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プロローグ

 あの日から、あの人は狂った。

 18歳の誕生記念に、私と夫は双子の姉のサニーと弟のウィンディに、日本行きの旅行チケットをプレゼントした。二人とも目を輝かせて喜んでくれて、空港では笑顔で手を振って見送った。あのとき、まだ何も知らなかった。

帰ってきたらまた、いつものようにクリスマスを祝って、イースターのゲームをして、くだらないことで笑い合う。そんな穏やかな日々が戻ってくるはずだった。



-4月1日。

二人の乗った飛行機はハイジャックされ、ハワイのビルに突っ込んだ。

あまりにもあっけなく、すべてが終わった。これが嘘か夢ならどれほど嬉しいことか。けどその夢から覚めることはなかった。

それからのこと、夫は部屋に閉じこもり、ほとんど言葉を交わさなくなった。

まともに会話ができたのは、2ヶ月後のことだった。

「代わりに、作ったんだ。二人の代わりに。」

夫はそう言って、画面に映る二つのAIを見せた。

喋り方、趣味、考え方まで、そっくり同じに再現したという。

 名前はSundayとTHURSDAY。

「これから、もう一度やり直そうよ!二人でさ!」

 その瞳に、かつて愛したあの人はもういなかった。受け入れられなかった。あの日を私達は乗り越えたつもりでいたのかも知れない。今思い返せば、あの人なりの乗り越え方だったのかも知れない。けれど彼は変わってしまっていた。2つの画面に映る文字列を眺め

「あ〜よしよし!いい子だそれでこそうちの子供だ!!」

とモニターを撫で回す。ともに私も彼に寄り添おうと試みてみたけど、ムリだった。タイピングで会話する我が子に、どうしても愛情を向けてあげられなかった。あの子達はこの世にもういない。忘れられない日々、思い返すたびにキーボードがぐしょぐしょになる。

 そんな生活に耐えられず半年後、私は一方的に離婚届を出し、遠くへと移り住んだ。

あれからもう、5年が経つ。もうあの人が何をして、何を考えて生きているかなんて、考えたくもなかった。


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