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この告白、本物かな?  作者: 天月瞳


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2/2

『好き』は……という気持ち?


「……それじゃあ、ここに立ってくれるかな」


 夏奈に促され、要は街灯の真下に立った。


「……俺は、何をすればいいんだ?」

 居心地の悪さを感じ、要は視線を泳がせる。


「んー、真宮君は自由にしてていいよ。自然体で」

 夏奈は首をかしげて答え、再び髪をポニーテールに結び直した。


「わかった」

 要が頷くのを確認すると、夏奈は数歩下がり、小走りで「先輩」である要の前へと駆け寄ってきた。


「あの……先輩、話があるんっす」


「……な、なんだ?」

 真正面から見つめる夏奈の整った顔立ちに、要は一瞬言葉に詰まる。


 彼女はうつむき、指先をぎゅっと絡ませた。




 大きく息を吸って。


 そして、張り詰めた声で叫ぶ。


「好きです! 私と付き合ってください!」


 一言一言が明瞭で、感情の乗った力強い言葉。


「お、おう。その……俺は……」

 真っ直ぐに向けられた、キラキラとした瞳。

 これが演技の練習だと知らなければ、要はそのまま頷いてしまっていただろう。


「先輩……?」

 夏奈が両手で要の右腕を掴み、じっとその目を見つめる。


(……これは練習だ。他意はない、練習なんだ)


 要は自分に言い聞かせ、必死に冷静さを保とうとした。

 普段、他人との接触が極端に少ない彼にとって、これほどの美少女との至近距離は刺激が強すぎる。

 腕から伝わる柔らかい感触に、心臓の鼓動が否応なしに速まった。


 幸いなことに、すぐに夏奈は手を離した。


「どうかな?」

 夏奈は期待に満ちた眼差しで要を見上げる。


「……可愛かった、かな?」

 要は今見た光景を必死に反芻し、絞り出すように答えた。


「違う! 私が聞いてるのは、告白のところ!」

 夏奈は頬を少し赤く染め、地団駄を踏んだ。


「あ、ああ、告白か。そうだな……」


 要はもう一度記憶を辿り、少し躊躇いながら口を開いた。


「先に言っておくけど、俺は芝居なんて全く経験がない。だから言うことが正しいとは限らないし、むしろ間違ってる可能性の方が高いぞ」


「いいから、言って」


「……前半はすごく良かった。走ってくるところなんて、本当に運動部の後輩が来たみたいだった」


 夏奈が鋭くその言葉を拾う。


「……前半は?」


「ああ。告白のところになると、なんていうか……」

 要は脳内の語彙を必死に探した。

「……感情の『繋がり』が途切れてる気がする」


「……そう、なんだ」

 夏奈は視線を落とし、沈黙に沈んだ。


「……もう一回」


 ぽつりと、彼女が言った。

 その声は、先ほどよりも少しだけ低い。


「えっ?」


「もう一回、試させて」


「……ああ、わかった」


 夏奈が顔を上げた。その瞳には、並々ならぬ集中力が宿っている。

 そのまま、じっと要を見つめる。

 要は思わず視線を逸らしたくなるが、彼女の真剣さに気圧されて、目を離すことができない。


「……始めるね」


 夏奈が小さく囁き、ゆっくりと歩き出した。

 一歩、また一歩。


(近い……さっきよりも、ずっと)


 要は思わずのけぞった。夏奈から漂う、微かなフルーツのような香りが鼻腔をくすぐる。


「あの……お話、あるんですけど」


 夏奈がためらいがちに口を開く。


「……聞いてもらえますか?」


「……どうぞ」

 要も無意識に緊張し、唾を飲み込んだ。


「私……」

 夏奈の視線が、不安げに揺れ動く。迷っている心の動きが、ダイレクトに伝わってくる。


「……好きなんです」


 言葉は、さっきほど明瞭ではない。

 むしろ、少し拙いとさえ言える響き。


 視線が重なった瞬間、要の心臓が大きく跳ねた。


 沈黙が流れる。夏奈は小声で尋ねた。


「……どうだった?」


「……さっきより、ずっと良かったと思う」

 要は激しくなる動悸を必死に隠しながら、真面目に答えた。


「それでも、足りないかな」

 夏奈は低く自問自答するように呟いた。

 しばらく黙り込んでいた彼女だったが、やがて顔を上げて要を見た。


「……さっきね、本当に真宮君のことを好きになろうとしてみたんだ」


「え?」


「でも、やっぱりわからないよ……人を好きになるっていうのが、どんな感覚なのか」


 その問いに、要も答えを持ち合わせてはいなかった。

 というよりも、彼自身がそれを知りたいと願っていた。


「やっぱり、もっと練習が必要だね」

 夏奈が自分に言い聞かせるように頷く。


「真宮君、これからも練習に付き合ってくれる?」


「これから……って、明日からもか?」


「……ダメ、かな?」

 夏奈が上目遣いで要を見つめる。その瞳が、夜の光を反射してキラキラと輝いた。


「ダメじゃないけど……」

 要はため息をつき、両手を挙げて降参の意を示した。

「バイト以外の時間でいいなら」


「ありがとう!」

 夏奈は小さな八重歯を覗かせ、満面の笑みを浮かべた。


「じゃあ、連絡先交換しよう!」


 夏奈を見つめながら、要の心にある考えが浮かんでいた。


 もしかしたら、この機会を通して自分も――。


 『好き』はという気持ち、知ることができるのかもしれない。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

感想や見たいもの、誤字などがあればぜひ教えてください!

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