人気者と目立たない陰キャ
結局、試合は10-0の5回コールドで終わった。
夜空君は2回から4回まで、打者9人を一人のランナも出さず完全にシャットアウトした。
これほどの投球をしたのに大差で負けたのと、夜空君の球速が遅く凄い投手とわかりずらいので、誰も夜空君に注目していない。
みんな長谷田学館の晴宮四十郎選手しか、注目していない。
夜空君の実力をわかっているのは、私ともう1人、都立山王子高校の監督の大宮勇志さんだけだ。
大宮勇志さんは背は低く顔にはたくましい白髭が生えた、小太りの60代の年配の監督だ。
この監督なかなかの曲者で、先発に本当は2番手の10番の投手に、エース番号の1番を着させて先発させ10点取られた後に、本当のエースの夜空君を出した。
普通はエース番号の1番の投手が、1番チームで良い投手なので、その投手を打ったということで、対戦相手の長谷田学館の監督は夜空君に注目せず、エースを打てたんだからこのチームは楽勝と思っているだろう。
長谷田学館の監督に油断させつつ、夜空君で長谷田学館を抑えれることを確認した。
本気で甲子園を狙ってる。
夜空君が出てきたので、話しに行った。
「お疲れさま。ナイスピッチング」
「ありがとうございます。自分なんてまだまだです」
夜空君は顔はほっそりしていて、目はうつろでクマがあり顔色が悪い。表情もどこか闇を纏っている。体はほっそりだが、筋肉は少し着いている。
「そんな事ないよ。ランナーも出さず完璧に抑えていたじゃないか」
「ありがとうございます。でも、そんな事言ってくれるのは、監督と吉田さんだけです」
そう言うと後ろを見た。
そこにはたくさんの報道陣と岡田君を含めた、たくさんのスカウト陣に囲まれた、晴宮四十郎選手がいた。
晴宮四十郎選手は顔は引き締まった顔立ちで、体はホームランバッターらしくがっしりした体格で、無駄な脂肪なく、胸や腕も筋肉が盛り上がってるのがわかる。
「晴宮四十郎選手と僕とは、次元が違います」
「そんな事ないよ。今日彼を三振に抑えてたよ」
夜空君は少し家庭に事情もあり、とてもネガティブな性格をしている。
夜空君と話していると、大宮勇志監督が来た。
「監督、長谷田学館にバレないように夜空君を隠したでしょう。わざわざ大差つけてから、夜空君を投げさせるなんて」
「当たり前じゃないですか。今年は必ず甲子園に行きますよ。ライバル高校にに夜空の力がバレて、対策されるわけにはいきませんから」
大宮勇志監督は10年前に、お子さんを事故で亡くした。そのお子さんはプロ注目の選手で、一緒に甲子園に行く約束をしていた。
息子との約束の為、大宮勇志監督が今年、甲子園にかける思いは強い。
大宮勇志監督と話していると、後ろから黄色い声援が聞こえた。
「きゃー、晴宮君こっち向いて」
「格好良い」
「私と付き合って-」
そこにはたくさんの、女性に囲まれた晴宮四十郎選手がいた。
どうやら取材が終わったらしい。
「へっ、女性にモテても強くはならないよ」
なんか夜空君が妬んでいる。
この光景を見ると学校でいる人気者と、目立たない陰キャを見ているようだった。
私もプロ野球選手にはなったが、注目された選手ではなかったので学校では、目立たない陰キャだったので気持ちはわかる。
「人気者のスーパースターを倒して、今年は甲子園へ行こう」
私は力強く言った。
「勝てるかな」
ずっこけそうになった。
ここは勝てると、強く言ってくれよ。
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