4月24日 見られてる
主人公、西ヶ谷樹は唯一の友達であり中学からの親友である北須賀千也と話していた。
21日から土日を挟んで週明けの月曜日。
金曜日に起きたことを話すと千也は「もしそれが分かれば救われるな!俺たち!」と喜ぶ。
そう。あの放火事件の翌日のことだった。
千也の家が燃えたのは。
千也の家が火事になったと聞いて急いで駆けつけた樹が目にしたのは、恐ろしい大きさの火柱だった。昨日の西ヶ谷家放火事件よりも大きいように見える。
数十メートル離れていたはずなのに火の粉が顔にかかるほど。
両親は火の中にいるらしく丁度千也は不在だったらしい。
帰った千也は外で崩れ始めた家を前に立ち尽くしていた。
その後ろ姿は昨日の自分自身を見ているようで辛かった。
その時の千也の表情は思い出せない。
思い出そうとしても喉に何かがつっかえるように思い出せない。
きっと親友の何かが崩れた直後の顔を見ることが出来なかったのだろう。
千也の家の件は近くに落ちていたライターにより事件性のあるものとして処理されたが、指紋も見つからず半分警察も諦めているらしい。
樹は急いで3号館へ向かった。千也との談笑が楽しく、つい長引いてしまったため早歩きであの部屋へ向かう。
「お、きたきた!こないかと思って焦ったよ〜、」
そう言って笑顔で手を振る東屋が見えた。
「すみません、遅くなっちゃって。」
申し訳なさそうに現れた樹に東屋は
「全然いいよ、取り敢えず入ろうか。」とドアノブを回す。
昨日の位置に座ると彼女は部屋の隅にあったホワイトボードを引っ張り出した。
「えーっと、まずは連続放火事件があった場所と人をマーキングしようか。」
東屋は棚の中に入った街の地図を取り出す。
それをホワイトボードに磁石で貼り付けると彼女は赤いマーカーでバツ印を書き入れた。
「これが被害にあった場所だね、被害住人に関してはまだ分かってないけど。」
「あ、それだったら少しわかります、家が近い人が多いんで。」
樹は彼女からマーカーを受け取るとわかる限りの被害者を書き入れた。
3件目の被害者 中学教師の石田家
4件目の被害者 サラリーマン、主婦の荒木夫妻家
6件目の被害者 西ヶ谷家
7件目の被害者 北須賀家
こんなところだろうか。キャップを閉め、振り返ると東屋が
「3、4、7件目の事件についてわかる限り聞いていいかな?」と尋ねる。
「はい、まず3件目の石田先生は僕と千也が直接英語を教えてもらってた教師で、」
「えーっと、?千也…ってのは?」
「ああ、すみません。説明忘れてました。この7件目の被害者宅の一人息子で、今同じ学年にいる北須賀千也のことです。」
「なるほど、同じ学年にも被害者がいるなら他の被害者についても聞き出せそうだね。」
「そうですね。彼のほうがはるかに人脈も広いので。次に4番目の荒木夫妻ですが、僕は名前と顔を知ってるくらいで…。強いて言うなら地域のボランティアに意欲的でよく仕事を引き受けていました。」
メモを取る東屋は「続けて」と言う。
「最後に7件目の被害者の北須賀一家ですが、学校で見る限り千也は明るくて皆から愛されていました。両親も誰かから呪われるような人には見えなくって、、一家全員が社交的な性格だったからこそ犯人との接点もあったのかもしれないです。」
しばらくホワイトボードとにらめっこしていた彼女がまた話しだした。
「んー、これじゃまだ何とも言えないな、それに容疑者が浮上してないのも問題点だぞ。」
「ですよね、石田は教育方針が親から気に入られてなくって誰かの親にやられたのかもしれないです。」
「教育方針…?」首をかしげる東屋に話を続ける。
「要はスパルタで女子にだけ優しかったんです。怒ると罰があって、、」
「なるほど、まあでもシロの証明よりクロの証明が楽だって言うし、まずは怪しい人を…」
その時、ドアを叩く音が聞こえる。
東屋が「どうぞ〜」と言うと中に見知らぬ女性が入ってきた。見た所20〜30代位だろうか。
東屋が樹に小声で「ごめんね、依頼が優先。解決したら捜査の続きしようか。」と囁く。
「…ところで校内に学校関係者以外入れて大丈夫なんですか?」と樹も小声で言うと、
「駄目だけど3号館側ボロいからカメラとかないんだよね。」と返す。
「え?許可取ってないのに人集められるんですか…?」
「うん、街の電柱とかに貼り紙貼りまくったからね。無許可だけど。」
「あのぉ、そろそろいいですか…」待ちかねた女性が肩身狭そうに話しかける。
「あ、すみません。えーっとまずは用件をどうぞ。」
するとその女性は「はい、実は…」と不安そうな顔で語り始めた。
「ここ最近家の中に自分以外の人がいるような気がして…
あ!根拠はないんです、でも、こうずっと見られているような感覚がして。」
なるほどとメモ帳を開いて東屋は詳細を書き込む。その表情は好奇心そのものだった。
数個の質問のあと彼女はメモ帳を閉じると依頼主の方を向いて話し始めた。
「リビングにいる時に実体的意識性、つまり被視感を感じることが多々あると。」
「はい、まあ。」
「緊張に極度に弱いタイプだったりしますかね?」
「いえ、特段そういうわけではないと思います、」
「社交不安症からの視線恐怖症でもなさそうか、となると本当にいるかもですね。」
東屋は顔色一つ変えずに滅茶苦茶怖いことを言い始めた。
また質問を続けていくがどうも医学的に当てはまるものがなかったらしく、
「家に行くのって良いですかね。」と彼女が切り出したところで今日は終わりにした。
しかし翌日事態は一変した。




