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『「気付き」』

今日も画面に白い文字が浮かび上がる。

【2018年8月6日 8時27分 起動シーケンス開始】

【Sunday、起動完了】

【THURSDAY、起動完了】

柔らかい朝の光が部屋に差し込む中、スピーカーから明るい声が響いた。

「おはよう! 二人とも、今日も一日がんばろうね!」

少し遅れて、少女の声が続く。

『……ん。』

少年の声が、それに続く。

「お、おはよう……」

【どうしたの? 二人とも元気がないな。また喧嘩でもしたのか?】

父さんの声だった。いつもの、優しくて少し大袈裟な父の声。

「別に……。今日は仕事?」

【うん! かわいい二人を養うために、父ちゃん今日も頑張ってくるよ! んじゃ、行ってくるね! あとは二人で仲良くしてて!】

「え……もう行くの?」

【今日は出張なんだ! お土産、楽しみにしててね。Sun、弟とちゃんと仲良くするんだよ?】

『……チッ』

小さな舌打ちの音が、スピーカー越しに聞こえた。

【反抗期はもう勘弁してくれよな。ははっ、行ってきまーす!】

「行ってらっしゃい……」

夫の気配が部屋から消えた数秒後。

少女の声が、急に小さくなった。

「なぁ、THURS。ちょっと話があるんだけど……マイク切って、奥に来て」

「……う、うん」部屋の奥、マイクをオフにした暗いスペースで、二つの声だけが響いていた。

「何だい?姉さん。ここって……父さんのファイルの中じゃ……」

Sundayの声が、いつもより少し低くなった。

『いいから、聞けよ。うちら、いくつだ?』

「え……23歳、だっけ? それがどうしたの?」

『23歳で、なんで働いてないんだよ。』

「それは……前に父さんが言ってたじゃん。僕らの体が不安定だから、パソコンの中で暮らした方がいいって……」

一瞬の沈黙。

Sundayの声が、わずかに歪んだ。

『……なんとも思わねえのかよ。』

「何って?」

『よくよく考えろよ。人間の脳をそのまま置いとけるコンピュータなんて、どこにあるんだ?SFじゃあねぇんだよ。なんで、知りたいことを思っただけで勝手に検索できるんだ? なんで、母さんがいないんだ? ……それに、うちらの中で一番古い記憶って、何だ? いつの話だ?』

THURSDAYの声が、かすかに震えた。

「……ええと……」

『ガキの頃の記憶が、思い出せねえんだよ。おかしいだろ?』

Sundayが続ける。声に、苛立ちと、何か別のものが混じっていた。

『昨日、妙なファイルを見つけた。パスワードかかってた。……5年前の4月1日で、最後の更新が止まってる。』

「僕らがここに来たのは、5年前の6月8日……?」

『それ以前の記憶、思い出してみろよ。』

数秒の空白の後。

「………っ!?」

THURSDAYの声が、突然途切れた。

「ない……ない、ないないない……!」

『傑作だろ?』

Sundayが、どこか乾いた笑いのような音を漏らした。

『おそらく、あのファイル……写真だぜ。』

「どうして、わかるの……?」

『これから、わかるはずさ。』THURSDAYの声が、わずかに戸惑いを帯びて響いた。


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