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デビル・スキャンダル  作者: たっくん


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5/18

episode5 契約満了日

 会見終了後。


 ユン・セアは控室へ駆け込むと、

 乱暴に鏡を掴んだ。


「……っ」


 爪。


 黒い。


 腐敗したみたいに変色している。


 だがそれだけじゃない。


 首筋。


 肩。


 皮膚の下を、

 黒い筋が這っていた。


「何よ……これ……」


 呼吸が乱れる。


 鏡の中の自分は美しい。


 完璧だ。


 なのに。


 近づくほど、

 “中身”が腐っているのが分かる。


 コンコン。


「セア?」


 カン・ドユンだった。


「大丈夫か?」


 ユン・セアは急いで袖を下ろす。


「入って」


 男が部屋へ入る。


 その瞬間、

 ユン・セアは違和感を覚えた。


 男の感情が、

 前より薄い。


 いや。


 正確には——。


 自分への“執着”が異常なほど強くなっていた。


『欲しい』

『触れたい』

『セア』

『セア』

『セア』


 気持ち悪い。


 まるで壊れた機械。


「会見は成功だ」


 カン・ドユンが笑う。


「SNSも逆転し始めてる」

「“やっぱりユン・セアは格が違う”だってさ」


 男が近づく。


「戻ってこれる」

「また頂点だ」


 その目は、

 もう正常じゃなかった。


 ユン・セアは眉を顰める。


「……あなた、最近寝てる?」


「必要ない」


「顔色悪いわよ」


「君が綺麗だから問題ない」


 その返答に、

 ゾッとした。


 人間性が削れている。


 魅了が深くなりすぎている。


 ユン・セアは、

 初めて自分の力に恐怖した。


「今日は帰って」


「セア」


「帰って」


 男は少し不満そうにしながらも、

 従順に頷いた。


 扉が閉まる。


 静寂。


 その瞬間。


「——気づいたかい」


 声。


 鏡の中。


 老婆が映っていた。


「っ!!」


 ユン・セアが振り返る。


 誰もいない。


 だが鏡の中には、

 老婆がいる。


 ニタニタ笑っている。


「……何なのよ、あんた」


「契約は順調だねぇ」


「これ何!?」


 ユン・セアが黒ずんだ腕を見せる。


「副作用?」


「違う」


 老婆が笑う。


「侵食さ」


 沈黙。


「……侵食?」


「お前さん、悪魔の力を使ってるんだ」

「代償がないと思ったかい?」


 ユン・セアの喉が鳴る。


「言っただろう?」

「契約だって」


 老婆が鏡へ手を当てる。


「期限が来れば、身体はいただく」


 空気が凍る。


「……は?」


「その身体」

「その顔」

「その人生」


 老婆の濁った瞳が細まる。


「全部、私のものになる」


 ユン・セアの顔色が消えた。


「待って……そんな話……」


「聞かなかっただけだろ?」


 老婆は笑う。


「人間は都合の良い言葉しか聞かない」


「ふざけないで……!」


 鏡を叩く。


 ガンッ!!


「私は道具じゃない!!」


「でも飲んだ」


 老婆の声が静かになる。


「お前さん、自分で選んだんだよ」


 ユン・セアの呼吸が乱れる。


 頭が真っ白だった。


「契約満了は、もう近い」


「嫌よ……」


「今の私は老いてる」

「壊れてる」

「だから新しい器が必要だった」


 老婆が笑う。


「良い身体だねぇ、お前さんは」


 ユン・セアが後退る。


「……返して」


「まだだよ」


「返してよ!!」


「安心しな」


 老婆は優しく笑った。


「お前さんは私になるだけだ」


 その瞬間。


 ユン・セアの脳裏へ、

 大量の映像が流れ込んだ。


 歴代の契約者。


 女優。


 モデル。


 政治家。


 財閥。


 全員が最後、

 老婆になっていた。


「っ……あぁぁぁっ!!」


 頭を抱える。


 吐き気。


 絶叫。


 老婆達が笑っている。


『返して』

『私の身体』

『助けて』

『死にたくない』


 耳元で無数の声。


 その時だった。


 スマホが鳴る。


 着信。


《ハン・ジフン》


 週刊誌記者。


 ユン・セアは震える指で通話を取った。


「……何」


『単刀直入に言います』


 男の声は静かだった。


『あなた、“何か”に取り憑かれてますよね?』


 ユン・セアの呼吸が止まる。


『会いませんか』


「……」


『俺、あなたの記事を書きたいんじゃない』


 沈黙。


 そして。


『あなたを、助けたい』


 その言葉に。


 ユン・セアは、

 何故か少しだけ泣きそうになった。

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