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デビル・スキャンダル  作者: たっくん


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episode14 本当の願い

 ピシッ。


 悪魔の顔へ、

 亀裂が広がる。


『……ぁ』


 会場が静まり返った。


 巨大モニター。


 そこへ映し出されていた

“完璧なユン・セア”の顔が、

 少しずつ崩れていく。


 美女。


 老婆。


 怪物。


 何度も切り替わる。


『な、に……』

『あれ……!?』

『顔が……!』


 観客達がざわめく。


 違和感。


 疑念。


 その瞬間。


 悪魔の力が明らかに弱まった。


「今よ!!」


 ソヨンが叫ぶ。


 バァンッ!!


 浄化弾。


 悪魔の胸を撃ち抜く。


 白い光が爆発した。


『ギィィィィィッ!!』


 絶叫。


 会場全体が揺れる。


 だが。


 悪魔はまだ倒れない。


 黒い感情が、

 無理やり亀裂を塞いでいく。


『私は……』


 老婆の顔が浮かぶ。


『私は悪くない』


 その瞬間。


 ユン・セアの脳裏へ、

 大量の記憶が流れ込んだ。


 吹雪。


 山村。


 痩せ細った少女。


 ボロ布。


 飢え。


 村人達の視線。


『化け物』

『気味が悪い』

『あの子に近づくな』


 孤独。


 絶望。


 銀色の瞳。


 その少女こそ——。


「……あなた」


 ユン・セアが呟く。


 悪魔は、

 元々人間だった。


 愛されなかった少女。


 誰からも必要とされなかった存在。


 だから。


 “愛される人間”を喰い続けた。


『黙れぇぇぇぇぇぇっ!!』


 悪魔が暴走する。


 黒い腕が、

 観客席へ伸びた。


 悲鳴。


 だが次の瞬間。


 ゴォッ!!


 チェ・ガンウが跳んだ。


「させるかぁぁっ!!」


 拳。


 衝突。


 黒い腕が砕け散る。


 しかし。


 ガンウの右腕も、

 異常な方向へ折れ曲がった。


「ガンウ!」


「問題ねぇ……!」


 血を吐きながら笑う。


「まだ動く」


 怪物みたいだった。


 その時。


 巫女が静かに前へ出る。


「終わらせます」


 銀髪が揺れる。


 彼女の周囲へ、

 無数の白い文字が浮かび始めた。


 古い呪。


 祈り。


 浄化。


 会場の空気が変わる。


 悪魔の顔色が初めて変わった。


『……やめろ』


 巫女は止まらない。


「あなたは、もう休むべきです」


『やめろォォォォ!!』


 悪魔が絶叫する。


 黒い感情が暴走。


 ステージが崩壊。


 天井が落ちる。


 観客達が逃げ惑う。


 だが。


 その中心で。


 ユン・セアだけは、

 悪魔を見つめていた。


 分かってしまった。


 この怪物は、

 自分と同じだった。


 愛されたかった。


 認められたかった。


 世界の中心にいたかった。


 だから。


 自分は契約した。


「……ねぇ」


 ユン・セアが歩き出す。


「やめなさい!」


 ソヨンが叫ぶ。


 だが止まらない。


 ユン・セアは、

 悪魔の前へ立った。


 老婆の顔。


 怪物の顔。


 そして。


 自分の顔。


 全部が混ざっている。


「あなた……ずっと一人だったのね」


 悪魔の動きが止まる。


『……っ』


「だから、人の人生を奪った」


「愛されてる人間が羨ましかった」


 ユン・セアの瞳から涙が落ちる。


「でも」


 静かな声。


「それじゃ、永遠に満たされない」


 沈黙。


 その瞬間。


 悪魔の巨大な身体が、

 少しずつ崩れ始めた。


『……うるさい』


 老婆の声が震える。


『お前に……』

『お前なんかに……』


「私、あなたと同じよ」


 ユン・セアが笑う。


 泣きながら。


「私も、愛されるために全部捨てた」


 芸能界。


 嘘。


 身体。


 心。


 全部。


「だから分かる」


 悪魔の瞳が揺れる。


 その時だった。


 巨大モニターへ、

 ユン・セアの過去映像が流れ始めた。


 新人時代。


 無名だった頃。


 泣きながら演技練習している姿。


 初めて賞を取って泣いている姿。


 そして。


 誰もいない控室で、

 一人泣いている姿。


 会場が静まる。


 誰も知らなかった。


 国民的女優の、

 本当の顔。


「……私は」


 ユン・セアが震える声で言う。


「本当は、誰かに必要だって言ってほしかっただけ」


 その瞬間。


 悪魔の核へ、

 大きな亀裂が走った。


『ぁ……』


 老婆の瞳から、

 初めて涙が零れた。

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