第11話-2 悪の爪②
愛鳥であるフレースヴェルグの身動きを封じられたシルヴァーナは迫りくるチリアットとグラッフィアカーネへの対抗策を模索する。
フレースヴェルグは身動きが取れない。そして、恐らくこの能力を解くには能力者であるグラッフィアカーネを倒すしかないだろう。
しかし、シルヴァーナ自身の戦闘力は高くない。
ならば、新たに召喚するしかあるまい。
「―我が僕よ―我が呼びかけに応え―我が下へ来れ―召喚!」
シルヴァーナの詠唱とともに召喚陣が描かれるとそこから大食犬が姿を現す。
「フェンリル!あの犬みたいな悪魔をやっちゃって!」
シルヴァーナの指示で大食犬改めフェンリルがグラッフィアカーネに襲いかかる。
「ハッ!まだ分からねえのかよ。そんなんしても無駄だってことがなぁ!」
グラッフィアカーネが手を翳すように前に出すとフェンリルの突進が遅くなる。体重を増加させられたのが傍目に見ても分かった。
しかし、フレースヴェルグと違い、陸に特化している且つ、筋肉量の多いフェンリルは突進を止めない。
「……ッ!チリアット!オレっちを守れ!」
犬顔を顰めたグラッフィアカーネの叫びに従い、守るようにチリアットが躍り出る。
そして、フェンリルの突進を受け止める。
しかし、フェンリルの突進の威力は強く、その衝撃がチリアットからグラッフィアカーネに伝わり、飛ばされる。
「うわあああぁぁああ!」
宙高く舞うグラッフィアカーネを見てシルヴァーナは目を丸くした。
「フェンリルの突進ってあんなに凄かったっけ?」
その隙にチリアットは牙を下に向けると勢いよく上に上げ、フェンリルを投げ飛ばした。
そして、フェンリルは地面に叩きつけられると地が揺れたと錯覚するほどの激しい地鳴りを響かせる。
そんなフェンリルの姿を見てシルヴァーナは気付いた。フェンリルの体重が増加したからだと。
体重の増加はデメリットとばかりに感じていたが、もしかするとメリットにも出来るかもしれない。
シルヴァーナはゆっくりと体を起こすフェンリルと飛ぼう奮闘するフレーズヴェルグを見てそう感じた。
………………………………………
「ぐはっ!」
バルバリッチャの腹への一撃を喰らったジョナサンが飛ばされる。
「ジョナサン!」
シドが首を後ろに向けて叫ぶもそこへマラコーダの尾による薙ぎ払いが繰り出される。
「よそ見をしている余裕があるのか?」
シドはそれを受け止めるも威力に耐え切れず飛ばされてしまった上にそこへルビカンテの黒炎を喰らってしまう。
「ぐへえ!」
「ガアアアアッ!」
地面に叩きつけられたシドは熱さに悶えながら引火した腹の鎧を外し、投げ捨てるも黒炎はすぐに消えてしまう。
どうやらこの黒炎の持続時間はそう長くないようだ。せいぜい10秒といったところだろう。
しかし、現状劣勢であることに変わりはない。
黒炎を操るルビカンテという悪魔を倒すのは恐らくだが難しくないが、問題はマラコーダだ。
あれほどの使い手を今のシドで倒すのは難しい。接近戦に持ち込まれては間違いなく競り負ける。
なら、一撃で倒すしかない。
シドにはそれが出来得る武技突貫波がある。レイとの訓練で更に磨きがかかったあの技なら手練れの悪魔にも通じ得る。
だが、眼前の敵はその構えを取ることを与えてくれない。構える時に出来る隙を与えた瞬間、やられてしまう。
しかし、やらねば勝てない。
早くこの2人を倒してジョナサンを助けなければならないのだから。
シドは立ち上がろうとするジョナサンに目を向けた。
ジョナサンは立ち上がると眼前のバルバリッチャに目を向けた。
筋骨隆々の悪魔は腕組みし、悠然と立っている。
「避けてばっかじゃ勝負にならないぜ。それとも諦めて降伏すんのか?」
――分かっている。
そんなの分かっている。だからここで保ち堪えて仲間の助けを待ちつつ援護しようという魂胆だった。
しかし、頼りのシドとアーロンも手が離せそうにない。
寧ろここで自分が目の前の敵を倒して2人の援護に行かねばならないのだ。
だからここで勝たねばならない。
「僕は出来る……」
この一週間何度も繰り返した言葉だ。
そして、ジョナサンは攻撃に使えないとばかり思っていた自分の異能力で攻撃技を編み出した。
「うおおおおおお!」
ジョナサンは声を上げながらバルバリッチャへ向かっていく。そして、距離が近づくと拳を振るい上げた。
筋は悪くないがまだまだ拙い。
そう感じたバルバリッチャは冷静に手を出し、その拳を受け止めようとする。
しかし、ジョナサンの拳が放たれたのにも関わらず掌にその感触が伝わってこない。
訝しんだその瞬間、バルバリッチャは右頬に衝撃を感じた。何が起こったか分からず、よろけながらバルバリッチャは目を白黒させる。
そこへジョナサンが腹に向かって拳を突き出す。
バルバリッチャは慌てて腹を守ろうとするも打撃を感じたのは下顎だった。
顎を撃ち抜かれ、顔が上向きになるバルバリッチャはその絡繰に気付いた。
「――そういうことか」
そう呟くと同時にジョナサンの回し蹴りが腹部に直撃し、矢が放たれるように体が吹き飛ばされる。
そして、地面に倒れ伏した。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
ジョナサンは片膝を着き、肩で息をする。
通用する。
この戦い方なら勝てるかもしれない。
そう感じた刹那、倒れていたはずのバルバリッチャが弾丸の如き速さでジョナサンの前へ現れた。そして、必殺の蹴り上げが繰り出される。
それに命の危険を感じたジョナサンは反射的に異空間を展開し、蹴りを防ぐとバルバリッチャは後方は飛び退った。
「お前のその不規則な方向から来る打撃の正体はその異空間だ。それで自身の打撃を別の異空間でトンネルのように通じさせ全く別の場所から喰らわしたというわけだ」
バルバリッチャはジョナサンを指差して指摘した。
ジョバンニはそれに動揺も驚きます見せずバルバリッチャを見返した。
「だがしかし、それなら何故俺の攻撃を同じようにしない?俺の攻撃を俺にぶつけることも原理上出来るはずだ」
しかし、その指摘には肩を僅かに震わせてしまう。
「その理由は単純にお前の技量にあるのだろうな。俺の拳を完全に防ぎ切れないのと同じ。どこから来るか予想がつかなければ防げない」
「だったらどうした?それが分かったところで何も変わらないさ」
――ここで動揺をしてはいけない。
そう感じたジョナサンはわざと強気な調子で口を開いた。
「いや、変わるさ。おい、馬鹿二人武器寄越せ」
「誰がバカだオラァ!?少し待ってろオラァ!?」
「誰がバカだゴラァ!?そらよゴラァ!」
馬鹿と言われたことに憤慨しながらもアリキーノとカルカブリーナは液体金属で蛇腹剣を生成するとそれをバルバリッチャへ投げ渡した。
「あの2人妙に素直なんだよな……さて、どう変わるかだが、先程も言った通りお前は攻撃を見切れないと異空間でも防げない。そして、お前が異空間を出せる範囲はそう広くない。ならこのしなる蛇腹剣を使えばお前は攻撃は防ぎ切れない」
そう言い、蛇腹剣を振るう。剣はその名の通り蛇のように大きくうねりを見せた。
ジョナサンは歯噛みした。
確かにあれを防ぎ切るのは難しい。
しかし、やらなくてはならない。
臆することなく一歩進み出た。
「ほう、臆さないか。……面白い。来い、ジョナサン!」
「行くぞ!」
そう叫ぶとジョナサンは駆け出した。
その様子を小柄な少年―アーロンは傍目から眺めていた。
「ジョナサン頑張ってるな。……俺もやらないとな!」
アーロンは己に喝を入れると指の間に計8本の短剣を持ち、アリキーノとカルカブリーナに向かってゆく。
「何回やっても同じだオラァ!?」
「無駄だゴラァ!?」
そこへ金属の液体が迎撃してくる。
アーロンはそれを跳躍として躱そうすると液体もそれに合わせて足を巻き取ろうと伸びてくる。
しかし、アーロンは足を引っ込めることで躱すと左手の短剣を4本投擲する。
それに2人は液体を引っ込めると壁を作り、短剣を防いだが、その際視界が遮られ、壁が融解した時にはそこにアーロンの姿はなかった。
「何だオラァ!?」
「どこへ行ったゴラァ!?」
怒鳴り散らす2人の背後に現れたアーロンは持ち替えた短剣を2本右手で放った。
「「そこだなオラァ(ゴラァ)!?」」
しかし、寸前に気付いた2人は液体で飛んでくる短剣を弾きながらアーロンへそれを直撃させた。
「ぐほっ!?」
腹を抉られたアーロンは地面に叩きつけられ、盛大に咽せるも第二陣の液体が迫りくるのを見ると短剣を回収し、転がるようにして攻撃を躱した。
「「甘いんだよオラァ(ゴラァ)!?」」
「やっぱそう上手く行かねえな……」
怒鳴るアリキーノとカルカブリーナを見たアーロンは額の汗を拭った。
…………………………………………
「そらあ!」
カニャッツオが3個の岩石爆弾を投げつけてくる。
アリスは矢を射てそれらを撃ち落とそうするも2本は当たったが1本は外してしまう。技術にはまだ訓練の余地がありそうだ。
しかし、残りの1つはグレンが槍を投擲して貫いたことで落下を防いだ。
「ありがとうございますグレンさん!」
「礼は後だ。来るぞ!」
前を向くグレンの先にはドラギニャッツオ、スカルミリオーネ、リビコッコが迫り来るのが見えた。
「――吹き飛ばせ――爆散弾!」
グレンの詠唱で第二階位魔法爆裂系爆散弾が3人に炸裂する。
しかし、倒れたのはスカルミリオーネのみで残り2人は変わらず突進してくる。
「うわあ!」
「邪魔するんじゃねえ!」
怒号を飛ばすリビコッコが振るう巨大な鉤爪をグレンが槍で受け止める。
しかし、その衝撃は強く、足がめり込んでしまう。
「どけよ!オレはあの女に用があるんだ!」
先ほどやられたことを根に持っているのかリビコッコが苛立った様子で叫ぶ。
「だったら尚更行かせるわけには行かないねえな!」
グレンはリビコッコの鉤爪を押し返すと槍を相手の腹に叩き込むと同時に爆裂を発動する。
「ぐわぁ!?」
爆風でリビコッコは飛ばされ、地面に倒れ伏した。
「さっさっと来いよ」
そう人差し指を曲げ、挑発するもグレンは片膝を着いた。
「はぁ……はぁ……何だこれは……?」
頭痛と寒気がする上に身体が怠い。まるで風邪でも引いたかのような体調にグレンは戸惑いを覚える。
「効いてきたようだねぇ★」
グレンが声のする方を見るとそこには道化師が佇んでいた。
「それは僕の能力で相手に風邪を引かせることが出来るんだ。ほら、あの時ボール潰したでしょ?あれ★」
「あれか……」
グレンは顔を顰めた。
「死ぬような風邪を引かせることも出来るけどグレイシアくんに殺すなって言われてるしね。君のは微熱程度だよ★」
そして、「治したいなら僕を倒すことだね」と付け加えた。
「面倒臭え……」
グレンは咳き込んだ。
そんなグレンの横ではドラギニャッツオとアリスの戦闘が繰り広げられていた。
ドラギニャッツオが振るう鉤爪をアリスの弓が受け止める。
距離を詰められているため、弓を放つことが出来ないが、ドラギニャッツオも不殺を要求されているため、触れたものを灰に変える炎を吐くことが出来なかった。
「くっ……」
「お前、ただ者ではなさそうだな。何だその尋常ならざる力は?」
「……」
「まあ、言いたくないなら言わなくてもいいさ。重要なのはお前が強いかどうかだ!」
そう言うとアリスを弾き飛ばす。
アリスは地面へ転がるも態勢を立て直し、弓を引く。
しかし、それらは全てドラギニャッツオのブレスで灰にされてしまった。
そして、跳躍し、その鉤爪が襲い掛かろうとする。
「キャーーー!」
アリスは思わず蹲ってしまう。
そして、鉤爪がその背中引き裂こうとしようとした時、何者かがドラギニャッツオを殴り飛ばした。
「ぐおっ!」
空中で態勢を立て直したドラギニャッツオは着地すると嬉しそうに口角を吊り上げる。
「強そうなのが来たぜおい。お前が遅れていた1人か?」
アリスが顔を上げるとそこにはボロボロだが、どこか背中が大きく見えるライオネルが立っていた。
「ライオネル……くん?」
「ああ!遅くなって悪かったな!」
ライオネルは左の掌に右手の拳を叩き込み笑った。
「ライオネル……やっときたか!」
グレンが地面に手を着き、吐き出すように言った。
「ああ、ちょっと手こずっちまったな。悪い」
そう笑うライオネルは所々擦り傷が見え、体力も消耗しているように見えた。
「お前、何か体調悪そうだけど大丈夫かよ?」
「ああ、少し風邪を引かされちまってな。あの道化師を倒さないと治らないらしい」
「何?」
ライオネルがファルファレルロをジロリと睨む。
ファルファレルロはその睨みに「ひっ!」と声を上げる。
「なら、まずアイツを倒すか!」
そう言うとライオネルはファルファレルロとの距離を一瞬でゼロにし、拳を振るおうとする。
「ひいっ!」
しかし、ファルファレルロは後方転回で躱すと木の陰に姿を隠してしまう。
「無駄だ!魔拳!」
ライオネルは打撃で魔素の衝撃波を飛ばし、木を倒す。
しかし、既にファルファレルロの姿はなかった。
「チッ、逃げ足の速いヤロウだぜ」
そう言うとグレンを抱え、アリスの元へ一瞬で戻った。
「早えな」
「ほう」
ライオネルの身のこなしにリビコッコとドラギニャッツオが感心したように呟いた。
「俺があの2匹を叩く。グレンとアリスは援護くらい出来るよな?」
ライオネルの言葉に2人は黙って頷いた。
「でも、あの弱そうな汚ねえ長髪はやってくれると助かる」
「何だとぉ!?」
ライオネルの言葉にスカルミリオーネが反駁する。
「ああ、分かった。あと、置き土産置いてきたから使ってくれ」
その言葉に一瞬首を傾げたライオネルだったが、すぐ意味に気づくと頰を吊り上げて笑った。
「ありがとうな!」
そう言い終える前にライオネルはドラギニャッツオとの距離詰め、左拳を振るう。
「おっと!」
しかし、ドラギニャッツオは鉤爪の付いた両手でそれを受け止めた。
「無視すんなやァ!」
そこへリビコッコが巨大な鉤爪を緩慢な動きで振り上げる。
ライオネルは避けようとするも左拳が握られているため逃げられない。
「ライオネルーー!」
グレンが無詠唱で爆散弾を放とうとするも間に合いそうにない。
そして、そのまま鉤爪を振り下ろされる―――
「チッ、いけすかねえが……仕方ねえな!」
ライオネルは押さえられた左手を軸にドラギニャッツオの脇腹に回し蹴りを叩き込んだ。
そして、蹴り飛ばされたドラギニャッツオはリビコッコにぶつかった。
「ぐあっ!」
「うわっ!」
地面に叩きつけられる2体の悪魔。
その光景にグレンとリサは目を見開いていた。
「あの技は……」
「グレイシアさんの……」
2人はライオネルの蹴りにグレイシアの姿を重ねていた。
「やっぱ、アイツみてえにはいかねえな」
ライオネルは悔しさを滲ませて言った。
「やりやがったなテメエ!」
ドラギニャッツオを退け飛ばしたリビコッコはライオネルに怒鳴り散らす。
「俺に若干当たるなよ……」
「うるせぇ!」
八つ当たりを受けるドラギニャッツオだがリビコッコの性格を理解しているからか露骨に憤る様子は見せない。
そこへライオネルが拳を繰り出す。
「うおっ!」
「少しくらい待てや!」
リビコッコがお返しとばかりに鉤爪を振るうもライオネルはそれを楽々と躱す。
「遅えんだよ!」
ライオネルはアッパーで鉤爪を弾き返す。
その背後よりドラギニャッツオが迫るもそこへグレンの爆散弾が飛んでくる。
「ちっ」
「邪魔させねえぞ」
攻撃を妨害されたドラギニャッツオだが、そこへライオネルのこぶしが飛んでくる。
「ぐっ……!」
多少の援護は受けているものの2体の悪魔をライオネル1人で圧倒している。
これは3人の戦いに有利な状況をもたらす。
そんなグレンの横で爆発音が鳴った。カニャッツオの岩石爆弾がリサの矢によって爆破したのだ。
一刻も早く撃破したいものだが、カニャッツオはこちらを警戒し、距離を開けたままである。
なら、誘導するしかない。
「アリス、ライオネルの援護を頼む!俺はあいつをやる」
そういうとグレンは石ころを拾い、カニャッツオの頭上を弧を描くようにして投げた。そして、石ころが地面に触れた途端爆発する。
グレンが投げる直前に第二階位魔法爆裂を付与していたのだ。
「ぐおっ!?」
爆風で体が前へ飛ばされたカニャッツオへグレンは槍での刺突を繰り出す。
「くっ!」
しかし、それをカニャッツオは腹を引っ込めることで躱す。
グレンは荒い息で槍の突き出しを繰り返すがカニャッツオはそれらを全て避ける。
しかし、カニャッツオは苛立っていた。
槍での攻撃のせいで爆弾を投げることが出来ない。投げることが出来ても自分も死んでしまう。
悪の爪の勝利への一歩としては悪くないかもしれないがこれはあくまで模擬戦のため、そこまでする必要はなく感じた。
そこで風邪のせいで肌寒さを感じたグレンの槍の攻撃が一瞬緩む。
ここを見逃さなかったカニャッツオは隙ありと後方へ跳躍し、爆弾を投げようとする。
そして、カニャッツオが地面に足を着いた時、グレンがニヤリと笑った。
次の瞬間、カニャッツオの足下が爆発した。
グレンが仕掛けていた地雷、第二階位魔法爆裂系魔獣地爆が作動したのだ。
「うわああぁぁあああ!」
カニャッツオの体は爆風に包まれると断末魔とともに黒い煙と化し、姿を消した。
「おい!カニャッツオがやられたぞ!」
「あいつは慎重過ぎるきらいがあったからな。それに上手く乗せられたって感じか」
リビコッコの怒鳴りにドラギニャッツオが返した。
――グレンくん……やったんだ……
グレンの活躍を見ていたアリスは触発され、弓を構える。
―私も役に立たないと……
しかし、その弓は何者かによって蹴り飛ばされる。
アリスが顔を右に向けるとそこには汚らしい乱れ髪がいた。
「やっと、近づいたぜぇ……」
爆発の裂傷が目立つスカルミリオーネが気持ちの悪い笑みを浮かべる。
「ひ……!」
恐怖心か或いは生理的な反応か、アリスはスカルミリオーネから距離を取ろうとする。
「逃さねえよ!」
スカルミリオーネは手から何か液体のようなものを発射した。よく見るとそれからは湯気のようなものが出ている。
恐らく熱湯だろう。
それで自分に火傷を負わせるつもりか――
「ヒッヒッヒッ!これでようやく透けた女の下着が拝めるぜ!あ、熱湯は熱いだろうけど火傷はしない温度調整にしてるから」
否、スカルミリオーネはただの変態紳士だった。
その科白にアリス思わず脱力してしまい、転倒した。
そこへスカルミリオーネの熱湯が迫りくる―――




