エピローグ
ドスン。
朝早くにベッドから落ちる。
「いてて……おかしいな、寝相はいいはずなのに……」
いままで一度もベッドから落ちたことはないのに。それに何かに蹴られたような気も……。
起き上がり、ベッドの上を確認する。
――そこには昨日帰ったはずのルナの姿があった。
「おい、ルナ! なんでここに?」
肩をゆすり起こそうとする。
「うーんあと五分……かける十」
「それじゃあ一時間近くなるだろ! そんなに待てるかよ! とりあえず話を聞かせろ!」
布団を無理やり剥いでやった。
「うう……さぶっ。ああ戸山、おはよー」
「ああ、おはよう……ってなに当たり前のようにここにいるんだよ! 帰ったんじゃなかったのか?」
「ああ昨日のことね……」
なんか急に声のトーンが下がっているのが気になるぞ。
「一体何があったんだ?」
「……向こうに帰ってすぐ上司に呼び出されてね。契約完了の臨時ボーナスでも出るのかとワクワクしていざ行ってみると……説教地獄だったわ。なんで他のところの悪魔の邪魔をしているんだとか、『生きたい』なんてどうしようもない願いでオーケーもらえるわけないだろとか……もう延々と夜遅くまで。ようやく終わったと思ったら休む暇なく『やり直し』と言われてこの部屋にポイッと捨てられて――」
ふぁあああ、とルナが大きなあくびをする。
「要するにもう一度願いを叶えに――契約を果たしに来たってことか」
「そういうこと。だから……とりあえず私はもう少し寝るわ……」
布団を掛け直し、完全に寝る体勢になるルナ。
「後々バイト行くけど、どうする?」
「起きたら付いてくわ。寝てたらそのままにしておいて……」
なんと睡眠欲に忠実なことか。……そんな生活うらやましいぞ。
よっぽど疲れていたのか、すぅー、すぅーとすぐに寝息が聞こえてきた。
バイトが始まるまでまだ時間はあるけど、この調子だとルナは起きないだろう。
「まあいっか。今日は赤穂さんもいないからカレンが見えなくて困ることにはならないだろうし。……とはいえまだまだ時間があるなぁ。俺ももう少し寝るか」
ルナがいることに安心感でも生まれたのか、少し眠気が来た。
「目覚ましはかけたままだし……よいしょっと」
押入れから昨日しまった毛布を再び取り出し、最近慣れ始めたカーペットの上で寝る。
…………。
……。
ピピピッ、ピピピッ、ピ――。
目覚ましのアラームを止める。やっぱりルナは全然起きる気配がない。
言われたとおりこのまま寝かしておいてあげるか。
朝食のパンを食べ、着替えて、部屋を出てバイトに出発。
ちょうど玄関を開けたそのとき、隣の部屋の人も部屋から出てきたところだった。
隣の人に会うなんてすごく珍しいなー。どんな人だったっけ……ってあれ!?
見た目は小年のような小柄な男性。どこかで見覚えが……。
「あっ……」
向こうも俺に気付いたみたいで、挨拶をしてきた。
「おはようございます。…………昨日はどうも」
声も幼い印象を受け、こちらも聞き覚えがある。
「君ってもしかして……佐々木教授に付いていた悪魔?」
「せいかーい! 佐藤狩です。先輩と同じ大学――来年から二年になるのでよろしく!」
元気いっぱいに自己紹介をするカル。
「同じ大学って……え!?」
こちらが自己紹介をするのも忘れ、思わず聞き返してしまった。
「驚くことないじゃないですか。ここ大学に近いんだし、同じ大学の人が住んでいても不思議じゃないでしょ?」
「いや同じ大学なのにびっくりしたんじゃなくてだ。なんで悪魔なのに人間の大学に来てるんだ? それにどうみても中学生くらいにしか見えないんだけど」
「理由なんて――面白そうだったからに決まってます。いろんな人がいるし、変な人も多いし。年齢とかは気にしちゃダメ! 細かいことはぜーんぶ佐々木に願いの報酬として丸く治めて入学させてもらったから」
……裏口入学かよ!
「おっとこんなに話をしてる時間なんてなかった。バイトに遅れる遅れる!」
「じゃあがんばってくださいねー」
手を振るカルを後にして、俺はバイト先に向かって走り出した。
ルナ、カレン、それにカルまでいるとは……。
周りに三人も悪魔がいるなんて俺くらいじゃないだろうか?
カルがお隣さんの今、最低でも二年は悪魔から離れることはなさそうだ。
……悪魔とはまだまだ長い付き合いになるだろうな。
俺は少し口元に笑みを浮かべ、非凡な日常に走り出す。
――終わり――
無事完結することができました。(……ホッ)
ここまで読んでくださった人がいればうれしいです。
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……もしよければ現在投稿中、全く違うテイストの「レトロゲームの勇者が召還されました」もよろしくお願いします。




