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第11話-1 悪の爪①

 現れた12人の悪魔に6人は固唾を飲んだ。


 倍の人数というよりその醸し出される異形の雰囲気に押されていた。


 「ゲヘヘヘヘ!女はもいるじゃねえか。ケツ触りてえな!」


 「真面目にやれアホ」


 セクハラ発言でアリスとシルヴァーナを引かせる長く乱雑な髪の毛を持つ醜男の悪魔、スカルミリオーネの頭にガタイのいいオールバックという肌と羽を除けば人間と何ら変わらない容姿のマレブランケ副リーダーバルバリッチャの拳骨が炸裂する。


 「痛っ!何すんだよ!」


 「当然の結果だろ」


 ひしゃげた顔の犬のような容貌のカニャッツオが言い放つ。


 「それよりもこの中にオレを倒しませてくれるヤツはいるのかぁ?」


 (ドラゴン)と人が合わさったような容貌のドラギニャッツオが口角を吊り上げて言う。


 「すぐに分かる。お前たちは落ち着きを持て」


 リーダーであるマラコーダが皆に呼びかけるように言うと悪の爪(マレブランケ)一同は黙り込んだ。


 「どういう戦術でいくよ?」


 シドにアーロンが尋ねる。


 「相手の能力は分からず、数も相手の方が上。グレイシアさんの言う"最悪の状況"だ」


 シドはグレイシアの姿を脳裏に浮かべて言った。


 「俺とアーロン、シルヴァーナさん、グレンで突っ込む。アリスとジョナサンは後方支援を頼む」


 一同は黙って頷いた。


 「作戦会議は終わったか?では、行かせてもらうぞ!」


 マラコーダの叫びと共に双方が駆け出した。


 「―我が(しもべ)よ―我が呼びかけに応え―我が下へ来れ― 召喚(サモン)!」


 同時にシルヴァーナは第二階位魔法召喚術召喚(サモン)風鷹(ヴェルズフェルニル)を召喚する。


 白銀に輝く硬質の翼を羽ばたかせ舞い上がるとそこへワニのような容貌に巨大な2つの牙が特徴的な悪魔が顎を開け噛み付いてくる。


 「うわっ!」


 シルヴァーナはそれを寸前で躱させると二羽は空中で対峙する。


 「君、名前は?」


 「……チリアット」


 くぐもった声で言った。恐らく口の構造が発生に適してないのだろうとシルヴァーナは思った。


 「チリアット、ね。じゃあ、行くよフレースヴェルグ!」


 シルヴァーナの指示で風鷹(ヴェルズフェルニル)は強く羽ばたくと風の刃がチリアットを襲う。


 チリアットはそれを上へ飛んで躱すと頭上から牙を振り下ろしてくる。


 「なんの!」


 しかし、シルヴァーナのフレースヴェルもそれを躱す。


 その流れで鉤爪の一振りを繰り出すがチリアットは牙で防いだ。そして、お互い弾かれるようにして後退する。


 「中々やるね!でも、こっちもまだまだだよ。ね、フレースヴェルグ」


 その時だった。フレースヴェルグが突如、降下を始めたのだ。


 「どうしたのフレースヴェルグ?下がっちゃダメだよ!」


 すると、フレースヴェルグは降下を止めた。しかし、よく見ると翼の動き方はいつもより一層激しいのに気が付いた。


 ―何かおかしい。


 「そうだよ。そいつの体重を重くしたんだよ!」


 そう思うと同時に下から声が聞こえた。


 下を見るとカニャッツオと同様、犬のような容貌をした悪魔が笑っていた。


 「オレっちの名前はグラッフィアカーネ。物体の重量を増やす能力を持った悪魔さ!さあ、やっちまいなチリアット!」


 グラッフィアカーネの命令でチリアットが飛びかかってくる。


 シルヴァーナはそれを躱そうとするもののフレースヴェルグは自分の身体を維持するのに精一杯だ。


 そして、チリアットの牙の先端がフレースヴェルグの肩に食い込んだ。甘噛みな上、弱点である首元に噛み付かなかったのはレイに殺すなと指示を言われているからだ。


 しかし、牙の元の大きさが大きいため、ダメージは少なくなく、フレースヴェルグは悲鳴にも似た鳴き声を上げると落下していく。


 「フレースヴェルグ!」


 そして、フレースヴェルグは地面に激突し、木を押し倒すと粉塵を上げた。


 「ううっ……」


 フレースヴェルグの背中でシルヴァーナは起き上がった。自身はかすり傷程度の怪我だった。


 しかし、フレースヴェルグはどうか。シルヴァーナは急いで傷を確認したが、こちらも傷は重くなく、落下時の怪我も大したものではなかった。


 しかし、体が鉛のように重くなったフレースヴェルグは飛ぶのどころか起き上がることすら困難な状態だった。


 「ケケケケケ!どうだ、もう降参してもいいんだぜ?」


 「……っ!」 


 牙に血を付着させたチリアットと下品な笑みで近づいてくるグラッフィアカーネにシルヴァーナは脂汗を流した。


 ………………………………………


 「フン!」


 「はあ!」


 こちらではシドとマラコーダの戦闘が起こっていた。


 シドは剣で、マラコーダは己の尾で戦っている。


 「くっ……」


 鍔迫り合いになるがシドのほうが押されている。


 マラコーダは自分の尾を剣か槍のように自在に操り、戦っており、その実力は相当なものだった。


 「今だ阿呆のルビカンテ」


 「あううっ!」


 そこへルビカンテと呼ばれた舌の長い悪魔が手から黒い炎を放ってくる。


 「くっ!」


 この状況、黒炎を躱そうとすればマラコーダにやられ、マラコーダに集中すれば黒炎を受けてしまう。


 そこでシドはマラコーダを押し返そうとするも押し返せず黒炎が命中するかに見えたその瞬間――


 ――黒炎が裂け目のようなものに吸い込まれて消えた。


 ジョナサンがシドの背後に異空間を作り出し、黒炎を防いだのだ。


 「ナイスだジョバンニ!」


 マラコーダをようやく押し返すとシドは叫んだ。


 「厄介な。やれバルバリッチャ」


 「了解」


 マラコーダの指示を受けたバルバリッチャがジョバンニに殴りかかる。


 「うわっ!」


 ジョナサンは最初の一撃を躱すと背を向けることなく拳が来る箇所へ異空間を出し続け、回避するが、途中、顔面に向かってくる拳に反応し切れず殴り飛ばされてしまう。


 「ジョバンニ!」


 そこへ鬼のような外見をしているアリキーノとカルカブリーナの相手をしていたアーロンが駆けつけようとするも回り込むようにして現れた液体の金属に行手を阻まれてしまう。


 「何無視してんだオラァ!?」


 「行かせるかよゴラァ!?」


 無視されたことがそんなに気に食わなかったのか怒りの形相を見せる2人にアーロンは背後のジョバンニを気にかけつつも立ち向かっていった。


 ………………………………………


 グレンに岩石のような物が投げつけられる。


 グレンはそれを弾くのでなく、躱した。


 すると岩石は地面についた瞬間、爆発した。


 それは投げられ続け、グレンも躱し続けるも遂に躱仕切れなくなり、槍で弾くと空中で爆発してしまう。


 爆炎で視界を遮られたグレンに影が迫る。


 「こんにちは〜★」


 「!?」


 声に反応し、即座に振り返るとそこには道化師の格好をし、ボールでジャグリングをする悪魔ファルファレルロがいた。


 「ハハッ!驚いてくれたかな?」


 グレンは槍を引き寄せ、ファルファレルロを攻撃しようと一歩踏み込むも躓き転んでしまう。


 足元を見るとそこには割れたボールが転がっており、ファルファレルロがジャグリングするボールが一つ減っていた。どうやらファルファレルロがボールをいつの間にか転がしたようだ。


 「ハハッ!ひかかった!ひかかった!」


 ファルファレルロは揶揄うように言うと煙の中、姿を消した。


 「……面倒臭え」


 グレンは1人呟いた。


 「グレンさん!大丈夫ですか!?」


 そこへアリスの声が聞こえる。


 「俺は大丈夫だ。そっちは?」


 「私も大丈夫で……きゃっ!」


 そこへ巨大な鉤爪を持った爬虫類のような見た目をしたリビコッコが爪を振るってきた。


 そして、その隣へスカルミリオーネがやってくる。


 「おお、可愛い子じゃんよ。早く俺の能力で服の下を……あぶっ!」


 そんなスカルミリオーネの膝の関節部分にリビコッコが回し蹴りを喰らわせる。


 「うるせえんだよ!静かにしろ!」


 リビコッコはそう怒鳴り散らすとアリスに襲いかかる。


 アリスは矢を放つも全て外してしまいリビコッコの鉤爪が振るわれる。


 「きゃっ!」


 アリスは咄嗟に弓でガードを試みる。


 普通ならこれでガード出来たとしてもリビコッコの鉤爪の威力に耐え切れず飛ばされるものだが、アリスは耐えた。


 「何?」


 驚くリビコッコ。


 そこへアリスは至近距離から矢を放つとリビコッコは吹き飛んだ。


 「ぐあああっ!」


 想定外の威力にリビコッコは驚きながら地面に叩きつけられる。


 アリスはそこへ止めとばかりに二の矢を放つもそれは吹きかけられた炎によって灰と化してしまった。


 そこへ炎の主が姿を現す。


 「お前強そうだな。このドラギニャッツオの相手になれ!」


 その覇気に思わず気圧されそうになるもそこへグレンが駆けつけたことで少し安堵する。


 「改めて大丈夫か?」


 「はい。グレンさんは?」


 「俺もだ」


 グレンは安心させるように笑いかけるがその顔色はどこか悪かった。


 「しかし、面倒臭えな。5人も相手しなきゃならねえのかよ」


 グレンは自分たちを囲む岩石爆弾の持ち主であるカニャッツオにファルファレルロ、スカルミリオーネにリビコッコ、ドラギニャッツオを見ると武器を構え、溜息を吐いた。


 アリスはその額に冷や汗をかいていた。

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