの名を口にしてはいけない)助けて下さい…!」
「いるはず…だよね?全く音沙汰もないけど」
しかし、遠くからその様子を黒い影が冷ややかに見つめていた
一方でリアンは声を聞き、顔を上げた
向かおうとするとブルクが肩を掴んで止める
しかしリアンは言った
「友達の声だから大丈夫だよ」
「出てはいけない。友達であろうとも」
「な、何で?」
「この子達は助けを求めている。誰かにつけられているのだろう。もし今リアンが出た場合、その監視によって全てがバレる。
前会った時、ビースヘブルについて言ったそうだな。彼らがその話をしていたり、リアンと会ったなどと話をした場合それがどこかで聞かれた可能性がある」
「僕のせいじゃん…なら、せめてみんなの安全を確保出来るようにしてあげて欲しい」
「安全か……分かった。まかせてくれ!その変わりリアンは外に出ないでくれよ」
リアンは布団に包まると、ブルクは扉に手をかけた
(彼らを家に帰らせたとて、その後の安全が確保できるとは限らない。家に忍び込まれ一人でも誘拐されたら……やるしかないか)
扉を開けると、そこには怯えきったリンシルたち五人がいた
「君たちどうした? 騒がしいぞ」
ブルクはあえて冷たい口調で告げた。
「あれ…?(リアンは…)」
「助けてあげたい気持ちはあるけども、変な事に関わりたくないからごめんな」
ブルクは深く頭を下げるが、次に小声で言った
「リアンのことは後で教えますから…今はただ反対を押し切ってでも助けを乞う人を演じて下さい」
五人は一瞬戸惑ったが、すぐに空気を察した
「お、追われているんです!不審者に追われているんです!」
「嘘じゃないんです。ジュノの顔を見ていただいたら分かると思います」
「確かにこれはひどいな……その制服、あなた達は振興策のエリアから来たということですね」
「はい…!」
考え込むとブルクは言った
「仕方ない、先に家に入ってて下さい。つけている者がいるかどうかちょっと見ておきます」
「すいません、本当にありがとうございます」
すると、黒い影は消えた
(振興エリアの方向…確かに右斜めの家から何者かがこちらを見ていたな……少し面倒なことになった)
ブルクが戻ると、部屋の中ではリアンとリンシルたちが再会していた
「リ、リアン!やっぱりいたのか。良かった」
「みんな…どうしたの?」
「それが、リアンの居場所を教えてくれと黒尽くめの奴らがジュノをこんな目に」
「ジュノ…!」
「やっぱり何者か"2人"が君達を追っていたよ。なるべくただの一般人として演じられたとは思うが、どうなるかはもう分からない」
ブルクに向けてヒカリは言う
「ところで、あなたは…?」
「私の名前はブルクだ。ビースヘブルに誘拐されていたリアンをこの手で助けてあげた。彼の親はもうここにはいない、だから共に過ごしている。君達には少し信じられない話かもしれないけどね」
スバルが言う
「いや、信じられるよ。ジュノがこんな目に遭ってるんだから」
「知ってしまった以上君達も追われる身になる。仕方ないが、君達にもモリケルト奪還の計画を手伝ってもらうぞ」
5人は口を揃えて言う
「モリケルト奪還?」
「君達は今は楽しく、自由で、何の不便もない、そんな状態かもしれない。だがビースヘブルが勢力を伸ばした先にあるのは支配だ。それはこの大陸だけに留まらない」
ラミルが不思議そうに聞く
「なんでビースヘブルはこんな小さい村を支配しようと考えているの?」
「この村は位置的にビースヘブルの南にあり、行き来がしやすい、そして土地を拡張して国として力を持たせる。そしてこの村の南にあるローバンニ山、あそこで魔法についての情報を独占するためだ」
「魔法?」
「―生物の種において、たった一つの個体だけが授かれる力のことだ。君達もいずれはその目で見ることになる」
「魔法なんてありえませんけどね」
ラミルが困惑するが、ブルクは揺るぎない余裕で返した
「その考えも近頃ひっくり返るさ」
気を取り直してブルクは言う
「もしこの家に何者かが侵入してきた時のために、君達は地下で過ごしてもらいたい」
そういうとブルクは本棚に近づいた。1つの本を手に取り開けると、中は箱のようになっており鍵が1つ入っていた
次に料理場の引き出しを抜き取った。そこは人1人入れるスペースが開いており、その床に鍵を刺した
「この先が地下だ」
隠された地下という秘密基地のような場所にスバルの目が輝く
「何浮かれてんのよ」
「そりゃあワクワクするよなラミル!」
「興味深い、と言ったところでしょうか」
「先に6人が寝れるスペースを作りたいから、部屋を片付けさせて」
そう言うと、ブルクは地下へ行った
数分経つと地下からブルクの声が聞こえてくる
5人全員で潜り込む。ハシゴを下った先にあるのはただの空間、左端に机がありそれ以外は何もない
——ここはブルクが計画の時に使う書類をビースヘブルから隠れて作るための場所
ブルクは外を見張りに行くと言い、地下から出ていった
質素な空間でただただ何をしようかとリアン達は考え込む
「明日の授業の準備はどうしようか」
「親も心配してるだろうし」
「でも、また襲われることを考えると、外には出たくないよね」
「俺はこの秘密基地で遊んでた〜い」
「真剣に話し合ってよねスバル」
リアンの傍らで、ラミルが小声で尋ねる
「リアンは魔法について信じる?」
「実は少し信じてて…ある島に誘拐されてた時、そこで知り合いを作って脱出の計画をしようと企てたんだ。あれは子供ながらに凄く順調にいってた。船も発信し真っ直ぐ漁港に向かっていたはずなのに気づけばまた島に戻っていたんだ。あんなの魔法でしか考えられない」
「それだけで魔法が存在するとは確信できないが、誘拐されていたのは本当だから…難しい話です」
「ブルクが言っていた散らばってた書類、片付けていたとしたらこの書斎の中にあるはずだよね」
ラミルは言葉を濁しつつも、ブルクが散らかしていた書類の山に目を向けた
書斎の引き出しを開けると、そこには『赤い閃光』『新種の生物・熊出没』といった不穏なメモが並んでいた
「魔法とは関係ありませんが、興味深いですね。この書類がここにあるということは、ビースヘブルにバレてはいけない、もしくはビースヘブルが隠したい情報をブルクさんが持っている…のですかね」
「そこまで考察できるなんて、ラミルは凄いな…」
「合っているかは分かりません。ただの考察ですから」
そうして二人は静かに書類を見つめ続けた




